2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K04199
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
甲田 菜穂子 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (90368415)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 社会福祉関係 / ストレス / コミュニケーション / 動物介在介入 |
Outline of Annual Research Achievements |
刑務所における社会復帰のための更生教育での動物との触れ合いが、受刑者のストレスマネジメントやコミュニケーション能力の向上に与える効果を検証するため、2種の実践研究を行なうことが、本研究の目的であった。本年度は、新型コロナウイルスの流行の影響により、実践が行えなかったため、新たなデータは得られなかったが、これまでに蓄積されたデータの解析を行なった。1つ目は、犯罪傾向が進んでいない軽度の知的障害・精神疾患を持つ受刑者を対象とした日本初の市民訪問型イヌ介在教育プログラムを発展させ、プログラムの構造解明にも踏み込む実践である。これに関しては、新たに開発した改良版のプログラムが、効果検証の完了した従来のプログラムと遜色ない効果が得られることが分かった。2つ目の実践は、犯罪傾向が進み、対人コミュニケーションに大きな課題を抱える受刑者を対象とした、小動物の施設訪問型プログラムについて、その効果を解析した。対象者となる受刑者の気分について、セッション前に悪い気分であったとしても、動物介在介入を受けた事後は悪い気分から脱し、普通または良い気分になる事例がかなり多くあることが明らかになった。対象者の描画分析は、描画パーツの定量的測定と全体的な質的分析をセッション中に関する事後のフィールドノーツ内容と対比しながら行なっている最中である。質問紙調査では浮かび上がってこない微細な心的変化を捉えられる見込みである。また、クール前後の中期的な影響については、2施設とも全体としては同様な傾向が見られた。すなわち、対象者の身体的、心理的、社会的に有意な変化は認められなかった。これは、個人差が大きいことも影響しているようである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルスの流行の影響により、施設における動物介在介入は、世界的に実施ができなくなっている。施設訪問型の本研究も例外でなく、本年度は実践が中止となった。ただし、1カ所の施設において、年度末よりコロナ対応の施されたプログラムを作成し、実践を試行再開した。しかし、これまで実施していたプログラムと条件が大きく異なり、比較データとすることもできないことと、研究者が感染が広がっている東京から実践に参加してデータ収集を行なうのは、新型コロナウイルスの感染を広げることにもなりかねないことから、研究対象とすることは断念した。結局、研究実践や出張は全くできなかった。もう1カ所の実践施設に関しては、緊急事態宣言後の飼育環境の急激な変化により、介在動物が体調を崩し、獣医療・看護に制約がかかる中、4カ月半に渡る2時間おきの強制給餌を含む闘病の末、死亡した。この精神的、身体的負担は凄まじかった。 大学においても、新型コロナウイルスの流行の影響によるオンライン授業、学生のケア、運営業務も対応に追われた。コロナ禍における予期せぬ事態における経験値は積んだものの、当初の計画通りには実行できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルスの流行の収束が見通せない現在、動物介在介入プログラムの実施の見通しは不透明である。感染が収まりそうであれば、2つ目の実践のための介在動物を入手し、プログラムで使用できるように育成を再開する。試行を経て実践が可能であれば、これまでの方針と手続きに沿って実践を行ない、データ収集を再開する。研究の最終年度になることもあり、状況によっては、新たなデータ蓄積をするのではなく、これまでのデータをまとめ、論文執筆に労力を注ぐ。今回の研究プロジェクトは、当初の想定外の障壁に次々に遭遇しており、それに対応した経緯やノウハウは、関連事業において参考事例になり得るため、それらについても記録としてまとめる。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの流行の影響で、当初予定の研究活動が実施できなかったことにより、研究費の積み残しが生じている。新型コロナウイルスの流行が収まりそうであれば、2つ目の実践のための介在動物を入手し、プログラムで使用できるように育成を再開する。そのための飼育・育成費がかかってくる。遅れを取り戻すために、学生を研究補助として雇用し、データ分析や資料整理の一部を担わせるための人件費、研究成果発表などに研究費がかかってくる予定である。また、投稿論文の英文校閲代や投稿・掲載費にも使用する予定である。
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Remarks |
特定非営利活動法人 日本アニマルセラピー普及協議会 第54回社会貢献者表彰(日本財団賞) 公益財団法人 社会貢献支援財団 2020/7/31(実践団体の表彰)
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Research Products
(6 results)