2018 Fiscal Year Research-status Report
戦前期の民間助成財団における助成の社会的価値の検証
Project/Area Number |
17K04226
|
Research Institution | Yamaguchi Prefectural University |
Principal Investigator |
長谷川 真司 山口県立大学, 社会福祉学部, 准教授 (50438868)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 社会福祉史 / 民間助成財団 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は、原田積善会の所有する「寄付申込記入帳」と「寄付審査録」の助成を行う際の選考に関連する史料を用い、財団の助成実態と照らしながら、戦前の民間助成財団が助成を決定する時どのような点を考慮していたのかについて寄付審査録の記録が残っている1931(昭和6)年から1941(昭和16)年について実証的に検証をさらに進めた。 助成決定プロセスの特徴としては、仲介者(助成申込に係る仲介者の多くが内務省などの中央機関の関係者や中央及び地方の社会事業協会の関係者)の存在や、内務省や東京府などの補助金を受けている施設や団体であることが重要な役割を果たしている事がわかった。また、三重県や東京府など創設者や財団とゆかりのある場所や財団と関係のある人物に関係する施設や団体に対して助成が行われていることや、一度助成を受けている施設や団体は継続して助成を受けやすくなることもわかった。 また、民間助成財団の助成の意義と役割について総体的に明らかにするための助成の受け手側の団体から助成の意義について検証する研究については、1つの団体(興望館)については、財政に関する資料を踏まえた研究をもとに検証を進めた。 興望館の事例では、原田積善会からの助成は専門性に基づいた財団のプログラムによる助成により社会問題解決を目標に行われた助成ではないが、内務官僚や政治家などを介する事により彼らの問題意識を共有し、また内務省などが奨励する団体に対して助成することにより、結果として興望館のケースのように日本を代表するセツルメントが発展するための礎を築くことに大きく貢献することになり、結果して財団からの助成が受け手側の施設にとって非常に意義のあるものであったことがわかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
戦前期の助成財団の助成決定に係る審査の研究については、資料の量が多いため分析に予定より時間がかかっている状態である。現在詳細な分析を進めている最中である。 また、助成の受け手側の団体から助成の意義について検証する研究については、1つの団体(興望館)については、財政に関する資料があったため検証が進んでいる。しかし、もうあと数施設や団体に関しても検証を進める予定であるが、財政に関する適当な資料が見当たらないため、現在検証可能な団体を選定中である。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度4月から半年間長期滞在研修で東京に滞在予定であり、比較的自由な研究時間と資料にアクセスがしやすい環境にある。この環境を活かして現在遅れている資料の検索や研究を進める予定である。
|
Causes of Carryover |
(理由)次年度に長期滞在研修が決まったため、春休みに予定していた出張を取りやめたため。また、次年度の研修中の研究費として確保するため。
(使用計画)次年度の長期滞在研修中の研究費として使用する。
|