2018 Fiscal Year Research-status Report
伊・瑞の子どもの権利基盤型アプローチに学び、日本の社会的養護の向上をめざす試み
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17K04263
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
川名 はつ子 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (50091054)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
オムリ 慶子 関西学院大学, 教育学部, 教授 (20193823)
小谷 眞男 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 教授 (30234777)
三森 のぞみ 慶應義塾大学, 文学部(三田), 講師(非常勤) (70773026)
藤間 公太 国立社会保障・人口問題研究所, 社会保障応用分析研究部, 研究員 (60755916)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 子どもの権利条約 / フィレンツェ / インノチェンティ捨児養育院 / 里親支援 / ライフストーリーワーク / 社会的養育の新ビジョン / 週末里親 / 季節里親 |
Outline of Annual Research Achievements |
日・伊・瑞の3か国比較調査の2年目に当たり、主としてイタリアの社会的養護の南北間格差を調査する計画だったが、国際的な移民・難民問題や、時の中央・地方政府によって社会的養護の体制が大きく変わるので単純には測れないと、調査に先立つ分担研究者との討議で判断された。そこで方針を転換して、同時期にイタリアで合流できる3名がフィレンツェを中心に社会的養護に関わる機関や団体に赴いて調査することにし、他の2名はそれぞれの専門分野での調査の成果を「インノチェンティにおける養護の変遷」「未成年裁判所」などのテーマに沿って報告することとした。 フィレンツェ市里親支援センターを、3名同行で訪問見学した。センター内の見学後、3名の職員(ソーシャルワーカーのアントネッラ・ロマーニさんとアンジェラ・サルティーニさん、心理学者のバルバラ・マンフレーディさん)に里親支援の現状と課題、大規模施設の廃止とそのメリット・デメリット、他機関との連携などについてインタビューすることができた。 新装なったインノチェンティ捨児養育院を訪問見学して、公開されている展示物(里子経験者が語るライフストーリーの動画、実親の手紙・形見など)や連携先施設(今回は訪問不可)のパネルを撮影して概要を推測することができた。 ダウン症のあるKさん母子と5年ぶりに再会して、フィレンツェ市立中学校卒業後の進路と、成人した現在の暮らし、将来の志望についてインタビューすることができた。 国内では、毎月の早稲田大学里親研究会やそれに付随する社会的養育の新ビジョン勉強会に参集した多様な方々とともに、日本の社会的養護の現状を把握しながら意見交換した。また、里親拡大のため週末・季節里親をテーマに都道府県里親会へのアンケート調査と里親家庭や児童養護施設、児童相談所等での当事者や行政職員へのインタビュー調査を実施し、学会で中間報告のポスター発表を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
インノチェンティ捨児養育院・博物館の関連施設やそこで行なわれているプロジェクトを以下のようにリストアップし、5か所の見学と担当者や利用者へのインタビューを願い出たが、長年交流してきた現地の研究協力者との連絡交渉が今回は困難を極め、遂行できなかった。 ① Casa Bambini(小規模児童養護施設。定員7名の「家族的コミュニティ」) ② Casa Madri (「母子ホーム」Casa delle gestanti e delle madri) ③ つばめの家Casa le Rondini (Casa Madriから派生した施設) ④ Progetto Rondini (「つばめプロジェクト」女性の就労支援) ⑤ Mamma Segreta (シングルマザーを支援。「内密出産」の仕組みも提供?) 一方、日本国内の里親子、養親子へのインタビュー調査は、児童相談所の個人情報保護の厚い壁に阻まれて難航している。子ども自身の声を聴きたいと思っても、里親や施設に養育を委託されている措置児については、本人・家族が同意しても、児童相談所の許可が下りないため、インタビューすることが出来なかった。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度の2019年度は、日本国内の学会、研究会等で、分担研究者や連携研究者が各自発表や投稿を行なって成果を報告するとともに、代表者が取りまとめを行なって報告書を作成する予定である。 2018年度のイタリア研究の遅れを挽回するため、分担研究者の一人が単身フィレンツェに出向き、恒例の調査を行なう際、インノチェンティ捨児養育院関連の施設で再度インタビュー調査に挑むことになった。 国内の里親養育、養子縁組経験者や施設養護経験者へのインタビュー調査については、18歳過ぎて措置解除となった「ケアリーバー」にコンタクトが取れるようになってきたので、最終年には子ども自身の声を聴くことに重点的に取り組みたい。 また、2017年末以来、全国各地を回って「絵本から見る子どもの権利~スウェーデンの画家からの贈り物~」展を40回近く開催してきたが、じわじわと協賛者が増え、開催申し込みが相次いでいる。プロジェクトチームを再編して貸出規約や申請用紙等を整備し、イラストパネルの保管や配送など、需要に迅速に応じられる体制を整えている。 上記のような多様な動を通して築かれた中央・地方議会の議員、マスコミ、市民活動団体など、多様な個人・団体とのネットワークを活かして、里親子・養親子支援に関するリソースセンター機能を果たす、政策提言を行なうなどを早稲田大学里親研究会を舞台に部分的には実現しているが、引き続き子どもの権利を日本でも早急に実現するための実践的活動に取り組む より強固な足場を構築したい。
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Causes of Carryover |
年度末の会計処理が間に合わなかったため、次年度に繰り越して使用する。
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Research Products
(7 results)