2020 Fiscal Year Research-status Report
障害のある子どもの家族のアセスメントツールに関する研究:日本語版EE評価尺度開発
Project/Area Number |
17K04289
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Research Institution | Kansai University of Social Welfare |
Principal Investigator |
米倉 裕希子 関西福祉大学, 教育学部, 准教授 (80412112)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 感情表出 / 障害児 / 家族 / 質問紙 / アセスメント |
Outline of Annual Research Achievements |
障害のある子どものEE研究を進展させ、家族のアセスメントツールの1つとして確立するためには自己記入式質問紙の開発が必要不可欠である。そのため、本研究は、海外の研究で用いられているEEの自己記入式質問紙を選定し、その日本語版の作成及び信頼性と妥当性の検証が目的である。自己記入式質問紙の選定では、EEに関する84文献をレビューした結果、近年の研究で使用されており、信頼性と妥当性が検証され家族の負担が低いといった要件を満たすFQ(Family Questionnaire)尺度に着目した。FQは2002年にDr.Wiedemannらによって作成され、20項目あり4件法でEEの構成要素である批判的な態度(CC)と感情の巻き込まれすぎ(EOI)の2つを評価することができる。次に、日本語版の作成については、原著者の許可を得た後、バックトランスレーションの手続きを経て完成した。2019年度は、日本語版のFQの検証のための調査研究を行った。妥当性の検証のためFMSSによるEE評価、健康関連のQOLを評価するSF-12v2を用いた。研究協力者は、A県B市にある障害児通所支援、A県C市にある病院の児童精神科外来ならびにD県E市にある障害歯科を利用している子どもの保護者約63名のデータを得た。2020年度はFMSSの結果をもとにFQのROC解析を用いた分析を行った。FQのCCについてはカットオフポイントが14/15点であり、調整済みのAUCが0.74(95%CI:0.61~0.87)であった。また、FQのEOIについては、カットオフポイントが12/13点であり、同様に調整済みのAUCが0.73(95%CI:0.52~0.95)だった。原著と異なり、日本語版ではEOIの評価が難しかった。EOIはより社会文化的な影響を受けると考えられるため、再度、社会文化的を考慮し日本語訳の修正を検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
文献レビューの結果選定したFamily Questionnaireの日本語版尺度の開発を目的に研究を進めていた。しかし、原著者のDr.Wiedemannが2018年にドイツの研究機関(病院)を退職していることが紆余曲折の後わかり、最終的に共著者のDr. Hahlwegの許可を得るまでに時間を要した。そのため、日本語版の作成、倫理審査委員会の承認に時間がかかり、信頼性と妥当性の検証に関する調査の実施も必然的に遅れ当初の計画より遅れ、調査を開始した。2019年3月よりFMSSを用いた調査を障害児通所支援、病院の児童精神科外来、障害歯科外来で開始し、現在は再検査及び収束的妥当性の検証のためFMSS評価を行った保護者約63名のデータを得ることができた。FMSS評価は1人1人対面で行う面接方法であり、保護者との日程調整も含め、必要なデータ数を収集するには時間がかかる。FMSS評価によるデータ収集は終え分析及び検討進めているところだが、研究成果の発表にまでは至っていない。大規模調査についてはデータを収集中のところ、新型コロナウィルス禍が生じ、収集が中断した。今後は現在収集しているデータの分析及び研究成果の発表を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度はFQの日本語版の信頼性と妥当性の検証に関する調査研究のうち残っている大規模調査について実施を行い、分析を進めていく予定だったが、医療機関での調査を予定していたため、調査半ばだったが新型コロナウィルス禍の中、収集を中断する判断を行った。今後は、現在得ているデータを分析し、学会等で研究成果の発表を行う。
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Causes of Carryover |
次年度使用金額が生じた理由は、新型コロナウィルス禍に伴い、分析セミナー等への出張を予定していたが、東京での開催のため、キャンセルを行ったことや、昨年度は学会発表等がオンライン開催なのかどうかが直前まで決まらず、エントリー等ができなかったことがある。また、エフォートの改善のため、大規模調査のデータ入力はアルバイトの雇用を考えていたが、調査を断念したため発生しなかった。今年度の使用計画としては、(1)分析結果の打ち合わせのためのオンライン環境を一層充実させること、(2)コロナの感染状況の改善を前提とし、分析を円滑に進めるため分析ソフトの研修への参加費及びその旅費、(3)研究成果の発表を行うため、継続して諸学会に所属し、オンライン開催の学会等に積極的に参加することに使用する。
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