2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K04199
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
甲田 菜穂子 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (90368415)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 社会福祉関係 / ストレス / コミュニケーション / 動物介在介入 |
Outline of Annual Research Achievements |
刑務所における社会復帰のための更生教育での動物との触れ合いが、受刑者のストレスマネジメントやコミュニケーション能力の向上に与える効果を検証するため、2種の実践研究を行なうことが、本研究の目的であった。1つ目は、犯罪傾向が進んでいない軽度の知的障害・精神疾患を持つ受刑者を対象とした市民訪問型イヌ介在教育プログラムを発展させ、プログラムの構造解明にも踏み込む実践である。2つ目は、犯罪傾向が進み、対人コミュニケーションに大きな課題を抱える受刑者1-2名ずつを対象とした、小動物の施設訪問型プログラムの効果を明らかにするものである。本年度も、新型コロナウイルスの流行の影響により、実践が行えなかったが、様々な動物種を用いた動物介在介入の効果に関する論文を精査し、小型草食動物を用いた動物介在介入の有効性、ひいては動物介在介入の多様化や発展についての考察を行なった。現在はその成果を論文にまとめている最中である。同時に、動物絵本の人と動物の描写を両者の関係の視点から定量的に分析し、様々な動物に対する人の態度やイメージ、動物との関わり方の獲得について考察を行なった。絵本には多くの動物が登場するが、社会に流布している動物種のイメージや人との関わりに沿った描かれ方をしており、動物に対する態度が発達初期から絵本を通して読者に形成されていくことが推察されること、その中には現実とは異なる動物の生態や行動が描かれることもあり、人と動物の関係を悪化させる懸念も見出した。また、人の主人公が様々な経験を積むにあたり、動物が介在介入で見られるような役割を果たしていることも確認した。さらに、一般人による他者への援助行動とそれを誘発する効果的な啓発方法についての研究を進めた。これらは、動物介在介入の実践の成否に影響する潜在的要因になり得ると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルスの流行の影響により、前年度に引き続き、動物介在介入の実践は全くできなかった。人と動物の身体接触を有する実践、施設内処遇であることは、感染のリスクには特に配慮が必要なため、世界的に同様な事態となった。施設訪問型の本研究も例外でなく、1カ所の実践施設について、コロナ対策の施されたプログラムを作成し、実践の試行再開を検討したものの、社会におけるコロナウイルス変異株の感染拡大により、結局、実践は断念した。もう1カ所の介在動物が死亡した実践施設に関しては、秋より適性のある幼体を入手し、大学の研究室にて介在動物として育成を行なった。候補個体の育成は、年明け以降に実践デビューが可能なレベルまで、社会化をうまく進めることができた。ただし、社会では新型コロナウイルスの流行の第6波の時期に当たり、実践は実現せず、翌年以降に持ち越しとなっている。このように外的要因により、当初の計画通りには研究は実行できなかったが、様々な動物種による動物介在介入の先行研究を洗い出し、小型草食動物を用いた動物介在介入の有効性についての検討を行なった。同時に、動物に対する態度やイメージ、援助と啓発についての研究を進めた。これらは、動物介在介入の実践の成否に影響する潜在的要因になり得ると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルスの流行の収束が見通せない現在、動物介在介入プログラムの実施の見通しは不透明であるが、感染の収束を見据えて、2つの実践の実施計画を詰め、感染防止対策を行なった上で実践を再開し、データ収集を再開する。研究の最終年度になることもあり、状況によっては、新たなデータ蓄積をするのではなく、これまでのデータをまとめ、論文執筆に労力を注ぐ。今回の研究プロジェクトは、当初の想定外の障壁に次々に遭遇しており、それに対応した経緯やノウハウは、関連事業において参考事例になり得るため、それらについても記録としてまとめる。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの流行の影響で、当初予定の研究活動が実施できなかったことにより、研究費の積み残しが生じている。新型コロナウイルスの流行が収まれば、2つの実践を再開する。そのための介在動物の飼育費、出張費がかかってくる。遅れを取り戻すために、学生を研究補助として雇用し、データ分析や資料整理の一部を担わせるための人件費、PC導入、研究成果発表などに費用がかかってくると想定される。また、投稿論文の英文校閲代や投稿・掲載費にも研究費を使用する予定である。
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