2021 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17K04168
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Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
益子 英雅 中京大学, 教養教育研究院, 教授
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Project Period (FY) |
2017 – 2021
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Keywords | 社会言語学 / 言語権 / コミュニケーション権 / 情報保障 / 障害学 / 手話言語条例 |
Outline of Annual Research Achievements |
(2021年度を中心に期間全体について) [2021年度]2021年7月11日、第27回情報保障研究会(於:愛知県立大学名駅サテライト)において公開研究会を開催した。報告は、江夏亜希子「日本語教師の専門性ー職業規範の形成過程に着目して」、道上史絵「在留資格技人国で来日したベトナム人エンジニアにとっての日本語」、かどやひでのり「「国際語としての英語」のいきつくさきと、いきつくべきさき」がおこなわれた。また、成果の公開・共有の場として、ひきつづき第28回情報保障研究会(2022年3月26日/27日・於;愛知県立大学)の開催を準備中である(https://syakaigengo.wixsite.com/home/zk)。 [期間全体について]本研究は、言語を権利の対象として位置づけた「世界言語権宣言」以降の言語権概念の展開、その意義と限界、それに基づく社会変化を実証し、言語政策・福祉政策・言語教育上の指針となる記述を目的とした。これは、先行する2つの共同研究「情報弱者のかかえる諸問題の発見とメディアのユニバーサル・デザインのための基礎研究」(2008–2010)、および「情報弱者むけユニバーサル・デザイン具体化のための基礎的研究」(2013–2015)の成果を継承するかたちで、情報保障整備のための基礎研究として計画されたものである。もとより、基本的人権の一部をなす言語権とそこから派生する権利保障は、障害者ほかコミュニケーション上の社会的弱者を対象としている。高齢化の急激な進展や移民の増加により、情報弱者のコミュニケーションからの疎外が優先度の高い社会問題となることは明らかである。言語権にもとづく情報保障システムの構築は現在の日本社会にとって喫緊の課題となっているという問題意識から本研究は出発し、以下の成果がえられた。 ①言語権論を学史的に検証・整理することによって、障害学的要素がくわわった経緯と意義をあきらかにし、障害学的言語権論モデルを提起したうえで、社会言語学に由来する多言語主義的言語権概念と、障害学的言語権概念とを対照し、集団権/識字権/読書権/言語至上主義など、充分に議論がすすめられていない多様な言語権の問題群を記述した。 ②具体的な事例として、英語教育、外国人労働者受け入れ政策、日本語教育推進法案、手話言語条例、スペインにおける言語権概念、日本における計画言語運動といった多様なテーマをとりあげ、いずれも、最終的には広義の情報弱者のための言語的人権の保障等を目的とし、広義の言語権論と一括、連続的に検討できることを示した。 本研究における議論の主軸は、現代の日本列島が舞台となったが、(公教育の充実自体が課題でありつづける低開発国以外では)普遍的な課題として世界各地と通底する問題群であるといえる。今後、必要に応じて歴史的対照や地理的対照をこころみることで、より普遍性のたかい議論をくみたてられるわけで、これらの議論をベースにして、より具体的かつ実践的な課題にとりくむことが可能になった。
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Research Products
(2 results)