2021 Fiscal Year Research-status Report
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17K04323
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
外山 みどり 学習院大学, 文学部, 客員所員 (20132061)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 歩 滋賀県立大学, 人間文化学部, 准教授 (00406878)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 社会的認知 / 普遍性-文化特殊性 / 原因帰属 / 態度帰属 / 対応バイアス |
Outline of Annual Research Achievements |
社会的認知、特に帰属過程に関しては、当初、人間全般に共通する普遍的なプロセスを前提に研究が行われてきたが、1990年代以降、主に文化心理学研究者から文化差の存在が指摘されるようになった。ただし、同一の実験パラダイムや調査項目を用いた実証的な比較研究は十分行われているとは言い難い。社会的認知、帰属過程のどのような側面に文化差が見られ、どのような側面は普遍的であるのかをまず明らかにする必要がある。 本研究では、帰属を中心とする社会的認知過程の中で、文化差が議論されていながら十分な実証的証拠が得られていない現象を取り上げて、データ収集を行うとともに、文化差が見られる場合には、その背後にある社会文化的・歴史的条件を探ることを目的とする。 2019年までに、日常的な出来事に対する原因帰属および自発的な自己記述について、日本人対象のデータ収集を行い、2020年以降にアメリカ合衆国との比較研究を行う予定であったが、新型コロナウィルスの感染拡大のために、海外渡航が困難になり、外国人研究者とも交流しづらい状況となった。そのためオンラインによるデータ収集に方針を切り替え、そのための準備を行った。対象として取り上げたのは、重要な現象として注目されている対応バイアスと、文化差が指摘されることの多い自発的な自己記述である。対応バイアスとは、本人の自由意志ではなく、他者からの強制や状況的拘束の下でなされた行動からも本人の特性が推測される現象であるが、日本人の場合には、特性推測の前に行動の起こった状況に対する因果的思考を行うことでバイアスが減じることが、筆者の過去の研究で見出されている。アメリカ人でも同様の結果が得られるか、あるいは状況要因に注目してもバイアスは減じないのかを確認すべくオンライン実験を準備中である。本年度は、日本人対象の質問紙実験の結果を国際学会で報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「研究概要」にも記したように、日本人対象のデータ収集によって、全体的な傾向を把握した上で、直接的な国際比較研究を実施しようとした矢先に、新型コロナウィルスの感染が拡大し、2020年初頭から2年以上、海外との往来が困難な状態が続いている。国内でも大学の授業がオンライン中心となり、対面での個別実験・集団実験の実施が難しくなっている。そのため、同時に同一内容の題材を与えた上で反応を比較する、オンラインでの日米比較実験を行う方向に計画を切り替えた。日本語での刺激文の準備、英訳、研究倫理審査の手続きなどは済んだものの、技術的な問題のため、年度内に実験実施にこぎつけることはできなかった。現在、調査会社に委託して、実施のためのプログラミング手続きを行っている最中である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、調査会社に依頼して、対応バイアスとその緩和条件に関するオンライン実験を準備中であり、2022年5月中には実施が可能と考えられる。2×2の要因配置実験を日米のサンプルを対象にして実施する計画である。その後、可能ならば、自己記述に関しても、オンラインでの国際比較のデータ収集を行いたいと考えている。それらの結果を分析して、帰属に関連する認知過程における文化的要因の作用を検討した上で、文献研究を含めた理論的な考察を行い、本研究課題の総括としたい。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じたのは、コロナ禍の影響で海外渡航が不可能になり、海外の研究者との直接の打ち合わせも困難となったため、研究計画を大幅に変更せざるを得ない状況となったことによる。国内でも対面での実験実施が難しく、質問紙を用いた海外でのデータ収集も困難となったため、オンラインでの実験実施に切り替えた。年度内に実験実施にまでこぎつけることができず、次年度使用額が生じたが、現在オンライン実験の準備中であり、5月中に1回目の日米でのデータ収集を行う予定である。その後、別の現象について、日米での比較実験を再度実施する計画である。予算の使用に関しては、調査会社への委託費が大きな割合を占めるが、可能ならば、データ分析のための謝金等を支出したいと考えている。
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