2018 Fiscal Year Research-status Report
潜在測定による恨み忌避感が制御焦点と社会的行動に及ぼす影響についての実験的研究
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17K04333
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
北村 英哉 東洋大学, 社会学部, 教授 (70234284)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 恨み忌避感 / 制御焦点 / 協調性 / 信頼感 / 穢れ忌避傾向 / 拒否回避動機 / 拒否不安 / 公正世界観 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は恨み忌避感尺度を完成し、信頼性・妥当性を検証し、その成果を学会発表し、学会誌に投稿論文を作成し、審査中である状態まで多くの作業を遂行することができた。前年度の「表情画像から怒り感情を検出する敏感さ」と恨み忌避感の程度が相関することを実証した実験成果を8月開催の日本社会心理学会で発表した。7月に2度データをとり、恨み忌避感尺度を完成させ、再テスト信頼性も得ることができた。当初計画に含まれていた制御焦点との関連を検討することができて、想定どおりの相関を得られた。さらに、公正世界観、不安感、親和動機、信頼感、協調性など多くの尺度との有意な相関を得ることができた。さらに、ターゲット変数となるべき拒否不安や拒否回避動機との相関も得られた。 これらの相関の結果の一部と尺度構成は、2018年11月開催の日本感情心理学会で発表を行い、さらに12月の感情心理学会セミナー、2019年2月の東洋大学ヒューマン・インタラクション・センター日韓交流会でも講演として発表された。 さらに日本文化として恨み忌避感に密接に絡むと考えられる穢れ忌避感についても研究を進め、2018年12月~2019年1月に3度にわたり、実験と調査を行い、AMPによる潜在的な感情を感じるテストにより、ケガレに関わる墓地などについて穢れ忌避感の強い者はよりネガティブに反応することを確かめた。これは2019年の日本社会心理学会で発表を行う。また、穢れ忌避感の尺度を構成し、その信頼性・妥当性を検証した。その成果は日本感情心理学会で発表される。穢れと差別の関連についての議論は、2018年7月に『偏見や差別はなぜ起こる』(ちとせプレス)の書籍として刊行した。 2019年度はさらに恨み忌避感や穢れ忌避感と行動尺度との関連を検討し、当初の検討課題である、これらから制御焦点を媒介した行動への影響プロセスについて検証を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の柱となる恨み忌避感尺度が完成し、予定の変数との相関を検討し、すべて期待どおり、またそれ以上の関連の成果が見られた。尺度が信頼性・妥当性をもってしっかり確立し、さらに穢れ忌避傾向尺度も今年度に完成したのは、期待以上の進展と言える。 さらに、媒介変数となる重要な制御焦点という変数との相関も今年度期待どおり観察できた。最終的なターゲット変数のひとつである拒否回避についても拒否不安傾向と拒否回避動機の2点について関連を確認できた。これによって、人から恨みを買うことを非常に怖れ勝ちな人は、より同調的、協調的に周囲と合わせて振る舞うこと、他者との本来の信頼感に欠け、やや不信傾向と関係することまでが解明された。 しかしながら、ターゲット変数となる行動変数が十分測定されておらず、計画以上の進展というには、まだ解決しなければならない課題もある。恨みを買うことを怖れやすい傾向のある人が、説得に受諾しやすいかなどの応諾傾向などはまだ測定できていないので次年度の課題となる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画の変更は必要ないが、順調に推移しているので、3年目、最終年の2019年度には、説得への応諾傾向やリスク認知とそれに伴う態度、行為傾向、謝罪の傾向など行動変数に近い変数群に対しての関連、特に制御焦点を介した媒介分析によって、当初の想定どおりのモデルにしたがって影響関係が表れるかどうかを検討する。 また基礎的な検討部分で、感情の測定にIPANAT(潜在的感情測定)をまだ用いていないので、この実験を2019年度中に完遂する予定である。また尺度の英語への翻訳も取り組み、海外データとの比較も目指す。
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Causes of Carryover |
大学を移籍した関係で、継続的に実験者をつとめる協力研究者である大学院生による実験アルバイトが行われなかった。人件費等の費用のかからない調査研究は予定以上に進展したが、IPANATを用いた実験研究や行動測度をとるような実験室実験が今年度は行いにくく、調査研究を先に回して進め、より費用の要する実験研究を次年度回しにしたために、約26万円の残額が生じ、次年度使用額となった。次年度は行動測度をとる実験研究やIPANATも行う予定で、さらに調査(実験含む)会社も用いる予定であるので、今年度の分をそうした実験費用に活用する。
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