2017 Fiscal Year Research-status Report
Normative media theory for social communication in internet age
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17K04177
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Research Institution | Osaka University of Economics |
Principal Investigator |
林 怡蓉 大阪経済大学, 情報社会学部, 准教授 (10460990)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | メディア / 放送 / インターネット / ソーシャルメディア / 社会的コミュニケーション / メディアの規範理論 / デモクラシー / デリベラティヴ・デモクラシー論 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)-①について,まず,改正放送法(2010)では,「基幹放送」という概念を導入した.この基幹放送の定義付けは技術的な区分のみであり,従来ある地上波放送はそのまま基幹放送とされている.したがって,放送法レベルにおいて放送の社会的責任に関わる新たな放送の姿勢,ないし内容に関わる仕組みの規定の変更は行われていなかった.次に,NHKの従軍慰安婦問題をめぐる他律的自主規制の分析で明らかとなったのは,番組内容の改変に至るプロセスにおいて政治家や右翼団体の発言と動きは大きな影響を与えたであろうと考えられる.しかし,それは改変につながる明確な内容介入があったというよりも,あくまでもNHK自らの編集権のもとに自主的に修正を行った形となっている.これは他律的自主規制が抱える最も深刻な部分であるといえる.すなわち,外部の気になる他者や集団の発言意図を敏感に察知し,放送法によって守られる編集権の行使でバランスを取る.この自主規制のあり方は社会的責任論において示された専門職集団自らによる市民社会のためのものとはかけ離れていると言わざるを得ない. (1)-②SNS参加型テレビ番組はNHK以外ほとんど制作されていない.NHKの平日放送の「ニュースチェック11」では,Twitterで寄せられた視聴者意見を画面下側に表示するスタイルをとっている.しかし,一度に表示される字数が限られ,また視聴者が読むのに必要な時間の配慮からか,紹介される意見は簡単な感想や結論のみとなる傾向が強い.では,一般の人々の意見はどのように番組内で扱われているか.パイロット調査結果からは,集合体の意見として世論調査結果が主となり,(特に社会問題についての)個人的な見解は街頭インタビューで表現する形がほとんどであることがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
学務,教務量が予定より多くなり,研究作業の進捗(研究計画で記した関係者へのインタビュー)が思うほど進められなかった.
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Strategy for Future Research Activity |
H30年度は以下のように進める予定である. (1)-②は日本で2週間のビデオリサーチを行う.期間中の平日のニュース番組,情報系番組(娯楽情報中心の番組を除く),土日曜日に放送のニュース・情報系番組,さらには討論中心の番組を対象とする.ただし,期間外に特記すべき番組があった場合,その都度研究対象とする.そこでは,各放送局,番組間で①ニュースの扱い方,②話題数,③時間量,④専門家(玄人),タレント(テレビ慣れしているが,情報に対する専門知識を有しない者),一般人(素人)の発言量と内容の扱い方などについて,特に留意し分析する.大勢=不特定多数の集合的な声と,一人もしくは少数のそれぞれの具体的な声に表現及び視聴者の受容の差異があるかに着目することは,本研究のもう一つの研究対象であるインターネット・SNSに対する社会的コミュニケーションの受容差異を見いだす際に必要不可欠な視点であると考える.なぜなら,インターネットは個人の具現が日常的であるのに対し,パイロット調査でも確認できたテレビでは通常,集合体の声として世論調査結果の紹介を報道スタイルとする傾向にあるからである.台湾に関しては同様に継続調査を行う. (2) 林(代表)が構築した分析批判枠組みを用いてインターネット言論空間の分析を行う際に追加,修正をする必要かについて,いくつかの事例で検討する. (3)英(2019)米(2020)での調査に向けて準備を行う.研究協力者の魏キン氏のほか,現地情報に詳しい研究協力者に海外学会(中華伝播学会及びISA world Congress of Sociology)大会で研究連携の可能性を打診する予定である.
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Causes of Carryover |
次年度に旅費が多く発生することが予想され,無駄を省いて次年度で有効利用したいと考えたためである.
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