2018 Fiscal Year Research-status Report
精神障害者の良好な作業成果及び心理的状況を引き出すための目標設定方法の解明
Project/Area Number |
17K04189
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
加藤 拓彦 弘前大学, 保健学研究科, 准教授 (50250626)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 精神障害者 / 目標設定 / 作業能力 / 心理的状況 |
Outline of Annual Research Achievements |
精神障害者に対する社会復帰支援の一つとして就労支援がある。就労支援には,作業意欲や就労意欲の向上,対人関係を含む職場環境からのストレス対処等の心理的側面への支援,作業能力や作業成果の向上に繋がる作業技術的側面への支援等がある。 就労における作業成果については,具体的な目標値を設定することがある。目標値の設定に関する健常者を対象とした先行研究では,明確で挑戦性のある目標が良好な作業成果を引き出すという報告がある。しかし,精神障害者が健常者と同様の結果が得られるかについては検討を要する。 本研究の目的は,精神障害者が満足しながら良好な作業成果を得られるような目標設定の方法について検討することである。本研究における目標設定の方法は,次の二つである。一つは目標を自分で設定することについてであり,もう一つは他者が目標を設定することについてである。 2018年度は,精神科デイケアを利用している精神障害者を対象として,作業課題の目標を他者が設定することにより,対象者の作業成果(作成数,正確さ)および心理的状況(感情,自己効力感)に及ぼす影響について検討を行った。 研究に協力が得られた精神障害者42名を対象として,折り紙ブロック作成を作業課題として,異なる目標水準課題を各課題10分間1試行ずつ3試行別日に実施した。各施行において与えられた異なる水準の目標値は,課題を習熟した後に練習に要した時間から10分間で作成できる個数を算出し,それを基準に70%(低目標課題),110%(中目標課題),150%(高目標課題)の個数とし,検査者が無作為の順番で提示した。各試行の前後に心理的状況として感情評価と自己効力感の評価を実施し,各試行毎の作業成果として作成個数と正確さについてデータを得た。 得られたデータの解析結果は,2019年度に学会等で発表予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度は,当初の予定通り、精神科デイケアを利用している精神障害者を対象として,作業課題の目標を他者が設定し,その目標水準を高課題(努力しても達成できない水準),中課題(努力によって達成可能な水準),低課題(達成が容易な水準)の3課題を課し,対象者の作業成果および心理的状況(感情,自己効力感)に及ぼす影響について検討を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は,2018年度の研究成果を学会等で発表する予定である。 2017年度の調査結果では自己目標設定が,良好な作業成果と感情が得られることを確認した。2018年度調査からは,他者が設定する目標水準が高いと感情が不良であり,作業成果については中課題と高課題の作業成果に違いがなく,目標値が高くなくても目標設定自体が努力を引き出していると考えられた。これらの結果を踏まえ,2019年度の調査は,目標値設定に対象者が関与し,作業指導を行うことによって作業成果(作業数,正確さ)および理的状況(感情,自己効力感)がどのように変化するのかについて検討を行う予定である。
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Causes of Carryover |
購入予定していた検査用紙について,印刷可能なものについてはプリンタ印刷によって経費を抑えた。 次年度使用額については,2018年度調査結果発表の学会参加のための旅費及び学会参加費として支出する。
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Research Products
(6 results)