2021 Fiscal Year Research-status Report
Effects of multi-perspective-taking and prosocial motivation on creativity in product development
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17K04311
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Research Institution | Seijo University |
Principal Investigator |
村田 光二 成城大学, 社会イノベーション学部, 教授 (40190912)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 視点取得 / 創造性 / 異質な他者 / 無関連単語生成テスト / 向社会的動機づけ / 商品開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度は、令和2年度に実施したオンライン実験の結果を再検討して分析したが、「他者との異質な点を考える条件では、共通な点を考える条件よりも、日常品の非日常的用途テストの得点(創造性)を高める」という仮説に沿った結果は得られなかった。そこで、視点取得の操作と創造性の測定について近年の研究論文の成果を学びながら、さらに検討を重ねた。その上で、以下の新しい方法を用いて、複数視点取得が創造性に及ぼす影響を検討する実験を実施した。 まず、複数の視点取得を操作する方法として、未知の異質な他者についての3つの紹介記事を読んでもらい、その人の視点に立ってもらう課題を考案した。具体的には、新聞の人物紹介コラムに掲載された記事から3つを選択して、それを読んで考えてもらい、その人の立場を想像する質問に回答させた。統制条件では、最後の質問でその人の印象をたずねた。また、特に異質ではない人物を紹介した3つの記事を読む統制条件も設けた。次に、創造性の測定には、最近の論文で提案された創造性テストを用いることを試みた。その方法は「できるだけ関連のない単語を10語挙げさせて、単語間の意味的距離を測定する」もので、拡散的連想課題と呼ばれた。この課題の結果は従来の創造性テストの結果と相関が高く、簡便に利用可能であった。拡散的連想課題を用いた研究は、日本ではまだ見当たらなかったので、日本語版の教示等を自作して実施した。 以上の方法を実現するよう準備をして、令和4年1月にオンライン実験を140名の学生を対象に実施した。実験は順調に終了して、現在はそのデータを分析するために、拡散的連想課題のデータから単語の意味的距離を算出する方法を検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
視点取得の操作方法および創造性の測定方法とも、関連研究を調べて検討を繰り返しているが、まだ決定的な方法を見出せていないからである。そのための予備実験の実施が難しく、予備実験参加者の確保、実験場面の構築などの問題を十分には解決できていない。また現在は、拡散的連想課題のデータ分析の方法を模索中である。それでも大学で対面状況が戻ってきたので、これらの課題を解決しながら、再度実験を実施して、今年度中には一定の成果を得られるよう努めたい。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度には、複数の視点取得を促すために、未知の異質な他者についての3つの紹介記事を読んでもらい、内容を理解してもらうことを行った。これら人物の選択にあたっては、国籍等の点で一般的な学生と異なる人物や、一般の学生が知らない独特の経験やユニークな活動をしている人物を選んだ。新聞の紹介記事は読みやすく、特に労力を使わなくても参加者を他者の視点に導いてくれることを期待している。まだ分析途中であるが、これを用いて視点取得を促す現実的な方法として可能性を感じていて、今後の実験でも使用可能だと判断している。 他方、創造性の測定に用いた拡散的連想課題は実施が容易であり、十分なデータを得られているが、単語間の意味的距離を算出することがまだできていない。算出のためには一定程度大きな日本語データベースが必要であり、その中に学生が日常使用する語彙が収まっていて、そこから意味的距離を計算できるようにする必要がある。この問題解決が現在の最大の課題である。この分野の専門家から助力をあおいで、この課題を解決して、分析結果をまとめたい。 その上で、令和3年度の実験を改善し、調査会社等に委託できる形にして、社会人を対象にオンラインで再度同様の実験を実施する。一般的な創造性測定は、当初考えていた「新商品開発課題」での創造性とは異なる点があるが、それにつながるものと考えて、研究成果全体をまとめたいと考えている。
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Causes of Carryover |
計画していた複数の実験、特に社会人対象のオンライン実験が実施できなかったためである。また、研究成果も挙がらず、学会発表や論文執筆にかかる費用の支出がなかったためでもある。今年度は、オンラインによる社会人対象の実験を実施して、成果を学会等で報告する計画である。
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