2019 Fiscal Year Research-status Report
児童養護の現場における解離と情動制御不全への対処性を向上するモデルの開発
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17K04200
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
田辺 肇 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (60302361)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福井 義一 甲南大学, 文学部, 教授 (20368400)
白井 千晶 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (50339652)
徳山 美知代 東京成徳大学, 応用心理学部, 教授 (70537604)
池邨 清美 (近藤清美) 帝京大学, 文学部, 教授 (80201911)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 児童養護 / 子ども虐待 / トラウマ / 解離 / 情動調整不全 / 予防 / 里親 / 施設職員 |
Outline of Annual Research Achievements |
里親や施設職員との協働経験豊富な児童養護の文脈で活動してるスタッフ7名へのインタビューを行った。インタビューの主な主題は①里親や施設職員が、子どもの解離(並びに情動調整不全)の問題について、気付き、理解し、対処する上で障壁・障害となるものは何か、②子どもの特別なニーズへの対応について訓練を受けて居ない里親や施設職員が、それらの問題を克服し、支援的で治療的な相互作用を発展させるための効果的な方法は何か、であった。 各インフォーマントの示した支援モデルの枠組みは、強調点の違いなど多様性を示したが、抽象的レベルでは極めて類似していた。すなわち、個別性、具体性をモデルの重要な要素としており、里親や施設職員の、あるいは、子どもや施設等の、特性や状況に応じて個別のアプローチを採ることを重要視していた。 モデルの主要な要素は以下の通り:《具体性》「理論よりも具体的な事例史上の出来事を軸に理解を促す」「具体的対処法を提示する」、《個別性》「異なる対処法が必要となる問題については、各々異なる説明モデルを提案する」「各々の里親や施設職員は理解において、異なる経路や枠組みを持っており、それに合わせる必要がある」、《関係性》「子どもにとって安心できて大切な対象になることと同時に、安全と自律性を維持するために必要な枠を守り統制を行う」「スタッフ間の関係性も、権力関係によらず、相互信頼と相互尊重に基づくものである必要がある」、《効力感と見通し》「安定した関係性と脱統制不全は、セルフケアの効力感と日常生活の見通しをもたらす」「具体的な対処法による里親や施設職員のエンパワメントはケアの自己効力感と見通しをもたらし、それにより、支援的で治療的な相互作用に結びつく」 具体的な個別のケースに基づく対処の積み重ねが、他のケースに適用可能な視点の獲得に結びつき、それが、効力感と見通しに繋がるようだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
一昨年度、昨年度の状況で生じた遅れが解消できなかった。また、今年度末に生じた社会状況(SARS-CoV-2感染拡大)から、次年度前半における遅れのキャッチアップは困難と考えている。ただし、1年延長による当初計画に沿って順次研究を展開していけると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に大きな変更の予定は無い。延長された次年度の後半には、体制も通常に回復すると期待している。説明モデルの現場への適応による洗練化と現場における有用性の検討を行う。
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Causes of Carryover |
研究代表者が研究課題実施期間中に本務都合上必要となった管理運営業務および実習等新規授業負担の増加により、研究計画に遅れが生じた。 次年度に繰り越した経費は計画上今年度に実施する予定であった、研究成果還元等のための研修会の開催と、学会報告に要する経費に充てる計画である。
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Research Products
(9 results)