2018 Fiscal Year Research-status Report
社会的事業の台頭と震災復興の長期化により転換期を迎えたNPOに関する実証的研究
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17K04148
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Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
齊藤 康則 東北学院大学, 経済学部, 准教授 (00516081)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 東日本大震災 / 熊本地震 / 西日本豪雨 / 被災者支援 / ボランティア / 農業ボランティア |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は東日本大震災・熊本地震・西日本豪雨(愛媛県)の被災地をフィールドとして、仮設住宅等における入居者同士のコミュニティ形成、そして生業(農業)の復旧・復興に従事してきたボランティア・NPOを対象として、ヒアリング調査を実施した。 とりわけ後者の点について、平成30年度にフォーカスしたのが災害以前の農業労働力の複数化――農的主体の多様化――の状況に他ならない。大規模災害が発生した農村地域において、高齢者雇用、青年層のアルバイター等の形式で、すでに農業労働力が複数化していた場合には、災後に創発した農業ボランティア・NPOの取り組みは、救援期から復旧期にかけての一時的なものとなりやすい(熊本地震・西原村のケース)。 逆に、災前に農的主体の多様化があまり進んでいなかった場合には、農業ボランティア・NPOの取り組みが復興期から再生期にかけて持続することとなり、生産力の回復(担い手の育成)、販路の再形成(ICTを活用したCSAなど)まで、多岐にわたることをテーマ化した(東日本大震災・仙台市若林区、福島県二本松市のケース)。 なお、社会的事業(ソーシャル・ビジネス)の領域については、社会的インパクト評価の導入、休眠預金の活用など、新たな取り組みがスタートしている。「指定活用団体」が決定し、まもなく各地域の「資金分配団体」も選定されようとしている。平成30年度は前年度に引き続き、文献調査、シンポジウムへの参加などを通して、現状把握に努めてきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度には災害ボランティア、被災者支援に関する学術論文が、それぞれ1本ずつ刊行された。東日本大震災・熊本地震・西日本豪雨における仮設住宅のコミュニティ形成については、いくつかの地方紙においてコメントが紹介された。また、令和元年度には東日本大震災の被災者の生活支援、農業ボランティアに関する書籍(分担執筆)が出版される予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
令和元年度は、東日本大震災から西日本豪雨にかけてのボランティア・NPOによる復旧・復興の取り組みについて、中間的な総括をおこなうとともに、(平成30年度に予定していた)社会的インパクト評価、休眠預金など新たな制度についてのレビューを行い、それを踏まえて種々の団体からヒアリングを実施する。
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Causes of Carryover |
当初予定よりも安価に物品を購入することができ、若干の残額が発生した。この残額については、令和元年度の物品費に充当する予定である。
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