2022 Fiscal Year Research-status Report
包括的な相談支援体制での独立型社会福祉士によるコーディネートの有効性
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17K04236
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Research Institution | Hirosaki Gakuin University |
Principal Investigator |
小川 幸裕 弘前学院大学, 社会福祉学部, 教授 (90341685)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 独立型社会福祉士 / 包括的相談支援体制 / アドボカシー |
Outline of Annual Research Achievements |
令和4年度は、コーディネートプロセスの可視化とコーディネートの成功要因と疎外要因の抽出を目的に独立型社会福祉士へのインタビュー調査を行った。インタビューは、コーディネートを含むアドボカシー活動を行った経験がある独立型社会福祉士5名に半構造化インタビューを行った。 分析の結果、独立型社会福祉士によるコーディネートのプロセスとして、①地域・組織アセスメントによる課題発見、②既存の会議体を活用した課題の可視化・共有化、③支援関係者が集う場づくり、④地域への課題発信の4つが確認された。まず、日常業務や地域活動(ネットワーク形成や勉強会・委員会活動等)をとおして地域アセスメントを行い、既存の制度課題のほか地域や組織の構造的課題を発見していた。発見した課題は既存の会議や勉強会等を活用し、支援関係者間で共有化・可視化が図られていた。そして、既存の会議体等の活用が困難な場合には、支援関係者が集う場の創出に向けた取り組みを行い、既存の会議体や新たに創出した場を用いて、生活課題を抱える人の存在や権利に関する課題などを関係者へ発信し地域の協力者を増やしていた。 独立型社会福祉士のコーディネートの成功要因として、①「地域や組織の構造理解」(多様な立場から地域や組織の構造を理解し支援関係者が置かれる状況に配慮した働きかけ)、②「課題の共有化・可視化を図る場の創出」(課題の共有化・可視化を図る既存の場がない場合には自ら支援関係者が集う場を創出)、③「本人中心を支えるアドボカシー」(活動の制限を受けることが少ない自由度の高い事業形態の強みを活かし本人のアドボケイトを軸とした協働)が確認された。また、疎外要因には「対価の安定的な確保」(対価につながりにくいネットワーク形成や関係形成などと対価が発生する活動とのバランス)が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、包括的な相談支援体制での独立型社会福祉士によるコーディネートの有効性を量的研究と質的研究から検証することを目的としている。独立型社会福祉士を対象としたアンケート調査において、コーディネートは、「住民支援活動」「アドボカシー活動」「専門職支援活動」「行政支援活動」の4つで構成されていることが確認された。各支援活動の中核にはアドボカシー活動が位置付けられ、アドボカシー活動の関連要因として「年齢」「独立型社会福祉士としての経験年数」「事業形態」「年収」「人口規模」「名簿登録」が確認された。 次にアドボカシー概念を中核とするコーディネートプロセスを抽出する場面として法定後見活動を取り上げ、質的分析を行った結果、コーディネートにおける住民支援・専門職支援・行政支援の基盤としてチームとネットワークの形成が重要であることが確認された。地域活動全般におけるコーディネートプロセスでは、①地域・組織アセスメントによる課題発見、②既存の会議体を活用した課題の可視化と共有化、③支援関係者が集う場づくり、④地域への課題発信の4つ確認された。 包括的支援は、支援機関が少しずつ制度上の活動範囲を超えて協働関係を形成する必要があるが、所属組織内や行政の所管課とのコンフリクトを招きやすい。そのため、協働における役割分担やルールの調整には、専門職間の関係形成と専門職が所属する機関組織の構造理解が重要となることが確認された。独立型社会福祉士は、①自由度の高い活動形態を活かした即応的・柔軟的・継続的活動、②同一地域での長期間の活動による支援関係者との信頼関係の構築、③活動地域と自らの生活圏域の重なりがもたらす市民目線による地域アセスメントの強みを発揮することで、地域の歴史・文化・慣習および支援関係組織の構造理解を踏まえたコーディネート実践を実現していることが確認された。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究から、独立型社会福祉士によるコーディネートは、地域や支援組織の構造理解を基盤に、地域住民、専門職、行政と信頼関係を形成し、本人意思のアドボケイトによって地域住民を含む支援関係者で可視化・共有化を図り、既存の会議体または新たな場の創出をとおして地域社会の協力を得る一連の活動を展開していることが確認された。これらの活動は、独立型社会福祉士が継続性の強みを発揮し、“土着性”(その土地に根付いた活動)が当事者とはじめ、専門職・行政・地域住民の主体性を支えるうえで重要な要素になっていると考えられる。このような“土着性”がどのようにコーディネート実践に影響を与えているかを明らかにすることを目的に令和5年度は、独立型社会福祉士のコーディネート活動の事例調査をおこなう。そして、これまでの量的研究と質的研究の成果をまとめ、報告書の作成をおこなう。 令和5年度における研究の流れは、5月~6月:事例調査の依頼、6月~9月:事例調査の実施、10月~12月:データの分析、1月~3月:まとめ及び報告書の作成を予定している。 令和4年度に行う予定であったインタビュー調査の実施および分析が令和5年度に持ち越されたことで、最終年度である令和5年度は、事例検討と研究の総括をおこなう予定であるが、既に調査対象の選定および調査依頼は終えていることから、現在の遅れには対応が可能である。
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Causes of Carryover |
令和4年度内に独立型社会福祉士への事例調査の実施およびデータの分析を行う予定であったが、新型コロナウィルス感染症の影響により訪問による事例調査が行えなかったことから、事例調査で使用する予定であった旅費に関する費用を次年度に使用することとなった。 令和5年度の使用計画は、令和4年度に実施できなかった事例調査の旅費(北海道、青森県など)として約20万円、成果報告書の印刷・製本および配送料として約10万円を予定している。
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Research Products
(3 results)