2019 Fiscal Year Research-status Report
私有地へのコミュニティ関与の論理-原発事故被害地域の土地と人との関わりを通して
Project/Area Number |
17K04178
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Research Institution | Osaka Sangyo University |
Principal Investigator |
川田 美紀 大阪産業大学, デザイン工学部, 准教授 (40548236)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 地域コミュニティ / 山村 / 土地 / 原発事故 / 開発 / 復興 / 景観 / 歴史性 |
Outline of Annual Research Achievements |
2011年3月に発生した福島原発事故により避難指示区域となっていた本研究の調査地は、2016年6月の避難指示解除(帰宅困難区域以外)から4年が経過しようとしている。 昨年度の現地調査で、地域に戻ることを決めた方、地域内と地域外の両方に生活の拠点を置くことにした方などに、それぞれの判断や地域に対する考え、地域で現在取り組んでいる活動などについて聞き取り調査をおこなった。その結果、地域の成り立ちや生業形態などが復興や原発事故後の土地との関わり方に関する人びとの考え方にどのように関連しているのか/関連していないのかを調査をする必要性を感じた。 以上をふまえて、今年度の研究実績は次の二点である。第一に、震災直前の人びとの生活からより時間を遡って、地域の成り立ちや生業形態の変化、アイデンティティに関する調査を実施した。地域復興の活動のなかで地域の歴史を参照する語りがなされることがあったが、地域の歴史といっても、地区によって異なる部分も少なくなく、復興の地域づくりの文脈において、どのような歴史が参照されるのか、そのことは地域の人びとにとってどのような意味を持つのかを明らかにすることを試みた。第二に、避難指示解除からある程度時間が経過して土地利用に変化がみられていることから、避難指示解除前から土地利用が具体的にどのように変化したかデータ整理に着手した。 ただ、上記の二点についてはいずれも以下に記した現地調査の中止・延期によりデータ収集および分析が十分とは言い難く、成果として発表するにはさらなるデータ収集とその分析が必要であり、次年度はこの作業をおこなって、発表できる形にしたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究課題は、現地調査によるデータ収集がきわめて重要であるが、集中的に現地調査を実施しようとスケジュールを組んでいた2つの時期(10~11月と3月)に以下の事情により現地調査が実施できなかったことが、研究が遅れている最大の理由である。 10~11月に関しては、10月に台風による豪雨被害が調査地周辺で発生したため、移動手段を確保できず、調査を中止せざるをえなかった。 3月は、新型コロナウイルス感染拡大が懸念される状況であった。現地調査でおもに実施しようとしていた聞き取り調査は、対面して話を聞かせてもらうことであり、調査地の方々の感染リスクを高める恐れがあるため協力を依頼できる状況ではないと判断し、また、移動による感染拡大のリスクもあったため、調査を延期することにした。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルス感染防止策を講じつつ、研究を遂行する必要がある。本研究課題において、調査対象地の人びとへの聞き取り調査が重要な位置づけにあることには変わりがないが、聞き取り調査に加えて土地利用の実態調査をさらに充実させること(とくに、避難指示が解除されて以降、さまざまな土地利用の変化が起きてきているので、現場を訪れてデータ収集をおこない、それぞれの土地の原発事故以前と現在では、どのような変化があったのか/なかったのか、そこには何らかの傾向がみられるのかなどの分析)にも力を入れる。この作業をおこなうことによって、個人・家・地域といったそれぞれのレベルで、人びとと土地との関わりに関する意思決定はどのような論理のもとになされるのかということの聞き取り調査もより進めやすくなると考えている。
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Causes of Carryover |
本研究では、現地調査がきわめて重要な位置づけにあり、現地調査のための旅費が予算の大半を占めている。10月~11月と3月に長期の調査を複数回計画していたが、10月~11月については調査地の周辺で豪雨被害があり、長期にわたって移動手段が確保できない状況になってしまったことから、調査を中止せざるをえなかった。3月については、新型コロナウイルス感染拡大の懸念があり、調査協力者と対面して聞き取り調査をおこなうことは調査協力者の方々の感染リスクを高めることになりかねないと判断したこと、移動すること自体も感染拡大のリスクがあったことから、調査を延期した。このことによって、旅費を執行できなかったために、次年度使用額が生じてしまった。新型コロナウイルスの影響は次年度も継続すると思われるが、どのような対策を講じればよいのかがある程度わかってきているので、調査協力者の方々の感染リスクを高めないよう留意しつつ調査をおこなう。また、対面せずにデータを収集できる調査方法を模索し、その比重を高めて研究を遂行できるよう工夫する。
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