2017 Fiscal Year Research-status Report
配食サービスの有効性を高める配達員の教育育成と事業の可能性拡大に関する実験的研究
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17K04298
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Research Institution | Osaka Chiyoda Junior College |
Principal Investigator |
松井 順子 大阪千代田短期大学, 総合コミュニケーション学科, 教授 (20552772)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
牧里 毎治 関西学院大学, 災害復興制度研究所, 研究員 (40113344)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 配食サービス / 配達員 / 教育的育成 / 企業努力 / 地域特性 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は、松江市と市の委託事業者3者の協力を得て、研究会を3回開催した。初回は東京の一般社団法人シルバーサービス振興会・局長を招き、「地域包括ケアシステムの構築と高齢者の暮らしを支える配食サービスの方向性」の講演を聞き、研究事業の今後の示唆を頂いた。更に、医療ニーズに対応した食事の提供で著名な事業者訪問も行い、今後の配達員の方たちへの授業内容について検討を重ねた。それらを踏まえて11月には配達員の方たちを対象にしたグループインタビューを行い、配食配達の現状と課題を聞き、サービスの利用者には配食を利用している理由と配達員への思い等を聞き取り、これらの調査から得られた質的データを分析し、配達員の方たちへの授業開始前の意識調査項目を設定した。このように作成したアンケート調査を平成30年3月に実施するに至った。次に、学会発表について、平成29年9月に「日本ヘルスケア学会平成29年次大会(於:東京大学)」で,「市場ルールを援用した公的配食サービス事業の課題と新たな可能性に関する一考察」をテーマにポスター発表を行い、ポスターセッションの部で優秀賞を受賞した。論文執筆は、大阪千代田短期大学紀要46号(平成30年1月発行)に「在宅高齢者の食事支援に関する考察―地域類型でみた都道府県庁所在市の配食サービス事業の現状と課題―」の掲載である。同論文は、都道府県庁所在市を対象に各自治体の配食サービス事業の実態を調べ、事業を類型化し、各類型の特徴と課題を明らかにしたものである。配食サービスは地域特性に応じて自治体ごとに事業が異なることから、類型化は事業の方向性を把握するには一助となると仮定し、試みたものである。最後に市民大学の講師として平成29年5月、(社団)大阪スポーツマンクラブ,四ツ橋大学で、「高齢者の食事」をテーマに講演した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①予定していた研究協力者の参加を得て研究会を重ね、松江市の地域性や食生活の傾向を概ね把握することができた。医療ニーズに対応した食事の提供で著名な企業の訪問調査を行い、配達員の育成についても取り組み状況を調べるとともに、先方と連携が取れたことは想定外の広がりであった。 ②配達員の方たちや利用者へのインタビューを行い、勉強会を実施する前に収集しておくべき事柄を抽出することができた。平成30年度に行う配達員への授業について、配達員の方たちは受講後、それらがどのように変化するか、授業終了後、再び、調査を行い、授業の有効性を検証する予定である。平成29年度は検証するための項目を設定した調査票を作成し、調査も当初の予定時期に実施することができた。 ③①②を予定どおりに進めることが出来たため、平成30年4月には配達員への授業を開始する体制を整えることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、4月から月1回、計6回の予定で、3社を順次訪問して配達員の方たちへの授業を行う。授業内容は、食事の機能(3回に分けて、生理的機能、心理嗜好充足機能、社会文化的機能)、認知症(2回に分けて、脳の変化と症状、かかわり方)、救急蘇生法を予定している。一方、平成30年3月から4月当初に実施した「配食配達員への意識調査」の分析を出来るだけ速やかに行い、得られた結果のうち、授業内容に反映させた方が良いものを組み込み、授業も改善を図る。なお、調査の分析結果は学会で報告する予定である。そのほか、配達員の方たちの職務である配達時の観察や安否確認について、マニュアルを作成するためのワークショップを企画したい。また、アンケートの記述回答や授業のリミットペーパには会社に対する思いが記載されていることについて、経営側と配達員が今後、どのように検討する機会を設けて前向きに改善を図るのか、提案する。この問題は当初の研究課題ではないが、事業の可能性拡大に向けて、改善は重要な事項であり研究の間接的な新たな課題となりそうである。この課題は、配達員への勉強会の折り返し点で経営側に問題提起することを予定している。以上の一連のことを試みながら、6回の授業終了後、配達員の方たちには再度、グループインタビューとアンケート調査を受けて頂き、教育的育成の有効性の検証に進める予定である。
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Causes of Carryover |
本研究の大きな流れは島根県松江市を事例に、地域性に応じた高齢者配食サービス事業の在り方と配達業務を検討し、それらを踏まえた配達員育成のための教育カリキュラムを設計する。その後、配達員に研修の受講を求め、配達員の教育的育成が配達時の安否確認はもとより、利用者の新たな課題やニーズを発見するなど、サービスの有効性を高めることと、配達という地域循環を活用し事業の新たな可能性を検討することが最終的な目的である。平成29年度に30年度分の助成金を請求したが、その費用を用いて、①医療ニーズに対応した著名な事業者を訪問し、事業の独自性と配達員育成の取り組みを知り、本研究の参考にした、②配達員を対象にしたグループインタビューと、利用者への訪問インタビューで得られたデータをもとに、配達員へのアンケート調査票を作成し、研修前に把握しておくべき配達業務の現状と課題を調べた。なお、調査の期間は平成30年3月から4月上旬で、現在、分析の途中である。 ①は当初の計画外の訪問調査であるが、訪問先の事業者とも連携を図ることが出来て、研究に広がりが出る等の成果を得ている。②は当初から計画していたことであるが、実施時期が予定よりも早く進んだことから前倒しの請求を行ったものである。
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Research Products
(2 results)