2017 Fiscal Year Research-status Report
潜在測定による恨み忌避感が制御焦点と社会的行動に及ぼす影響についての実験的研究
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17K04333
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
北村 英哉 関西大学, 社会学部, 教授 (70234284)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 恨み忌避 / 文化 / 宗教心 / 表情 / 公正世界観 / 集団 / 道徳観 / 畏れ |
Outline of Annual Research Achievements |
感情誤帰属手続き(AMP)で用いる画像などを1年間の間に収集し、文化比較のために西欧的なアイテムとして西欧の教会や墓地などの写真を撮影して画像を用意した。実験においても用いる個人差変数として恨み忌避の程度を測定する恨み忌避尺度第1版を作成し、11-12月にデータを収集し、項目分析を行った。さらに他者からの恨みをかったと想定されるシナリオを作成し、シナリオによる喚起群と、シナリオを読まない統制群を比較しつつ、恨み忌避傾向の高い者において、他者の表情から怒りを誤読、過剰読み取りしやすいかを検討する第1実験を11-12月に行い、データをとった。64名のデータを分析したところおおむね仮説の通り、恨み忌避傾向の高い者においてはとりわけ、シナリオ喚起群は統制群に比べて、画像による他者の表情刺激から怒りを読み取りやすいことが示された。 感情研究の方法論的技術やさまざまなモデル、概念を7月に開催されたヨーロッパ社会心理学会(EASP スペイン)ならびに、ヨーロッパ心理学会(ECP オランダ)において学び、意見交換をしたうえで、2018年度の研究実施に生かしていくように実験計画を作成中である。また、2017年度の上記の表情を用いた実験成果については、2018年8月開催の日本社会心理学会大会にて発表予定である。 さらに、ニューヨーク大学にて学習した文化差の問題の一つである公正概念について、2018年9月開催の日本心理学会にて公正観をめぐるシンポジウムに登壇予定である。一部成果は、現在校正作業中の『偏見・差別の社会心理学(仮題)』(ちとせプレス)の章を執筆し、2018年中に刊行予定である。恨みについては論考を紀要(心理学叢誌)に共著でまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2017年度は在外にいたために学習題材が多く、海外出張や海外の学会参加で最新の知識の更新や獲得に力を入れて目的を達した。実験の準備となる画像の準備、作成は順調に推移し、最低限の課題であった恨み忌避尺度の構成と第1実験の実施を完遂することができた。日本でデータをとることもでき、その成果の発表準備もできていることから、ほぼ順調に推移しているが、当初立案した初年度に3つの研究ということから言えば、課題を1つ次年度に先送りしたことになる。しかし、得るものも多く成果の発表も論文1つ、書籍1つで刊行する見込みが得られたので、全体的に順調な進展と評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度は制御焦点の尺度についても検討を加え、恨み忌避尺度の妥当性の研究を論文投稿した上で、主張性や同調に関する実験研究、さらに画像を用いたAMPの実験研究を施行し、立案した研究を進めていきたい。所属大学に異動があり、研究環境も変わったが実験室、大学院生など設備、人員について不都合は生じていないので当初の予定通り進めていく。 恨みに関わるシナリオを読んだ後では統制群と比べ、AMPで呈示する刺激に対して不安反応や恨み、あるいは怒り反応が相対的に増大する傾向のあることを実験的に検証を行う。恨み活性化群において協調行動が生じやすくなるか集団実験で検証を行う。成果は国内学会1つ、国際学会1つにおいて発表を行うように準備を進める予定である。
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