2020 Fiscal Year Research-status Report
包括的な相談支援体制での独立型社会福祉士によるコーディネートの有効性
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17K04236
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Research Institution | Hirosaki Gakuin University |
Principal Investigator |
小川 幸裕 弘前学院大学, 社会福祉学部, 教授 (90341685)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 独立型社会福祉士 / コーディネート活動 / ソーシャルワークアドボカシー / 法定後見活動 / 包括的相談支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度は、新型コロナウィルス感染症の影響によりインタビュー調査が行えなかったことから、アドボカシーの概念整理と法定後見活動におけるアドボカシー活動に関する文献研究を行った。 第一に、法定後見活動におけるアドボカシープロセスの分析項目を明らかにすることを目的に、アドボカシーの議論が活発に行われた1960年代以降のアメリカにおける議論の変遷を検討し、アドボカシーを構成する主要な項目を検討した。法定後見活動におけるアドボカシープロセスを分析する項目として「アドボカシーの対象」「ソーシャルワーカーとクライエントの関係」「介入の範囲」「アドボカシーの戦術」「アドボカシーの種類」の5つを抽出した。第二に、わが国のアドボカシーの定義の分析からアドボカシー概念を構成する主要な要素を抽出し、法定後見活動との関連を検討した。アドボカシー活動の中核概念として「代弁」「エンパワメント」「意思決定支援」を抽出し、アドボカシーはエンパワメントの理念と過程を基本に本人意思の尊重と代理代行決定のバランスを図り意思表明から意思実現を可能にする活動であることを確認した。第三に、ソーシャルワークアドボカシーとリーガルアドボカシーの特徴の整理から、ソーシャルワークアドボカシーが、クライエントとのパートナーシップ関係を基本にケースアドボカシーからクラスアドボカシーまでの一連の過程を含むアドボカシーであり、被後見人の権利回復や救済に限定せず、被後見人の意思形成や意思実現に向けた環境整備も含み、本人意思の尊重にむけた法定後見活動の基本として位置づけられる必要性を確認した。第四に、民法858条の立法過程における議論と身上監護に関する学説を踏まえ、系統的文献レビューから身上監護の定義(職務範囲)の比較検討を行い、法定後見活動を「財産管理」「身上肢護」「法律行為を支える実務」の3点から包括的に捉える必要性を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究は、包括的な相談支援体制での独立型社会福祉士によるコーディネートの有効性を量的研究と質的研究から検証することを目的としている。 独立型社会福祉士を対象としたアンケート調査では、独立型社会福祉士の実態把握とコーディネート活動で重視される4つの活動(①住民支援活動、②アドボカシー活動、③専門職支援活動、④行政支援活動)を明らかにし、アドボカシー概念がコーディネート活動の中核概念となっていることを確認した。コーディネートプロセスおよび実践事例の検討をおこなう具体的な活動場面の選定にむけ、社会福祉専門職と法律専門職への多職種連携活動に関するインタビュー調査をおこない、独立型社会福祉士によるコーディネートプロセスの検討場面として法定後見活動を抽出した。 当該年度は、法定後見活動でのコーディネートプロセスの可視化を目的としたインタビューを予定していたが、新型コロナウィルス感染症の影響によりインタビュー調査が行えなかったことから、アドボカシーの概念、法定後見活動のおけるアドボカシー活動に関する文献研究を行った。 わが国のアドボカシー概念は、エンパワメントの理念と過程を基本に本人意思の尊重と代理代行決定のバランスを図りつつ、本人の意思表明から意思実現を可能にする活動であることが確認された。そして、法定後見活動におけるソーシャルワークアドボカシー活動は、「財産管理」と「身上監護」の基盤として位置づけられる本人意思の表明と実現に関する実務(法律行為を支える事務)であることを明らかにした。法定後見活動でのアドボカシー活動は、「法律行為に付随する事務」となり正規の活動に位置づけられず、その程度は後見人の解釈に委ねられる。アドボカシー概念を基本として「法律行為に付随する事実行為」が展開されることで、本人意思にもとづいた身上監護と財産管理の一体的展開が可能になることを示唆した。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度にあたる令和3年度は、独立型社会福祉士によるインタビュー調査から、コーディネートプロセスの可視化および独立型社会福祉士のコーディネート活動の実践事例の検討から事例の類型化をおこなう。そして、アンケート調査とインタビュー調査の結果をまとめ、研究の総括をおこなう。 具体的には、インタビュー調査によるデータ収集と分析をおこなう。インタビューの対象の選定とプレ調査を終えているため、調査依頼および実施は円滑におこなえる予定である。調査対象は、成年後見活動においてコーディネートを含むアドボカシー活動を行った経験がある独立型社会福祉士5名を予定している。インタビューデータの分析は、質的データ分析ソフトMAXQDAを用いる。インタビューデータの分析から、独立型社会福祉士のコーディネートプロセスの可視化をおこない、実践事例の類型化をおこなう。そして、これまでの量的研究と質的研究の成果をまとめ、成果報告書の作成をおこなう。 令和3年度における研究の流れは、4月~6月:インタビュー調査の依頼、6月~9月:インタビュー調査の実施、10月~12月:インタビューデータの分析、1月~3月:まとめ及び報告書の作成。 令和2年度に行う予定であったインタビュー調査の実施および分析が令和3年度に持ち越されたことで、最終年度である令和3年度は、インタビュー調査と研究の総括をおこなう予定であるが、既に調査対象の選定および調査依頼は終えていることから、現在の遅れには対応が可能である。
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Causes of Carryover |
令和2年度内に独立型社会福祉士へのインタビュー調査の実施およびデータの分析を行う予定であったが、新型コロナウィルス感染症の影響によりインタビュー調査が行えなかったことから、インタビュー調査で使用する予定であった旅費および備品などに関する費用を次年度に使用することとなった。 令和3年度の使用計画は、令和元年度に実施できなかったインタビュー調査(リモートを含む)で使用する備品(ICレコーダー、データ解析ソフト、ビデオカメラ、インクトナーなど)として約50万円、インタビュー調査の旅費(北海道、青森県、岩手県、大阪府、広島県、大分県など)として約50万円、研究成果の報告に係る会場までの旅費(東京都、大阪府など)として約40万円、成果報告書の印刷・製本および配送料として約20万円を予定している。
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Research Products
(7 results)