2018 Fiscal Year Research-status Report
中国・三峡ダムにともなう住民移転と生活再建――追跡調査にもとづく社会学研究
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17K04141
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
浜本 篤史 東洋大学, 社会学部, 教授 (80457928)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 立ち退き / 移住 / 補償 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、中国・三峡ダムにともなう住民移転を対象として、住民移転の中長期的な帰結について、研究代表者自身が実施した十数年前の調査データと照らしながら、住民の経験・認識レベルと政策レベルの両面から社会学的に解明することにある。 初年度である2017年度に、この分野における中国の研究拠点である河海大学公共管理学院に滞在して研究動向を把握し、現地調査をする機会を得たので、2018年度はこれをベースとして、国内外の研究会および学会での発表を積極的におこない、検討を深めた。とりわけ、8月にメキシコで開催されたINDR(International Network on Displacement and Resettlement)の年次研究集会では、住民移転と精神的影響についてのセッションで、パネルを担当したが、健康、トラウマ、主観認識といった領域は、世界的にも手薄であり、日本の研究蓄積から発信する意義を再確認できたことは大きな収穫であった。 また、現地調査を進めた。三峡ダムによる広東省各地の移住地を再訪し、経済発展の状況や移民村の生活再建動向について、基本動向を確認することができた。 これらの活動を通じて得たことも踏まえ、「環境および開発と難民・強制移動――開発事業にともなう立ち退きと生活再建」(仮)と題する論文をすでに執筆したので、2019年度中に強制移動研究の研究書の一編として発表される予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していた以上に、国内外で報告機会を与えられたので、この得難い機会を優先することにした。その分、現地での追跡調査は、研究協力者とのスケジュールが調整つかなったこともあり、予定していたよりも遅れているが、3年間トータルではおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、追跡している家族の聞き取り調査を深化させることが最重要課題である。9月と2月頃の現地調査を2回、集中的におこなう予定である。ほかに8月に、INDRの年次大会が中国で、また韓国研究者との意見交換会も韓国で予定されているので、これらの機会を通じて住民移転政策そのものの最新動向を把握しつつ、比較の視点も引き続き取り入れていく計画である。
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Causes of Carryover |
現地調査の協力者謝金および旅費を見込んでいたが、1月の段階で協力者の事情でスケジュール調整ができないことが判明したので、この分は次年度へ繰り越すこととした。この分はそのまま協力者謝金および旅費として執行予定である。
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