2017 Fiscal Year Research-status Report
包括的な相談支援体制での独立型社会福祉士によるコーディネートの有効性
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17K04236
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Research Institution | Hirosaki Gakuin University |
Principal Investigator |
小川 幸裕 弘前学院大学, 社会福祉学部, 准教授 (90341685)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 独立型社会福祉士 / 包括的相談支援 / コーディネート / 成年後見制度 / 成年後見制度利用促進基本計画 / 権利擁護ネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
既存の福祉関連サービスでは対応が困難な制度の狭間の課題の解決には、地域における包括的な相談支援体制を構築し、多機関・多職種をコーディネートできる人材が求められている。本研究では、制度の狭間の課題解決に向けて、既存の組織から独立し地域特性に応じたソーシャルワークをとおして、多機関・多職種をコーディネートする独立型社会福祉士の実践に着目し、包括的な相談支援体制での独立型社会福祉士によるコーディネートの有効性を検証することを目的としている。 1年目は、独立型社会福祉士によるコーディネートの実態把握に関するアンケート調査にむけ先行研究のレビューおよびアンケート調査票の作成を行った。先行研究のレビューでは、地域包括支援センターおよび社会福祉協議会に所属する社会福祉士、独立型社会福祉士による日々の実践において地域への働きかけが十分ではない状況がわかった。また、社会福祉士が所属する組織機関で地域への働きかけに違いがみられなかったことから、独立型社会福祉士によるコーディネートの有用性を明らかにする上で、他専門職との比較検討が可能な実践場面を検討した。結果、成年後見制度利用促進計画において包括的な権利擁護支援体制の構築を目指す成年後見制度における社会福祉士の後見活動に焦点をあてることとした。 新たな権利擁護支援体制における成年後見制度の運用において社会福祉士には、社会福祉専門職として参加するチームおよびネットワークのメンバーと専門職後見人の2つの立場から権利擁護支援が必要な人を発見し、問題解決に向けてニーズと資源をコーディネートする役割が期待される。具体的には、①後見人等として資源をコーディネートする役割、②チームメンバーとして資源をコーディネートする役割、③地域連携ネットワークメンバーとして資源をコーディネートする役割が考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究は、包括的な相談支援体制での独立型社会福祉士によるコーディネートの有効性を検証することを目的としている。研究期間は4年とし、1年目に独立型社会福祉士による制度の狭間にある課題解決に向けたコーディネートの実態把握、2年目に独立型社会福祉士による多機関協働を基盤としたコーディネート実践プロセスの抽出、3年目に独立型社会福祉士がコーディネート人材として有効に機能している実践事例の類型化、4年目に研究の総括としている。 1年目にあたる平成29年度は、独立型社会福祉士のコーディネートの実態把握を予定していたが、日本社会福祉士養成校協会(2017)による『地域における包括的な相談支援体制を担う社会福祉士養成のあり方及び人材活用のあり方に関する調査研究事業〈実地報告〉』の調査結果をうけ予定を変更することにした。この調査では、本研究で調査対象としていた地域包括支援センター、社会福祉協議会、独立型社会福祉士の地域への働きかけに関する調査が行われ、結果、独立型社会福祉士をはじめ地域包括支援センター、社会福祉協議会のすべてで地域への働きかけは低い水準であり、社会福祉士が地域の社会資源のコーディネートを十分に担えていない実態がみられた。しかし、独立型社会福祉士は勤務型社会福祉士よりも地域への働きかけに関する力量についてはかなり高い水準であったことから、独立型社会福祉士におけるコーディネートの有効性を明らかにするには、具体的な活動場面の設定が必要と考えた。そこで、平成29年度内に独立型社会福祉士のコーディネートに関する実態把握を目的としたアンケート調査を実施し分析を行う予定であったが、独立型社会福祉士によるコーディネートの有効性を明らかにすることができる実践場面を選定するため、社会福祉士、専門性、多職種連携に関する文献研究を再度行ったことから当初の予定より遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、平成29年度に実施を予定していた独立型社会福祉士による制度の狭間にある課題解決に向けたコーディネートの実態把握およびコーディネートに影響を与える関連要因の抽出を行う。対象は、日本社会福祉士会会員名簿で所属先コードが独立型社会福祉士に該当する社会福祉士約1200名とする。質問項目は、①基本属性、②地域特性、③収入および経済的基盤の安定度、④制度の狭間の認識状況、⑤連携協働している職種・機関、⑥地域への働きかけ、⑦課題と対応を予定している。無記名自記式質問調査を用い、個人情報管理の観点から日本社会福祉士会事務局に発送作業を依頼する。アンケートデータの分析はSPSS Statistics Baseを使用し分析を行う。アンケートデータの分析が終了次第、インタビュー調査の準備を開始する。 平成30年度における具体的な研究の流れは、4月~9月:プレ調査およびアンケート調査票の修正、10月:アンケート依頼、11月~1月:アンケート実施および分析、2月~3月:インタビュー調査の実施を予定している。平成29年度に行う予定であったアンケートの実施および分析が平成30年度に持ち越されたことで、平成30年度に予定していたインタビュー調査が平成31年度に持ち越されることが予想されるが、最終年度となる平成32年度は研究の総括にあてていることから現在の遅れには対応が可能である。
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Causes of Carryover |
平成29年度内に独立型社会福祉士のコーディネートの実態把握に関するアンケート調査の実施およびデータの分析を行う予定であった。しかし、先行研究のレビューから独立型社会福祉士におけるコーディネートの有効性を明らかにするうえで具体的な実践場面を選定することが必要であることが分かった。そこで、実践場面を選定するため社会福祉士、専門性、多職種連携に関する文献研究を再度行ったことから、平成29年度に予定していたアンケート実施が平成30年度に持ち越されることとなった。 平成30年度の使用計画は、平成29年度に実施できなかったアンケート調査の実施および分析に関する費用として約50万円、インタビュー調査で使用する備品および旅費として約50万円、研究成果の報告に係る会場までの旅費として約30万円を予定している。
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Research Products
(4 results)