2022 Fiscal Year Annual Research Report
Comparative Sociological Study of Cancer Tobyo-ki:Interaction between Individuals and Society in Narratives of Illness
Project/Area Number |
17K04160
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
門林 道子 日本女子大学, 人間社会学部, 研究員 (70424299)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | がん闘病記 / 比較社会学的研究 / 闘病 / 肯定的変化 / 相互作用 / 自己成長 / ナラティヴ / ポストオープン認識 |
Outline of Annual Research Achievements |
がん闘病記の比較社会学的研究を目的として、国内で2006年以降出版された患者本人によって書かれたがん闘病記100冊を調査対象とし著書等でマスター・ナラティヴを提示してきた1960年代から2005年までの闘病記との比較により経時的変化を捉えた。質的調査(ドキュメント分析)により内容と変遷要因を追究することで、闘病記をめぐる個人と社会の相互作用を明らかにする目的で取り組んだ。現在、自らの死が予見可能になった「ポストオープン認識」(田代,2015)時代のがん闘病記は事態をできるだけ正確に捉えて正面から向き合おうとする、早期発見に至らなかった自らの経験を語ることで他者に「賢い患者」になるよう役立ててほしいとの使命感をもって書かれたり、再発・転移を重ねても前向きに生きているとのメッセージを発信し病気で落ち込む人を救いたい、自身が納得できるように患者が主体的に医療と関わる必要性を促すものが増加している。人生の集約の仕方に個性がみられ、「死を創る」時代の闘病記と言っても過言ではないことを明らかにした。また、コード化作業によって昨今のがん闘病記にみられる「肯定的変化」や「レジリエンス」要因をそれぞれ7つ、8つに分類した。さらには闘病記に現れる「闘病」について調査し、「闘病」は慣用語として特に意識せずに用いられている場合がもっとも多いが、がんの治癒率上昇や情報社会でさまざまな情報を得て「闘病」意識を明確にしている場合も少なくなく、「闘病」を自分なりに意味づけたり、否定的に用いている場合もみられ、がん闘病記にみる「闘病」の用い方はきわめて多義的であることに言及した。「AYA世代のがん闘病記」の特徴も調べ、それらの成果を日本保健医療社会学会、日本緩和医療学会、日本死の臨床研究会、日本臨床死生学会、ISA(世界社会学会)、APHC等で報告・発表し、現在は2冊目単著の書籍化に取り組んでいる。
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Research Products
(6 results)