2023 Fiscal Year Research-status Report
Normative media theory for social communication in internet age
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17K04177
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Research Institution | Osaka University of Economics |
Principal Investigator |
林 怡蓉 大阪経済大学, 情報社会学部, 教授 (10460990)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | メディア環境の変容 / メディア言論空間の拡張 / 主体的現われ / 人々の声の周縁化 / インターネット時代 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は昨年度の継続作業に加え,台湾のメディア環境とニュース番組の実態調査を主に行った. 近年台湾のメディア環境は急激な変化を遂げている.インターネット,ソーシャルメディアの利用割合の拡大に伴い,現在では多くのケーブルテレビの衛星放送ニュース専門局がYouTubeでチャンネルを設置する.同時放送する局もあれば別途YouTube向けに生放送チャンネルを用意するところもある.また,ある一定のシェアがあった「中天電視台」がNCCによって放送免許が取り消されてから,もとの放送と同等の内容(テレビ番組仕様)でYouTubeにその場を変え,運営を続け,利益を上げている.ほかにも各テレビ局が番組のリアルタイム放送後にYouTubeにアップロードし,誰でも無料で視聴できるようにしている.そして,従来ケーブルテレビが主要の視聴経路だった衛星テレビ局が,MODという台湾最大の電信会社・中華電信が行っているインターネットサービスで同時視聴できるようになっている.このように,テレビとインターネットの境界が極めて曖昧になっている. ニュース専門局の内容に目を向けると,伝える話題の順序の前後関係にあまり意図が読めず.また,監視カメラ映像(交通トラブル系は車載カメラ映像)を多用する傾向があり,内容のショート化,インスタント化が目立つ.調査報道は通常のニュー番組枠ではあまりみられず,特別枠で扱う.このほか,討論系番組は依然として夕方以降の重要な放送枠を占めるが,生放送が減り,コールイン(call-in)形式を取り入れている番組がほとんどみられなくなっている. このようにメディア言論空間は拡張しているが,しかし,メディア言論空間の細分化でみえない壁による言説の「隔離」,話題の断片化,消費対象化のなか,テレビを含むメディアを媒介にした普通の人々の主体的な「現われ」が急激に減少/周縁化されている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2023年度はほぼ4年ぶりに台湾での現地調査を行い,メディア環境,ニュース番組の実態に加え,放送,メディア制度に関わる監督機関の実践についても最新状況をアップデートできた.最終年度に向けた日本,台湾研究の資料,データ収集がほぼ完了した.しかし当初計画した欧米の現地調査は記録的な円安で断念せざるをえず,研究計画を修正し,文献研究を中心に行った.
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は最新情報に気を配りつつ,これまで収集した資料,データの分析結果をまとめ,単著の執筆作業を中心に行う.
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Causes of Carryover |
最終年度に必要となる可能性がある文献収集費やアルバイト代などに用いるために確保した.
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