2020 Fiscal Year Research-status Report
Re-examination of behavioral priming from the evolutionary perspective.
Project/Area Number |
17K04317
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
沼崎 誠 東京都立大学, 人文科学研究科, 教授 (10228273)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 社会系心理学 / 行動の自動性 / 進化心理学 / プライミング効果 / 感染症 / 異性愛 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は,新たにデータを取ることが困難であった.そのため,昨年度までに取得したデータの整理・再分析を主に行った.新たなデータとしては,A) 配偶者獲得動機と密接に関連する,外見を意識させるプライミングを行い,ジェンダーに関わる自己ステレオタイプ化と偏見に及ぼす効果に関するWeb実験,B) 感染症蔓延を感染症プライムと見なした調査研究,を行った. Aに関しては,2019年度実験室実験で行った研究をWeb実験に変更して行ったが,実験室実験に比べて操作の効果が弱く,実験結果を再現することができなかった.実験室実験とWeb実験の結果の相違は,これまで行っていた異性愛プライムでも同様の結果が得られており,Web実験でプライム操作をすることの困難さについて引き続き検討する必要が確認された. Bに関しては,研究計画にはなかった調査であるが,コロナ感染症の蔓延を病原菌プライムと考え,過去数年間同じ教養科目で実施しているバッテリーテストの個人差尺度との関連を検討した.結果として,1) 感染脆弱意識尺度は感染予防行動と相関があること,2) 2020年度においては,それ以前に比べて感染脆弱意識尺度の下位尺度である感染嫌悪は高まるが,易感染性は高まっていないこと,3) 生活史方略との関連を見ると,2020年度と2020年度以前を比較すると,早い方略の男女には大きな性差は見られず, 遅い方略の男女には明確な違いが見られた. 遅い方略の女性では,2020年度では感染嫌悪も易感染性も急激に上昇していたが,遅い方略の男性はパンデミック下においても感染嫌悪も易感染性も大きな変化がなく,安定した数値を示していた.現在の配偶よりも将来の繁殖のための投資が,パンデミック下において,女性では身体・健康に向かうのに対して,男性ではそれ以外の領域(学業や経済的投資)に向かっている可能性を示唆していよう.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
コロナ感染症の蔓延により,研究計画にはなかった調査を実施することができたが,当初予定した実験を実施することができなかった.2020年度では,参加者を実験室実験とWeb実験にランダムに割り当て,全く同様のプライミング操作を行い,効果を検討する予定であったが,実験室に集めることができなかったため実施できなかった.そのため,研究期間を1年延長して,2021年度に実施することにした. このことから,研究は遅れていると言わざるを得ない.
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度までに実施した,「配偶者獲得動機の顕現化が危険関連認知や行動に及ぼす効果」についての実験室実験(大学生)・集団実験(大学生)・Web実験(大学生)・Web実験(一般サンプル)のデータをまとめて分析をする.従属変数を単に分析をするだけでなく,反応傾向や測定された個人差などがどのように異なってくるのかを精細に分析する.このことによって,環境プライムの行動に及ぼす効果の実験方法による違いは,どのような要因によるものなのかを検討する.この分析によって明らかとなった要因を念頭において,2020年度に計画していた,直接比較可能な形での,大学生参加者を実験室実験とWeb実験にランダムに割り当てる実験を実施する.さらに,一般サンプルのWeb実験も同様の手続きをとり実施する.このことによって,環境プライムの行動や認知に及ぼす効果の実験方法による違いは,どのような要因によるものなのかを検討する. 複雑な実験室実験が実施可能な状況になれば,2018-2019年度に行った攻撃的外集団プライム実験や2019年度に行った外見を意識させるプライミング実験の概念的追試を行う. 2021年度は最終年度であるため,プライミング効果についての総合モデルを検討するとともに,実験室での個別実験と集団実験とWeb実験の違いについて理論的検討を行う.
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Causes of Carryover |
2020年度ではコロナ感染症の影響で,新たなデータの取得が困難であった.研究期間を延長し,2020年度の研究計画を2021年度に実施するために予算を繰り延べしたため,次年度使用額が生じた. 2021年度では,2020年度予定していたWeb実験と実験室実験の実施,および,研究の取りまとめのために,予算を使用する予定である.
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Research Products
(1 results)