2017 Fiscal Year Research-status Report
Social movements of migrant women and post-colonialism in France
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17K04153
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
稲葉 奈々子 上智大学, 総合グローバル学部, 教授 (40302335)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 移民 / ジェンダー / 社会運動 / ポストコロニアリズム / フランス |
Outline of Annual Research Achievements |
フランスの移民女性の社会運動において掲げられるポストコロニアルな主張が近年顕著にみられるようになってきたことから、その理由を明らかにすべく、文献を網羅的に収集し、レビュー論文を執筆すべく資料の検討を進めた。 ポストコロニアルな主張がみられるようになったのは2001年にフランス政府が15世紀の奴隷制度を人道に対する罪であったと認めるトビラ法を制定した時期に重なる。ただし、移民女性に先立って、「共和国の先住民(フランスに植民地化される前からその土地に居住していた者)」を称する運動がポストコロニアルな観点からフランスの移民政策や社会統合政策に対する異議申し立てを行っていた。 移民女性を担い手とする移民女性に固有の社会運動は、ポストコロニアルな運動から派生したというよりは、ムスリム女性に対する、同胞コミュニティからの女性に対する抑圧への異議申し立てと、フランス社会のイスラム女性に対する差別に対する異議申し立てが同時並行で進行していた。イスラムを価値観とする同胞コミュニティの男性は、ムスリム女性としての行動規範に適うように抑圧的な存在であった。他方、ムスリム女性を「解放」する論理を展開するフランスのフェミニズムに対しては、植民地宗主国のパターナリズムとして批判的な議論を展開していた。 また、担い手の移民女性に対するインタビューを行い、彼女たちのライフストーリーをききとった。もともとは住宅問題や在留資格の問題など、生活に直結した問題から運動に関与していった女性に聞き取り調査をしたため、ポストコロニアルな問題関心を当初はもっておらず、差別を経験するなかで問題意識が形成されていることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、現地でのインタビュー調査を中心に行う予定だったが、諸般の事情でフランスの現地調査期間を短縮せざるをえず、予定していたインタビューの件数をこなすことができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
文献を社会学に限定せずに、歴史学でポストコロニアリズムを扱う研究まで広げて収集する。インタビューは2017年度に目標件数に達しなかったぶんを、2018年度に達成すべく現地調査を行う。
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Causes of Carryover |
諸般の事情によりフランスでの現地調査の期間を予定よりも短縮せざるをえなかっため。
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