2019 Fiscal Year Research-status Report
Study on Social Work in the Process of Social Integration of Immigrants and Refugees
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17K04240
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Research Institution | Bunkyo University |
Principal Investigator |
森 恭子 文教大学, 人間科学部, 教授 (10331547)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ソーシャルワーク / 定住支援 / 多文化共生 / 社会統合 / 文化的コンピテンス / 難民 / 移民 / 外国人 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、日本国内の外国人住民および関係者・機関(市役所、社会福祉協議会、民生児童委員、ボランティア等)を中心に、定住支援に関する聞き取り調査を実施した。また、研究者が本研究の当初からフィールドとしている関わっている春日部市内の外国人の子どもの日本語教室の参与観察を引き続き実施した。こうした国内調査では、行政や地域福祉の中核である社会福祉協議会が、外国人住民に関する生活課題を十分に把握していないこと、また外国人に関する生活全般の支援(日本語・教科学習支援、生活支援)は地域住民の一部のボランティアが担わされていることが明らかになったといえる。国内調査はアクションリサーチとしての意味を含んでいたが、調査を通して社会福祉協議会との協働で、地域住民を対象とした外国人住民の生活課題等に関する講座を開催することができた。 また、本年度は、国内調査および昨年度までに実施した第一次・第二次海外調査の成果を公表することに努めた。とくに昨年度末に実施したスウェーデンの調査報告について、学会発表、ソーシャルワーク専門誌で紹介することができた。その他、群馬県では7月のソーシャルワーカーデーに福祉専門職を対象とした外国人支援に関するシンポジウムの講師に招聘され、また東京都大田区社会福祉士会主催の定例会では外国人支援の講演会を行うなど、福祉従事者へ研究の成果を話す機会を得ることができた。 さらに、昨年度の海外調査の協力者である難民支援者(難民当事者でもある)が、来日した際に、彼をゲストに迎え定住支援に関する勉強会を研究者の大学で開催し、福祉を学ぶ大学生が参加した。また難民支援を行っている日本のソーシャルワーカーとの交流の場を設けることができた。大学生およびソーシャルワーカーは、定住支援における「ストレングスアプローチ」の理解が深まったといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の三年目では、国内の聞き取り調査を重点的に実施する予定であった。おおむね予定していた関係者には話を聞くことができた。しかし、国内調査および外国人の子どもの日本語教室のフィールドワークを通して、教育と福祉の協働による定住支援の重要性を実感したものの、時間的余裕がなく、小中学校の教員や教育委員会などの教育関係者の聞き取りをすることができなかった。 また、年度途中に、研究者のフィールドであった外国人の子ども日本語教室の存続の危機が生じた。これは地域の学習支援ボランティアの負担増および教室のリーダー役を引き受ける人がいなくなったこと等が理由である。日本語教室は、外国人の子どもおよび親にとって、子どもの学習の場および居場所という意味でも存在意義は大きかった。閉室してしまうには惜しいこともあり、当該研究者が前任者からリーダー役を一時的に引き継ぐことになった。参与観察という傍観者的立場から、企画・運営にも携わることになったことで、外国人定住支援の実践という重責がのしかかった。研究者一人では到底対応できないため、民間の外国人支援団体のソーシャルワーカーに協力をあおぎ、現在は共に日本語教室を運営している。 一方、本年度の目的は、研究成果を広く外部に示すことであった。学術学会での発表および福祉専門職・地域住民への講演、大学紀要論文の掲載、ソーシャルワーク専門誌への報告など幅広く成果を公表できた。しかし、本研究の3年間の全体を通した報告書の作成の完成には至らなかった。理由は、研究者が病気のため手術することになり、研究が中断したことによる。従って、当初の予定に反し研究は3年間では終了できず、科学研究費助成事業補助事業期間の延長をすることとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
本来は、2019年度が研究の最終年であったが、研究者の私事都合で延長することになった。そのため、昨年度の目標の積み残しである3年間の国内外の調査の成果をまとめた報告書の作成を行う予定である。すなわち、第一次・第二次海外調査(オーストラリア、イギリス、スウェーデン)および国内調査から得た知見を整理し、移民・難民(もしくは外国人)の定住・社会統合プロセスにおけるソーシャルワークの理論・実践の枠組み・モデルの試案を提示できればと考えている。 また、成果の発表に関しては、スウェーデンでの調査については、さまざまな形で広く発表できたが、オーストラリアについては、十分に発表できる機会がなかった。とくにオーストラリアのフェアフィールド市の定住計画については、日本の地方自治体の多文化共生計画・地域福祉計画等におおいに示唆を与える要素を含んでいる。とりわけ、定住計画でのコンセプトとして、行政と民間の協働を強調する「コレクティブ・インパクト」、そして地域の固有性を重んじる「プレイスド・ベースド」アプローチは参考になると考えている。 その他、国内調査の成果については、国際ソーシャルワーク学校連盟(IASSW)主催「2020年ソーシャルワーク教育及び社会開発合同世界会議」(イタリア、リミニにて、11月開催)で発表する予定(承認)されている。ただし、新型コロナウィルスの影響により、開催有無や海外渡航が可能かどうか未定である。成果の発表については、本年度はオンラインなどによる発信も視野にいれることも考えていきたい。
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Causes of Carryover |
研究の国内外の調査報告書を作成する予定で、報告書のための予算を組んでいた。しかし、研究者の私事都合(病気)により、報告書の作成が遅れ発行できなかった。
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