2019 Fiscal Year Research-status Report
近代沖縄社会の癩予防法と沖縄疾病史からみたハンセン病者の諸現実に関する実証研究
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17K04145
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Research Institution | Yamaguchi Prefectural University |
Principal Investigator |
中村 文哉 山口県立大学, 社会福祉学部, 教授 (90305798)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 結核 / ハンセン病 / マラリア / 感染症 / 沖繩 / 予防法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、戦前期の結核および「らい」の予防法関連法規の法的構造と法理の比較・検討を行い、更に予定外だったが、同復帰後の沖縄県時代の、琉球政府下での結核および「らい」予防法関連法規の法的構造と法理を追い、「本土」のそれらとの比較・検討を行った。結核予防法関連地方制度は、「明治37年3月14日沖繩縣令第7号 肺結核豫防ニ関スル施行細則(沖繩縣)」の探索に留まり、統計資料、沖繩の結核予防外郭団体の資料、個人史的な記録等で、沖繩縣下および沖縄県下の結核罹患率と、結核医療行政の展開を追い、病者扱方を照射する方法論をとった。 近世沖繩の結核は、明治初期に「本土」からの移住者により持ち込まれ、1890年以降、「本土」出稼女工により沖繩本島農村部に蔓延し、「本土並」の結核死亡者数に至ったが、沖縄戦でこれらの大部分が命を落とした。戦後、戦場経験による沖縄県下の結核罹患率は上昇したが、沖縄の貧弱な医療機体制を克服すべく、公看を介した外来医療体制を構築したところ、これが功を奏し、1970年代に入り、沖縄県下の結核消長は「本土」よりも早く迎えた。 こうした沖縄の結核疾病史は、同地におけるハンセン病の経過とパラレルである。ハンセン病も、アメリカ統治下の琉球政府において、WHOのハンセン病対策を踏まえた在宅医療制度が八重山を中心に展開され、功を奏した。 これらを踏まえると、沖繩の結核とハンセン病には、興味深いネクサスが横たわっているとみることができよう。戦後沖縄の結核治療は無償であったが、患家によっては、病者を隔離小屋においたり、公看を拒否したり、「本土」への病者送り出しがあった点は、戦前のハンセン病の現実と重なる。また戦後沖縄結核患家の中には、給付された薬(アイナ、パス等)を売却するという現実もあった。 マラリアに関しては、その病態および発生の生物学的機序を理解するための基礎がために止まった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概ね予定通り進捗してはいるが、マラリア関連史料の読解に多少の遅れがあるので、最終の研究年度に果したい。
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Strategy for Future Research Activity |
沖繩戦前期の八重山のマラリア関連史料を中心に、罹患者ならびに患家の現実、病態の特性、病勢、マラリアをめぐる医療対策を重ね合わせながら、当時のマラリアをめぐる社会的現実を追う。これまでの研究で追ってきた近世沖繩社会における結核、マラリアをめぐる社会的現実を、ハンセン病の現実と比較・検討する。この試みを通して、当時の沖繩縣下における医療史状況、疾病史的状況を引き出したい。更にこれらを通して、沖縄のハンセン病は「本土」と比較して〈30年の遅れ〉がもつ意味の実証的な吟味を試みたい。
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Causes of Carryover |
COID-19感染流行による三月期の沖繩調査が中止となったため。
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