2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K04199
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
甲田 菜穂子 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (90368415)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 社会福祉関係 / ストレス / コミュニケーション / 動物介在介入 |
Outline of Annual Research Achievements |
刑務所における社会復帰のための更生教育での動物との触れ合いが、受刑者のストレスマネジメントやコミュニケーション能力の向上に与える効果を検証するため、2種の実践研究を行なうことが、本研究の目的であった。1つ目は、犯罪傾向が進んでいない軽度の知的障害・精神疾患を持つ受刑者を対象とした日本初の市民訪問型イヌ介在教育プログラムを発展させ、プログラムの構造解明にも踏み込む。これに関しては、新たに開発した改良版のプログラムが、効果検証の完了した従来のプログラムと遜色ない効果が見込めることが分かった。また特徴的な事例を精査することにより、効果が生じる時期や契機、効果を定着させるための条件等について、見通しを立てることができた。2つ目の実践は、犯罪傾向が進み、対人コミュニケーションに大きな課題を抱える受刑者を対象とした施設飼育型ヤギ介在介入プログラムを開発し、その心理社会的効果を検証する予定であった。これは、プログラムの開発、実践試行を経て、少数例ながらも顕著な効果が見込める見通しが得られたものの、データ収集開始直前に、施設の事情により、動物飼育の続行が不可能になった。そのため、同様の効果が見込める動物の施設訪問型別プログラムを開発し、実践が可能であることを確かめた。さらに、動物介在介入の実践において、人と動物のコミュニケーションを円滑に行なうため、ウマとヤギの人に対する社会的認知能力についての実験を大学の飼育施設内で実施し、ウマについては論文を公刊した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1カ所の施設において進めていた動物介在教育プログラムが、施設の事情により続行不可能になったことは、当プロジェクトにとって大きな痛手となったことは否めないことから、研究がやや遅れていると判断する。しかし、施設の協力と理解により、別プログラムを開発し実施できたこと、そのために、動物の社会的認知能力に関する基礎的な知見が必要と分かり、独自に実験を行なった点は、評価できよう。動物の認知に関する実験は、動物介在介入への応用を見据えたものであり、実践現場を知る者が基礎研究と応用研究の橋渡しをすることが期待できるものである。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、動物介在教育プログラムを実施し、データを収集する。データ収集前には、対象者に対してインフォームド・コンセントの手続きを経る。施設の職員や実施チームとも、綿密な連絡と相互理解、協力関係の維持を心がける。データが蓄積されてきていることから、これまでのようにデータの基本的な集計および少数事例において、探索的分析を行なうだけでなく、プログラムの全体像を明らかにする分析を進め、論文作成を行なう。また、施設における動物飼育についての実態調査結果についても、論文作成を行なう。同時に、当該分野における情報収集や関係者とのディスカッションを精力的に行なう。
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Causes of Carryover |
研究実施を予定していた1カ所の施設の事情により、やむを得ずデータ収集ができなくなり、研究体制を再構築するために労力を費やし、当初予定の研究活動へキャッチアップが充分にできている訳ではないため、前年度までの研究費積み残しが生じている。遅れを取り戻すために、学生を研究補助として雇用し、データ分析や資料整理の一部を担わせるための人件費、研究成果発表などに研究費がかかってくる予定である。
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