2017 Fiscal Year Research-status Report
「制度の狭間」を支援する社会的企業の福祉供給体制下における意義と役割に関する研究
Project/Area Number |
17K04259
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Research Institution | Musashino University |
Principal Investigator |
熊田 博喜 武蔵野大学, 人間科学部, 教授 (30366877)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
本多 勇 武蔵野大学, 人間科学部, 教授 (80296201)
後藤 広史 日本大学, 文理学部, 准教授 (60553782)
相馬 大祐 福井県立大学, 看護福祉学部, 講師 (70533199)
庄司 貞之 城西国際大学, 福祉総合学部, 教授 (00523060)
川村 岳人 大分大学, 福祉健康科学部, 講師 (30460405)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 社会的企業 / 制度の狭間 / 地域福祉 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、福祉供給体制の中で、新たな問題解決主体、特に「制度の狭間」の支援主体として台頭しつつある社会的企業が、どのような支援を展開し、どのような役割を果たしているのかを実証的に明らかにすること、これからの社会福祉供給体制の再編に向けてどのような位置を担うのか、地域を単位として検討することを目的としている。社会的企業という主体の実態、役割・機能については研究が蓄積され、重要な知見も提示されつつあるが、「制度の狭間」に置かれた人々に対する支援を行う社会的企業の実態・役割・機能を解明した研究は少ない。本研究は、「制度の狭間」を支援する社会的企業を供給・利用の各面から、質・量的研究によってその意味・役割を解明すると共に、地域の諸主体との関係の中に位置づけ、新たな福祉供給体制のモデルの措定を試みる。 具体的には、1)供給サイドの視点から社会的企業の位置や役割を明らかにする。先行研究をレビューし、それらの諸論が社会的企業といった新しい供給主体をどのように位置づけているのかを整理を行う。そして実際、いくつかの地域と課題等に配慮しつつ特定地域内の供給主体間の関係について分析し、供給主体間における社会的企業の位置や役割について解明する。 2)利用サイドの視点から社会的企業の位置や役割を明らかにする。利用者は当然のことながら当該社会的企業の支援だけではなく、様々な地域の支援主体のサービスを利用することによって生活している。よって社会的企業が利用者の生活のどの部面を支えているのか、また利用者にとって社会的企業はどのような存在なのかを解明することで、社会的企業に位置や役割の解明にも繋げたい。 3)成果を基に、「制度の狭間」の支援を巡る社会的企業の特質・役割に着目した地域内の主体間連関のモデル化を試みることにより、「制度の狭間」を解決する新たな社会福祉供給体制のあり方について理論化を試みる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前研究課題の成果は、(1)社会的企業の暫定的定義と(2)定義を基にして社会的企業の事業分析と特徴を明らかにしたことであった。本研究課題では前研究の残された課題を踏まえつつ、①社会的企業の実践事例の更なる蓄積、と併せて②特定の社会的企業に対する継続的研究を行いつつ、立地する地域社会や関係機関との関係性を明らかにすることで、社会的企業そのものの役割を解明する方法を採用することとした。加え③アンケート調査を実施し、日本における社会的企業全体像の解明も新たに行う予定である。現状では①現在、2ヶ所の団体に実施、また②研究分担者がそれぞれ1団体継続研究を行う団体を担当する予定となっているが、現在、団体と調整中である。また③現在、今年度のアンケート調査実施に向けて、対象団体の検討と併せてアンケート調査票の作成を行っている。 また前提となる研究の分析枠組の検討にも着手した。本研究では、社会的企業を地域社会や社会経済構造から排除された「対象」を包摂化する存在として位置付ける。本解明にはいくつかの論点がある。 社会的排除状況を巡っては、1)地域社会や社会産業構造からどのように排除されているのか、2)経済的・社会的・政治的・個人的・空間的・集団的視点からどのような特徴がみられるかである。次に社会的企業を巡って、1)排除状況をどのように発見し組織化されたのか、2)包摂化の手法として「市場」をどのように活用しているのか、3)社会的に排除されている者を社会的企業内において包摂化しているのかである。そして地域社会を巡って、地域社会内において他の関係主体とどのように連携して、対象を支援しているのか、2)地域社会の成員として包摂していくのかである。最後に社会産業構造を巡って、1)社会的企業の「事業」は社会経済構造の中でどのような位置にあるのか、2)包摂化する為にどのように社会産業構造に働きかけるのかである。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの進捗状況に明記した通り、①制度の狭間を支援する社会的企業の制度特性及び実践事例の収集、②特定の社会的企業に対する継続的研究実施、この選定については、NPOや社会福祉法人、民間企業等、様々な設置主体が想定されるがこの点を踏まえつつ、対象(高齢者・障害者・児童・生活困窮者等)特性も考慮し、継続的・横断的に調査協力を得られる団体を現在、検討・依頼中である。そして③アンケート調査実施については、社会的企業全般の調査は現実的にはその定義に曖昧さもあって困難であるため、特定の事業(e.g.居場所づくり)に着目して、その取り組みを実施する団体で、社会的企業的な要素を有する団体の特質を整理することによって、社会的企業的性格を有する団体が、どのように利用者の社会的包摂の実現を進めているのかについて解明を進めたいと考えている。
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Causes of Carryover |
本研究では、社会的企業の組織構成や実践に関する事例収集を行っているが、そのヒアリング調査団体と検討や依頼に少し時間が掛かったことに加え、継続研究を行う社会的企業の選定に研究枠組作成に難航したことから本年度調査依頼・実施に至らなかったことが最大の理由である。
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