2019 Fiscal Year Annual Research Report
A fundamental study on the housing risk in a life course
Project/Area Number |
17K04273
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Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
岡本 祥浩 中京大学, 総合政策学部, 教授 (70211810)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ライフコース / きっかけ / ライフステージ / 困窮 / 居住リスク |
Outline of Annual Research Achievements |
不景気などの影響を受けて居住に困窮したり居住を失ったりする人がいるが、全ての人々や地域で必ずそうなるわけではない。そこで特定の出来事が居住の困窮や喪失を招くのではないかと推察される。 愛知県内で実施されている無料の電話相談(愛知見守り大家さんヘルプライン)のうち、居住困窮の過程の明らかな事例(全286例中138例)をライフステージごとに分析した。ライフステージを居住の安定度から「思春期から自立期」「世帯形成期」「安定的な世帯期」「退職後または老後」に区分した。「思春期から自立期」では就労・収入など経済的な問題が、「世帯形成期」ではDVなど世帯内互助の喪失問題が、「安定的な世帯期」では病気やけがなど健康問題が、「退職後または老後」では仕事ともに住まいを失ったり、建物の建替えなどで住まいを失ったりすることがライフステージごとの特徴的なきっかけであった。ライフステージの変化とともに特徴的なきっかけが生じることが示された。 愛知県内の居住困窮者支援団体の利用者(44件)に団体との関わりまでの経緯を聞き取った。居住困窮者の暮らしは「生活全般の困窮」、「ライフステージの変化」、「きっかけ」が輻輳して、居住困窮に結びついていることが明らかになった。それらにかかわる出来事は、病気や障害(アルコール、放浪、浪費などの依存症、パニック障害)、家庭内や職場での人間関係、就職や進学、失業や倒産、不安定な雇用と居住、家族内の喧嘩、離婚、家賃滞納、多重債務、生来の貧困など多様である。これらの出来事が生活全般の困窮にかかわっていたり、きっかけとなったりする。それらがライフステージの変化という不安定性の増した時期に融合することで居住困窮に結びつつくことが明らかになった。 二つの調査を通して、困窮した世帯や個人がライフステージの不安定期にある出来事をきっかけに居住困窮に陥る仕組みが明らかになった。
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