2020 Fiscal Year Research-status Report
依存問題を取り巻く社会環境と依存問題への支援に関する社会学的考察
Project/Area Number |
17K04158
|
Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
中村 英代 日本大学, 文理学部, 教授 (50635191)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 依存症 / 回復 / 12ステップ・プログラム / Alcoholics Anonymous / ダルク / 薬物依存 / ベイトソン / 資本主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、依存問題とそこからの回復を、社会環境を含めた視座からとらえなおすことにある。その際、①資本主義社会における依存問題、②回復支援の共同体、③当事者の語りの考察という3つの課題を設定し、これらを総括することで社会学の観点から総合的に依存問題を明らかにしていく。 2020年度は、①については、経済学領域の文献も含め資本主義社会の原理の把握のための文献研究を行った。同時に、2019年度に引き続き人類学者のグレゴリー・ベイトソンの論文の精緻な読み込みを行った。②については、コロナ禍における回復支援施設の状況を明らかにするために、Zoomを利用して、4件のダルクを対象に聞き取り調査を実施した。また、依存症からの回復のための世界規模の共同体である12ステップ・グループについての文献研究を行った。その上で、ベイトソンによるAlcoholics Anonymous(AA)の研究と分裂生成理論から、12ステップ・グループの考察を進めた。また①との関連で、資本主義社会で展開されている組織とは異なる、12ステップ・グループという組織の特徴とその独自性について明確にした。③については、2019年度までに行なった薬物依存の回復に関わる専門職へのインタビュー調査のトランスクリプトの分析を行なった。この結果、かつての依存症の支援方法が改められ、新たな支援が実施されている傾向が明らかになった。また、専門家たちの支援をナラティヴ・セラピーの視点から整理することで、そこで行われている支援の本質を抽出した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度は、①資本主義社会における依存問題についての文献調査、②回復支援の共同体についての文献調査とフィールドワーク、③当事者の語りの考察を、おおむね当初の研究スケジュール通りに進めることができた。 ①については、2019年に続いて、12ステップグループ関連の文献や依存問題の先行研究だけでなく、経済学領域の文献、グレゴリー・ベイトソンの文献研究も進めることができた。②については、新型コロナウィルスの影響で調査はできなかったため、これまでの調査データの分析を行った。③については、インタビュー調査は2019年度中におおむね終了したため、2020年度はデータの分析・考察を中心的に行った。 以上、本研究全体を総括する最終年度(2021年)に向けて、調査・分析ともに準備を整えることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
最終年度である2021年度は、これまでの調査データや文献研究の成果をまとめあげる作業を行う。具体的には、社会学の観点から、①依存問題という現象をとらえなおし、②これまで調査を行ってきたダルクやAlcoholics Anonymous(AA)の調査結果を考察し、③これまで行ってきた依存症支援に携わる専門家へのインタビュー調査をまとめる。これらを、これまで文献研究を進めてきたグレゴリー・ベイトソンや経済学の視座から、総合的にまとめあげる。具体的な成果物としては、単著の執筆に引き続き取り組み、2021年度中に出版する。
|
Research Products
(3 results)