2019 Fiscal Year Research-status Report
包括的な相談支援体制での独立型社会福祉士によるコーディネートの有効性
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17K04236
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Research Institution | Hirosaki Gakuin University |
Principal Investigator |
小川 幸裕 弘前学院大学, 社会福祉学部, 教授 (90341685)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 独立型社会福祉士 / 包括的相談支援体制 / 社会福祉士 / コーディネート / 権利擁護 / アドボカシー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、包括的な相談支援体制での独立型社会福祉士によるコーディネートの有効性を検証することを目的としている。 3年目は、独立型社会福祉士のコーディネートに関する活動の実態把握を目的に、全国の独立型社会福祉士1247名を対象に自記式質問用紙を用いた郵送調査をおこない490人(回収率39.3%)の回答を得た。独立型社会福祉士によるコーディネートに関する活動の探索的因子分析をおこなった結果、独立型社会福祉士は、①住民支援活動、②アドボカシー活動、③専門職支援活動、④行政支援活動の4つを重視してコーディネート活動をおこなっていることがわかった。 アンケート結果から、独立型社会福祉士によるコーディネート活動の中核概念としてアドボカシーが確認されたことから、法律専門職(弁護士4名、司法書士1名)と社会福祉専門職(独立型社会福祉士3名、勤務型社会福祉士4名)を対象に多職種連携場面におけるアドボカシー活動に関するインタビュー調査をおこなった。結果、社会福祉専門職と法律専門職のアドボカシー活動の比較検討から、「対象」「目的」「視点」「方法」「介入」「過程」「期間」に違いがあることが明らかにされた。また、成年後見活動で多様な社会資源のコーディネートをおこなっていることを確認した。 これらアンケート調査とインタビュー調査から、コーディネートの分析枠組みとして権利擁護概念よりも具体的プロセスを有するアドボカシー概念を用いることが妥当であると考え、文献研究から海外と日本のアドボカシーの定義を比較検討し、アドボカシーの操作的定義とプロセスを明らかにした。そして、コーディネートプロセスおよび実践事例の抽出場面として成年後見活動に着目し、成年後見活動でのコーディネートプロセスの可視化を目的としたインタビューガイドを作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究は、包括的な相談支援体制での独立型社会福祉士によるコーディネートの有効性を量的研究と質的研究から検証することを目的としている。研究期間は4年で、令和元年度は3年目にあたる。これまで、新たな包括的相談支援体制として整備がすすめられている中核機関における独立型社会福祉士の位置付けの整理をおこなった。中核機関を中心とした新たな権利擁護支援体制において、独立型社会福祉士は権利擁護の視点を基本としたソーシャルワークをおこなう役割を担っていることを確認した。そこで、わが国の社会福祉領域における権利擁護概念およびアメリカと日本のアドボカシー概念の整理をおこない、権利擁護およびアドボカシーを操作的に定義した。これらの概念整理から、独立型社会福祉士のコーディネートの分析枠組みとしてアドボカシー概念とアドボカシープロセスを用いることとした。 独立型社会福祉士を対象としたアンケート調査では、独立型社会福祉士の実態把握とコーディネート活動で重視される4つの活動(①住民支援活動、②アドボカシー活動、③専門職支援活動、④行政支援活動)を明らかにし、アドボカシー活動が中核概念となっていることを確認した。また、コーディネートプロセスおよび実践事例の検討をおこなう具体的な活動場面の選定にむけ、社会福祉専門職と法律専門職への多職種連携活動に関するインタビュー調査をおこなった。結果、独立型社会福祉士によるコーディネートプロセスの検討場面として成年後見活動を抽出した。 令和元年度までに独立型社会福祉士によるコーディネート活動の実態把握を踏まえ、コーディネートプロセスの抽出および実践事例の類型化を終えている予定であったが、インタビュー調査と実践事例の類型化がおこなえていない。遅れが生じた理由として、先行研究のレビューおよび、アンケート調査とインタビュー調査に係る調査依頼に時間を要したことがあげられる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度にあたる令和2年度は、独立型社会福祉士によるインタビュー調査から、コーディネートプロセスの可視化およびコーディネート活動に影響を与える関連要因を抽出し、独立型社会福祉士のコーディネート活動の実践事例の検討から事例の類型化をおこなう。そして、これらのアンケート調査とインタビュー調査の結果をまとめ、研究の総括をおこなう。 具体的には、インタビュー調査によるデータ収集と分析をおこなう。インタビューの対象の選定とプレ調査を終えているため、調査依頼および実施は円滑におこなえる予定である。調査対象は、成年後見活動においてコーディネート活動をおこなった経験がある独立型社会福祉士6名を予定している。インタビューの内容は、①活動の内容と課題、②コーディネート活動の事例、③コーディネートの成功要因と失敗要因、④今後の展望を中心に聞き取りをおこなう。インタビューデータの分析は、質的データ分析ソフトMAXQDAを用いる。インタビューデータの分析から、独立型社会福祉士のコーディネートプロセスの可視化をおこない、実践事例の類型化をおこなう。そして、これまでの量的研究と質的研究の成果をまとめ、成果報告書の作成をおこなう。 令和2年度における研究の流れは、4月~6月:インタビュー調査の依頼、6月~9月:インタビュー調査の実施、10月~12月:インタビューデータの分析、1月~3月:まとめ及び報告書の作成。 令和元年度に行う予定であったインタビュー調査の実施および分析が令和2年度に持ち越されたことで、最終年度である令和2年度は、インタビュー調査、実践事例の類型化、研究の総括をおこなう予定であるが、既に調査対象の選定および調査依頼は終えていることから、現在の遅れには対応が可能である。
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Causes of Carryover |
令和元年度内に独立型社会福祉士へのインタビュー調査の実施およびデータの分析を行う予定であったが、アンケート調査の実施および分析に時間を要したことから、インタビュー調査で使用する予定であった旅費および備品などに関する費用を次年度に使用することとなった。 令和2年度の使用計画は、令和元年度に実施できなかったインタビュー調査で使用する備品(ICレコーダー、データ解析ソフト、インクトナーなど)として約20万円、インタビュー調査の旅費(北海道、青森県、岩手県、大阪府、広島県、大分県など)として約50万円、研究成果の報告に係る会場までの旅費(東京都、大阪府など)として約50万円、成果報告書の印刷・製本および配送料として約20万円を予定している。
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Research Products
(8 results)