2020 Fiscal Year Research-status Report
グローバル経済下の開発途上国農村の開発・発展と社会運動の役割
Project/Area Number |
17K04173
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
大倉 三和 立命館大学, 国際関係学部, 非常勤講師 (30425011)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 開発途上国社会運動 / 順応的ガバナンス / 資源環境管理 / 開発援助 / 農村地域開発 / 持続可能な開発 / 在来地 / バングラデシュ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、開発途上国の社会運動が、農村の持続可能な開発に果たす役割の検討を目的とする。今年度は社会運動の理論と開発をめぐる政策議論の検討から、以下の点を確認した。 1)制度外手段による構造的問題の開示と解決の試みをなす社会運動は、政府の対応能力が限定的な開発途上国農村地域では特に、住民協働での試行錯誤を通じて在地の知や資源を用いた解決策を構築しえる点で、順応的資源管理による社会のレジリエンスに必要とされる多様な管理手法の選択肢確保に資する。 2)開発政策を巡っても「問題解決型反復アプローチ」や「やりくり型」として、順応的管理と同様の漸進的アプローチの有効性が示されるが、そこで課題特定の方法として想定される住民参加やニーズ調査に形骸化の問題が広く確認される中では、現地住民や内外非政府組織(NGO)による社会運動が、課題の開示と対策の選択肢提示に重要な役割・意義を持つ。 バングラデシュ南西部での追跡調査は新型コロナの影響により不可能となったが、執筆分担した『ハンドブック国際協力』(ミネルヴァ書房、令和3年中に刊行予定)に掲載する事例研究を兼ね、日本政府支援による石炭火力発電所建設事業をめぐる社会運動について、二次資料と公開動画をもとに検討した。同国でも地理的・政治経済的に周辺性の高い地域で進められているこの事業には、南西部の水資源管理とは対照的に住民参加の制度も住民自身の組織的対応もなく、工事や移転に際して住民が経験する諸問題は、内外NGOが掬い上げJICAに対応を求めている。高所得国入りを目指すハシナ政権が情報統制を強めつつエネルギー開発を急ぎ、日本政府も戦略的にその案件化を急ぎ支援してきた中で、貧困層が連帯して運動を起こす条件は希薄である。NGOによる反対運動は公式な住民代表ではないが、誰一人取り残さないというSDGs理念を実現するうえで対応を優先すべき問題の所在を示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
今年度に計画どおりの研究遂行に遅れを来した理由は以下のとおりである。 (1)新型コロナ感染症拡大の影響。これは、現地調査のための渡航が不可能になった理由であると同時に、その代わりとして資料ベースの研究や論文発表のために割き得たであろう時間の大部分を、オンライン授業への対応(勤務する二大学間で異なるシステムへの対応も含む)に費やさざるを得ず、想定していたエフォート率は大幅に低下した。巣ごもり状態で増大した教育業務に対応する一方で体調が管理しきれず、能率が低下していたことの関係も否定できない。 (2)令和3年度に勤務先大学で担当する科目が変更となったこと。これで本研究にとって極めて有益な知見を得ることにもなったが、同時に新規担当科目を準備するために追加的な時間を要した。 (3)以上2点により、令和元年度内に終了予定であった原稿執筆の完了が令和2年度9月まで伸びたこと。
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Strategy for Future Research Activity |
延長申請により今年度の計画を繰り延べたものの、現地調査は次年度も引き続き不可能となる可能性が高いため、追跡調査を前提とする研究計画を改め、以下のように検討する事例を複数化し、比較研究の形でまとめることとする。 (1)バングラデシュ南西部でこれまでに実施したクルナ・ジェソール排水改善事業をめぐる運動の調査結果に、二次資料など新規資料を加えて踏まえた、順応的資源管理としての住民運動が発生した条件と、運動過程ならびに組織構造、そして運動の帰結(制度変化との関係)についての事例研究。 (2)同国東北部と中南部で展開している石炭火力発電所建設をめぐる社会運動、あるいはその不在を規定する制度環境条件と問題構造、そして住民や内外NGOによる社会運動の性格とその政策変更への影響力についての事例研究。 (1)を中心に執筆と英訳、現地協力者への送付を優先的に進めつつ、(2)との比較を通して、途上国農村の社会運動が取り組む資源管理にかかわる問題構造と、運動生起の制度条件、そして運動が政策変更に関して果たす機能や影響力について分析を進め、学会報告を行う計画である。
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Causes of Carryover |
次年度使用が生じたのは、上記「現在までの進捗状況」の「理由」欄に記した事情により、助成金支出を要するような研究の遂行が困難だったためである。 結果として残った未使用の助成金は、次年度に実施する研究活動として、主に計画の部分修正に伴い必要となる追加的な資料購入、原稿英訳・印刷および郵送費のほか、研究公表(学会誌への投稿)にかかる諸費用に充てる予定である。
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