2020 Fiscal Year Research-status Report
日本の出産文化の歴史社会学的研究―リプロダクティブヘルスと助産所の機能を中心に
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17K04151
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Research Institution | Otsuma Women's University |
Principal Investigator |
大出 春江 大妻女子大学, 人間関係学部, 教授 (50194220)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松岡 悦子 奈良女子大学, その他部局等, 名誉教授 (10183948)
田間 泰子 大阪府立大学, 人間社会システム科学研究科, 教授 (00222125)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 産婆 / 助産婦 / 産院 / 助産所 / リプロダクティブ・ヘルス / 出産 / 医療化 / 産師法 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年3月15日大妻女子大学で最終年度事業としてのシンポジウムを開催を予定していた。最終的にコロナ感染拡大による防止のため中止とし、用意した冊子の配布も中止した。これに代わりに、オンライン・シンポジウムを企画し2020年9月5日に大妻女子大学サーバーを使用して実施した。 当初の予定では大妻女子大学千代田キャンパスにてハイブリッド開催の検討を進めたが、最終的に報告者全員がリモートで参加する形をとった。開催概要ポスターは研究代表者と分担者がそれぞれ関連する学会、研究会、MLに送り、大妻学院Googleフォームにweb申込みを受け付けた。最終的に192名の申込み数だった。国内および国外から合計153名の参加者を得た。国外はイギリス、ニュージーランド、アジア、北アメリカ在住の助産師を中心として出産を含むリプロダクティブヘルスに関心をもつ人々である。国内の参加者は北海道から沖縄まで日本各地からであり、オンライン・シンポジウムに変更したことによる参加者の居住地に拘束されない参加が可能となった。産婆・助産婦にかかわる歴史資料に関する情報も13件寄せられ、これらは2021年度科研の申請の根拠とすることができた。 国立女性教育会館(NWEC)情報課との連携は、コロナ禍で(埼玉県に対し、宿泊施設として提供をするため)本館が使用できないため、資料の目録作成や公開に向けた具体的な方向性について検討することはできなかったが、京都府助産師会保管資料の移管を無事終了させることができた。 2020年10月には科研調査によって収集した史料をもとに研究代表者の大出と研究協力者の伊賀が『女性史学』に論文をそれぞれ投稿、研究分担者の田間が戦前期の助産録を分析した論文にまとめた。2020年12月には日本助産師会出版から『大日本産婆会総会並大会誌』(三分冊)を出版した(2019年度には簡易製本により限定出版)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要の通り、最終年度に対面のシンポジウムを断念したが、そのために、オンライン・シンポジウムの開催を実施することになった。結果として、京都府と大阪府を中心とした史料をweb上で会期中公開し、各地の参加者に広く閲覧して頂く機会を提供することになった。史料にもとづく研究発表には対面シンポジウムでは100名定員としていたところを、1.5倍の参加者を迎えることができ、盛会のうちに終えることができた。このような形で研究交流の機会を広げられた結果、日本各地さらには海外の出産にかかわる資料に関する情報を入手することができた。こうして、2020年度はJSPS科研費 JP17K04151の成果を新たな研究へとつなげる重要な年度となり、2021年度基盤研究Bの申請の足がかりとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度の活動を踏まえ、新たに申請していた2021年度からの3年間の研究計画が基盤研究Bとして認められた。そこで、当初の予定にしたがって福井県、関西を中心に助産史料の収集とデジタル化を進め、それらをもとにした研究活動を継続していく予定である。 また北海道大学医学部図書館に所蔵される戦前期助産雑誌のデジタル化を進めていく予定も立てている。ただし、コロナ禍による移動の制限から、関西の大学図書館の所蔵も確認した上で、史料のデジタル化は着手可能なところから進めていく。収集した史料やデジタル化された資料はいずれも最終的に国立女性教育会館において資料目録の作成をおこない、公開レベルを研究会で検討した上で、可能なものについてはデジタル公開を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
デジタル化した助産史料とともに、助産師会館で保管されていた史料原本は劣化が進んでおり、国立女性教育会館(NWEC)での保管が望ましいということで、2019年度から保管先との交渉を進めている。京都府助産師会は長期にわたり保管してきた史料をすべてNWECにおいて保管することを決め、2020年度に移管を終了させた。大阪府助産師会館の史料の移管に向けた活動は保留状態である。この件について、NWECとの連絡調整、移送にかかわる事務費として残っている。
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