2019 Fiscal Year Research-status Report
子育て支援策を内包するフランス社会保障政策の理論的分析―ラロック理論の再検討―
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17K04249
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
宮本 悟 中央大学, 経済学部, 教授 (70352846)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 社会保障 / 家族給付 / 家族手当 / フランス / ラロック / 子育て支援 / 少子化 / 社会手当 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、①ラロック理論がフランス社会保障制度に与えた影響に関する考察を継続するとともに、②現行制度における家族給付部門の位置づけを中心に検討を進めた。研究を通じて得られた主な知見は、下記のとおりである。 (1)フランスは、先進資本主義諸国の中では比較的高い2.0を超える合計特殊出生率を記録し、その子育て支援策の充実ぶりが注目されていた。しかしながら、2010年度の2.03をピークにその後2010年代はほぼ一貫して合計特殊出生率が低下しており、国立統計経済研究所(INSEE)によると、2019年は1.87(速報値)にとどまっている。その結果、主に3歳未満の乳幼児が対象となる乳幼児受入れ給付(PAJE)の給付総額は減少傾向を示している。 (2)家族給付制度改革としては、オランド政権が2014年に発表した「責任・連帯協定(pacte de responsabilité et de solidarité)」の関連で、収支構造を変える施策が導入された。すなわち、①家族給付の中核たる家族手当(AF)については、2015年7月から所得水準に応じて給付額が3段階に変動する多段階制が取り入れられ、②家族給付部門全体の収入については、低所得労働者を雇用する雇主の拠出率負担を1.8%ポイント引き下げて3.45%に軽減する、などの諸施策が断行されたのであった。 現行制度に関する研究をとりまとめた論文「フランス家族給付改革の動向 ―2010年代後半の政策展開―」は、中央大学『白門』(72巻、通算844号、2020年9月刊行予定)に掲載される。 予定していた研究に若干の遅れが生じてしまい、ラロック理論がフランス社会保障制度に与えた影響に関する研究成果については、2020年度中に論文として取りまとめることとする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究代表者が介護問題を抱えていたことにより、研究時間の十分な確保は困難であった。そのため、本年度に取り組む予定であった2つの課題のうち、ラロック理論がフランス社会保障制度に与えた影響に関する考察については、論文として取りまとめるには至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
補助期間の延長を了承していただき最終年度となる令和2年度は、ラロック理論がフランス社会保障制度に与えた影響に関する考察の成果を論文として取りまとめ、『経済学論纂』(中央大学)にて公表する予定である。
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Causes of Carryover |
研究代表者が介護問題を抱えていたことにより、研究時間の十分な確保は困難であった。そのため、本年度に予定していた国内出張の実施を断念し、旅費や謝金などについて未使用部分が残された。 令和2年度は、社会保障理論・子育て支援問題などを専門としている学内外の研究者との研究交流を進め、①子育て支援策の観点から捉え直したラロック社会保障理論、②子育て支援策を重視した社会保障制度の在り方 などを主要なテーマとして、それぞれの専門的視点からの意見交換を行いたいと考えている。これを踏まえて、研究成果の総括を試みる。
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