2018 Fiscal Year Research-status Report
近代の災害救助支援と政府・皇室・宗教の役割に関する実証的研究
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17K04278
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Research Institution | Kogakkan University |
Principal Investigator |
新田 均 皇學館大学, 現代日本社会学部, 教授 (50208253)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮城 洋一郎 種智院大学, 人文学部, 教授(移行) (10190745)
藤本 頼生 國學院大學, 神道文化学部, 准教授 (30612163)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 近代社会福祉史 / 災害救助 / 恩賜金 / 朝鮮総督府 / 皇室 / 近代日本宗教と社会事業 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、3か年の計画で以下3点の解明を目的としてスタートした。その過程において、研究の領域・対象を絞りつつ進めている。(1)戦前期の政府・皇室による災害支援「恩賜金」の配分と受容状況を中心に、日本及び植民地期朝鮮の実態に即し具体的に検証する。(2)政府・皇室の行動に当時の宗教がどのような関わりを有しその役割を担ったかを、宗教間連携の観点から明確化する。(3)災害支援の理念と活動がメディア及び学校教育においていかに発信され社会における支援、共生意識に及んだかを明らかにする。 研究の2年目にあたる本年度は、(A)全体研究として、①皇室福祉年表作成を、前年度における明治期に加え大正期分の基礎原稿作成を進めた。②災害地自治体所蔵資料の調査・収集について、特に福島県を対象に関係の資料を入手し内容分析にあたった。③宮内庁所蔵『恩賜録』の調査収集については、大正期を終え昭和初期分の収集に着手した。②③の収集資料の整理も漸次進行させている。④韓国における関係資料の調査では、ソウル市の蔵書閣・高麗大学を訪問し資料の所在確認と併せて研究者間の情報交換を進めた。⑤年間2回を予定した研究会も計画通り伊勢市及び東京で開催し、研究報告及びゲストスピーカーによる特別講演を実施した。⑥ニューズレターについては年に2回発行をおこない、随時研究の進捗状況や研究概要を紹介するとともに、刊行後は皇學館大学研究開発推進センターの協力を得てホームページにアップし積極的に公開するよう努めた。 (B)研究メンバーによる個別研究の推進については、各人が研究期間終了後の論集刊行(論文・論説・資料紹介など)のための構想を温め、執筆の準備に取り掛かるとともに、研究内容の総合性を図るうえで、論集執筆への参画者を増やすための交渉を進め、併せて各メンバー間での意見交換を随時進められるよう研究マネジメントを進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は、研究推進上、韓国における資料調査と研究者交流を予定し、韓国研究者を迎えての交流並びに情報交換はできたが、日本側研究者が訪韓し資料調査を行うことはできなかった。そのために、本年度は日本側から5名のメンバーがソウル市を訪問し、蔵書閣及び高麗大学での朝鮮総督府関係資料の所蔵に関する調査を実施したが、「恩賜金」関連資料の所有を確認できず、韓国における状況把握については課題が残るが、本年度の計画としては予定通り実施できた。 宮内庁書陵部所蔵の『恩賜録』調査及び写真データ収集については、これまでの明治・大正分に加えて昭和期を対象とすることができたのは進展である。但し、昭和期に入るとデータ量が増え、かなり時間を必要とする課題が発生し、当初の予想を越える研究を進めるには至らなかったが、全体として概ね順調ととらえている。また、地方自治体所蔵資料のうち、岩手・宮城両県に続き、福島県を対象としたことは進展であるが、研究資料の全体像がなお十分に把握できていないので今後の課題であると認識している。 なお研究会活動や研究情報の公開を進めている点は計画通りの進捗であると捉えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、当研究の最終年度を迎えるところから、これまでの成果のまとめと今後の研究展開のための推進を図ることとしている。具体的には以下の通りである。(1)「皇室福祉年表」(明治・大正期)の草稿を完成させること。(2)国際ミニシンポジウムの開催。(3)研究成果報告書のまとめ。(4)今後の研究展開のための準備。 (1)は当初明治期までを考えていたが、大正期へと及ぶことが可能となってきており、発展的に作業が進められるよう研究推進を図りたい。(2)シンポジウムは、2020年2月頃を予定しており、韓国から複数の当該分野の研究者を招聘するとともに、公開の形をとって社会への成果還元を図りたい。(3)3か年にわたりメンバーが種々発表してきた論考や資料紹介などを取りまとめ、当該研究の意義を広く紹介する。併せてネット上での公開なども予定している。また当該研究にかかる論集出版の方途を検討する。 (4)今後の研究展開のためには、今回の研究チームを基本としてこれまでの研究を継続するとともに、交流を続けてきた海外研究者との情報交換やデータの共同活用のあり方などを図るうえで新たな体制を構築し、研究資金の獲得などに努力して行きたい。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が18万円弱発生した主な理由は、(1)韓国の研究協力者を日本国内へ招聘する予定であったが日程的に困難となりそれにかかる旅費などが未使用となったことと、(2)資料整理にかかるアルバイト謝金を予定したが作業が予定よりも早く進行し支払額が減額となったことである。これらの経費は、次年度に予定している国際ミニシンポジウム開催にかかる費用(韓国からの研究者招聘)に充てる予定であり有効活用を図る計画である。
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