2017 Fiscal Year Research-status Report
伊・瑞の子どもの権利基盤型アプローチに学び、日本の社会的養護の向上をめざす試み
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17K04263
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
川名 はつ子 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (50091054)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
オムリ 慶子 関西学院大学, 教育学部, 教授 (20193823)
小谷 眞男 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 教授 (30234777)
三森 のぞみ 慶應義塾大学, 文学部(三田), 講師(非常勤) (70773026)
藤間 公太 国立社会保障・人口問題研究所, 社会保障応用分析研究部, 研究員 (60755916)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 子どもの権利 / 児童虐待 / スウェーデン / イタリア / 子どもの権利条約絵本 / 子どもの権利条約イラスト / 巡回パネル展 / アクションリサーチ |
Outline of Annual Research Achievements |
1.子どもの権利条約の普及啓発のためスウェーデンで1990年に出版された『子どもの権利ブックレット』のイラストを担当したチャーリー・ノーマン氏から取得したイラスト17点にやさしい日本語訳の条文を添えて、絵本『はじめまして、子どもの権利条約』を出版した(東海大学出版部、2018年3月刊)。また上記イラストを額装パネルに仕立て、各地の大学や社会的養護の当事者団体、支援団体などと共催し、全国30か所余で巡回イラスト展を開催した。趣旨に賛同して集まったスタッフによるプロジェクトチームミーティングを毎月開催し、パネルを貸出規約に則って無料で貸し出し、来場者へのアンケートデータを蓄積して効果測定を行なう体制を築いてきた。 2.さらに効率的に普及啓発を進めるため、日本社会福祉学会、保育学会、当事者団体の研究大会などで、ポスター発表や自主シンポジウムに参加し、より適切な方法を探索してきた。 3.2017年9月、スウェーデンで研究協力者と共に、警察署内のチャイルドハウス、自治体の児童福祉課、中東やアフリカなどからの児童難民のスト集会場や仮暮らしのホーム、里親宅、女性のシェルター、被虐待児の当事者組織を訪問見学した後、ストックホルム大学社会学部の研究者と意見交換してきた。 4.国内の社会的養護の現場での当事者や施設職員へのインタビュー調査はできなかったが、毎月の早稲田大学里親研究会やそれに付随する社会的養育の新ビジョン勉強会に参集した方々にヒアリングして日本の社会的養護の現状を把握しながら、意見交換している。 5.これらのパイロットスタディの際、子どもの権利擁護の具体的ツールであるケースファイルの作成の手法や保管の期間・場所、開示の方法も意識しているので、2018年度以降、さらに発展させて、日・伊・瑞3か国比較のフォーマットに則った里親や措置機関へのインタビュー調査につなげていける見込みである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日・伊・瑞の3か国比較調査の初年度に当たり、主としてスウェーデン調査を実施する計画は、研究協力者との日程調整や現地の訪問先との交渉が困難で、直前にキャンセルされた箇所を除き、ほぼ予定通りに遂行することができた。 一方、国内の社会的養護の現場(里親養育家庭や養子縁組家庭、ファミリーホームや、児童養護施設、乳児院、児童相談所、子ども家庭支援センター等)での当事者や施設職員へのインタビュー調査を実施する計画は、これを分担する研究協力者側の事情により連絡調整が滞り、実施できなかった。 しかし、毎月の早稲田大学里親研究会やそれに付随する社会的養育の新ビジョン勉強会に参集した方々にヒアリングして日本の社会的養護の現状を把握しながら、意見交換し、インタビュー対象を選定しているので、最終年度までには実施できる見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
1.初年度はスウェーデン調査を主に行なったので、2年目の2018年度はイタリア調査を主軸に据えて研究を遂行する。イタリアの社会的養護の南北格差の実態を知ることを目的の一つにしていたが、そもそも南北格差といった単純な切り口では実態を把握できないとの指摘が内部からなされ、ディスカッションを開始した。その結果、旅費予算や訪問可能時期・期間・勤務先の条件などの制約を考慮して現実路線をとることになり、次のようにフィレンツェ、しかもインノチェンティ周辺に限定した訪問調査の計画を立て直した。 2.すでに2014年秋に早稲田大学里親研究会が主催したセミナー「子どもたちのルネッサンス」に院長と主任学芸員を招いて講演していただいて以来交流の続いているインノチェンティ捨児養育院の新博物館が2016年に開館したので再訪し、中世からの社会的養護の歴史と最新の状況を調査して日本に紹介する。さらに、インノチェンティ捨児養育院は博物館のみならず、周囲に社会的養護に関する多彩な施設・機関・人材を擁していると見られる。それらを調べて可能な箇所を訪問調査する。 3.インノチェンティ以外にも、フィレンツェの未成年者裁判所、養子里親の自助団体ANFAAフィレンツェ支部、官民の養子縁組あっせん機関などのうち可能なところを視察し、脱施設化後のイタリアの社会的養護の制度と実態の一端を把握し、課題を考察する。 現地調査に同行できなかった分担研究者は、各自のテーマに沿って研究し、成果報告を提出する。 4.最終年度の2019年には、スウェーデン、イタリアや日本国内の研究成果を、各自が加入している学会・当事者団体等で発表し、また学会誌・機関誌等に寄稿・投稿する。ホームページを開設している者は、そこにも成果物を掲載する。またこれらを編集して報告書を作成・配布する。
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Causes of Carryover |
次年度の海外調査に備えて、次年度使用額が生じることとなった。
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Research Products
(3 results)