2019 Fiscal Year Research-status Report
Characteristics of Japanese Policy on Highly-Skilled Migrants
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17K04161
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
上林 千恵子 法政大学, 社会学部, 教授 (30255202)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田嶋 淳子 法政大学, 社会学部, 教授 (20255152)
長谷部 弘道 杏林大学, 総合政策学部, 講師 (40781282)
山口 塁 法政大学, その他部局等, 講師 (70769083)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 日系ブラジル人 / 技能実習制度 / 特定技能制度 / イタリア中国人コミュニティ / 企業コミュニティ / 日立製作所 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、研究プロジェクトの最終年度であり、メンバー各人が最終報告執筆を前提にして、個々の調査を実施した。 上林、山口は法政大学大学院生2人と、島根県出雲市の外国人労働者受け入れ実態と自治体の受け入れ政策および企業の外国人労働者雇用ニーズに関して調査を実施した。この地域は人口減少地域であり、日系ブラジル人および技能実習生への依存度が高いが、島根県の政策の中には、人口減を外国人労働者で補う意図は持たない。このした国政、県政の外国人労働者受け入れに対する否定的態度と、企業の外国人労働者雇用へのニーズの乖離、地域社会の外国人受け入れに対する両義的態度の存在など、地域労働市場における外国人労働者の位置づけを報告書にまとめるべく、現在は資料整理中である。 田嶋はイタリアにおける中国人コミュニティの形成過程を明らかにした。イタリアのフィレンツェ郊外プラトー市の中国人移住者は、伊ラリアのブランド品(衣料・雑貨)製造に従事していることで著名であり、そうした生産に従事している中国人移住者が独自のコミュニティとそれを維持する集団内規範とネットワークを形成していることを、インタビュー調査から明らかにした。 長谷部は、日立製作所笠土工場に数回訪問調査を実施した。またそこで発行されている社内報を詳細に分析することにより、企業コミュニティの現代的な様相について記述した。同事業所は多くの技能実習生を雇用しているが、この技能実習生の受け入れ実態が技能実習法に抵触し、同事業所で勤務していた技能実習生が帰国したため、外国人労働者である技能実習生についてはヒアリングを実施しなかった。 山口は、東京大学社会科学研究所のデータアーカイブから調査の個票を入手し、技能実習生を雇用する企業の特性について数量的調査を試みた。外国人労働者研究は、データの制約があるため数量的研究は乏しい中で、一定の成果をあげた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年3月に実施予定であったベトナム調査が、ベトナム政府の許可がベトナム旧正月前に下りず、結局、研究予定期間内に1度しか訪問できなかった。 また本研究テーマを「高度外国人材」と設定したが、研究計画2年目に新たに単純労働者でもなく、高度人材でもないその中間の技能レベルを有する「特定技能者」の受け入れ制度が創設された。全くの新制度であり、外国人労働者全体の受け入れを検討する上でこの類型を無視することができず、テーマの焦点を特定技能に当てることにしたために、当初の研究実施計画よりも進捗が遅れた。そのため、研究計画を来年度2021年3月末まで延長することを申請し、その許可も得た。 特定技能についてはまだ制度利用者が少なくその実態がわからないが、従来の技能実習制度の延長上でその効果を見極める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
一つは出雲市調査報告を完成させ、必要ならばその補充調査を実施する。出雲市は出雲村田製作所の企業城下町であり、ここで雇用されている日系ブラジル人はおよそ2400人である。東海、群馬地区と異なり、出雲市周辺以外に日系人の居住はない。この特異性が、将来の人口減少地域での外国人居住のモデルになる可能性があるので、出雲村田製作所の外国人雇用ニーズとその人事管理、地域社会への影響を洗い出し、技能実習生、特定技能者の外国人類型と比較しながら、将来の日本の外国人雇用の方向性を探る。 またベトナムからの労働者送り出しについては、送り出し派遣会社の実態と、ベトナム人労働者の就労意欲などを探り、来日する側のニーズを洗い出す。 労働力需要側のニーズと、供給側のニーズを明らかにすることにより、日本の移民政策の将来像を提示することが研究の課題である。
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Causes of Carryover |
ベトナム調査が農村での個別ヒアリングを前提として政府に申請していたため、調査予定期間前にベトナム政府から許可が下りなかった。 また、高度外国人材の調査テーマが、技能レベルが中間に位置する新たな特定技能制度が創設され、その内容と社会的影響についての研究にテーマがシフトしたため、次年度に研究が延長せざるを得なくなった。 本年度は出雲地域への追加調査と、その比較上、北上地域の電子部品製造業のヒアリングを実施する。またこれまで明らかにしてこなかった製造業請負企業のうち、日系人などの外国人労働者を雇用している大手企業の外国人を対象とした人事管理の実態にも領域を拡大する。外国人受け入れの中間団体である技能実習生の監理団体、日系人の製造業請負企業の両者の人事管理(募集・採用・訓練・賃金管理・生活管理の領域)を比較することにより、労働力としての外国人労働者が技能実習生と日系人ではどのように異なるのかと明らかにしたいと考えている。
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Research Products
(11 results)