2017 Fiscal Year Research-status Report

在宅看取り介護の初期段階における困難性とその原因の分析

Research Project

Project/Area Number	17K04234
Research Institution	Japan Health Care College
Principal Investigator	林美枝子日本医療大学, 保健医療学部, 教授 (40295928)
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha)	永田志津子札幌大谷大学, 社会学部, 教授 (60198330)
Project Period (FY)	2017-04-01 – 2020-03-31
Keywords	看取り / 在宅死 / 家族介護者 / 医療と介護の地域資源 / 医療と介護の連携 / 医療と介護の専門職 / 困難性
Outline of Annual Research Achievements	本研究の目的は、在宅での看取り介護の準備段階における医療と介護の環境整備の困難性が何に起因するのかを、家族介護者の視点から明らかにすることである。そのために看取り介護に対する特定地域の医療、介護資源、既存の行政や民間レベルの支援制度の全体像を把握するため、まずは医療と介護の専門職を対象にヒアリング調査を実施し、当該地域で在宅看取りを行う際の地域資源の選択肢を把握する。次に地域資源の資料をもとに作成した地域の医療・介護資源シートを示しながら、看取りを行った家族介護者に聴き取り調査を実施し、どのような具体的な知識や助言があれば、看取りの初期段階での困難は回避できたのかを評価してもらう。看取り介護を経験した家族介護者の対象者は30名程度を予定している。収集した聞き取り内容は、テキスト化して記述的に整理するとともに、意味論分析を行って困難性に関連する要因を検討する。政策的に誘導されている在宅死の看取りは、家族介護者を大量に発生させることになるが、その精神的、肉体的な高負担は看取りに関わった家族を結束させると同時に、閉鎖性も生じさせてきた。看取り介護の継続、成否、予期悲嘆の多寡は、これまでの研究から初期段階の環境整備における医療・介護の適切な専門家といかに連携できたかにかかっているが、家族介護者の不安や精神的疲労は看取りの準備段階から始まっており、専門職から適切な支援を得られるまでの不安や混乱は極めて深刻である。なぜ医療・介護の適切な専門家と繋がることに困難性があるのか、あるいは他の困難性の有無や、それが何に起因するのかを機要求可能な地域資源への評価とともに検討することで、看取りの環境整備段階における支援の在り方を検討する。在宅見取りの研究は近年増加しているが、具体的な地域資源との関係でその初期の環境整備に関する困難性を明らかにした研究はないため、本研究の意義は大きい。
Current Status of Research Progress	Current Status of Research Progress 2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned. Reason 計画通り看取り介護における困難性に関連する文献のレヴューを行い、予定通り在宅支援診療所、在宅医療の専門医、居宅介護福祉施設、訪問看護ステーション、訪問介護ステーション、在宅療養を支援するNPO 法人の専門職から具体的地域資源を調査することができた。医療・介護の専門職における看取り介護の初期支援に関する資料からは、医療と介護の地域資源には地域間格差があること、調査対象とした医療・介護資源の少ない地域では連携が広域にわたるため、地域包括ケアシステムの範囲を超えた連携が絡み合っていて、予定していた2か所の地域の調査ではなく聞き取りを開始した1地域とその周辺域を地域資源の調査対象に変更することとした。医療と介護の専門職からみた看取りの初期段階での困難性に関しては、家族介護力の有無と経済力の有無がまずは問題となるが、本人、あるいは本人と家族が熱心に在宅での看取りを希望している場合は支援の方向で医療・介護の連携を探ることになる。しかし、在宅移行を支援する相談員やケアマネジャーは、自らの経験的知識やパーソナルネットワークによる選択肢の中から、勘に頼った環境整備を行う傾向が高かった。そのため地域資源の情報は必ずしも公正で多様なものではなく、事業所の都合や所属する病院の連携施設の偏りに起因していることも明らかとなった。学会発表や論文にその成果をまとめることができたが、英語論文として投稿する時間がなく、家族介護者を調査対象とする次年度の研究までに作成を予定していた看取り環境を整えるための地域資源に関する調査シートの作成も遅れてしまった。地域資源の実際の情報を閲覧する全国サイトや都道府県レベルのサイトはあるが、項目ごとの表層的な内容であるためシートづくりの作業は困難なものとなっているが、聞き取り対象者のリスト作成は予定より早く着手することができている。
Strategy for Future Research Activity	今後は、調査対象地域で在宅看取りを行った家族介護者に対する、看取り環境の整備段階での困難性の実態を、聞き取り調査から明らかにしていく。そのための準備として評価を受ける上で示す地域資源に関する情報シートの完成をまずは進め、同時に聞き取り調査対象の家族介護者の紹介を医療・介護の聞き取りをした医師や看護職、居宅介護の事業所に対して依頼をする。条件は在宅、あるいは居宅で、訪問診療や訪問看護師、訪問介護士の支援を受けながら家族介護者が看取った事例で、すでに対象となる家族介護者のグリーフ・ケアが終了している事例を対象とする。看取りを支援するための地域資源を一覧できる調査用の情報シートの作成を完了し、家族介護者にそれを示しながら、在宅での看取りに至った状況や、患者、家族介護者の社会的基礎項目、看取りの環境整備の概要、初期の環境整備がその後の看取りに与えた影響、看取りの整備の困難性の有無、シート上の情報の認知度、困難性を感じたとするなら何にそれが起因していたと思うか等を調査する。データは録音しテキスト化して記述式に研究目的について論述を行うとともに、意味論分析による関連要因を分析する。明らかになった困難性を回避するための方法を考察し、その実現の可能性を検討する。成果は論文にまとめ、一部は看取りネットに新たなページを構築して発信する。支援を要するリスクが明らかになるとともに、選択可能な地域資源のサービスとどうそれを必要とする患者や家族介護者が結び付けられるのかを検討する。
Causes of Carryover	次年度使用額が生じた理由は英語論文の作成が次年度になったからである。その翻訳/ネイティブチェック代金が次年度に繰り越されることとなった。次年度は英語論文の投稿を予定しているため、そのための翻訳/ネイティブチェック代金として使用する。
Remarks	看取りの家族介護者の経験値の集積を求めて2015年に構築した。本研究助成費でアクセス数やページビューの数の変化を観察し、ページの加筆、デザインの変更等を行っている。