2018 Fiscal Year Research-status Report
小学生の算数メタ認知能力評価法の開発及び応用可能なメタ認知を育成する指導法の開発
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17K04337
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
吉野 巌 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (60312328)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | メタ認知 / 算数指導法 / 文章題 / 介入授業 / 評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
担任教員によるメタ認知評価基準の開発:前年度、クラス担任が算数授業の中で児童のメタ認知能力を評価する「メタ認知能力評価基準」(9項目)を作成し,妥当性を検証した。小学校5年生2クラスの担任教師による児童の評価は、上記の算数文章題調査の問題解決得点やメタ認知得点と比較的高く相関しており、基準関連妥当性が認められた。その一方で、両クラスのメタ認知評価点の平均値には約3点もの違いがあり、評価が担任の判断基準に大きく左右されるという問題点が明らかとなった。そこで本研究では,評価項目を再検討し7項目に精選するとともに,各評価項目の評価基準をより具体的にすることで,絶対的な評価を行いやすくなるよう修正を行った。また,2クラスの担任による自クラス児童の評価に加え,両クラスの授業補助にあたった2名の学生ボランティアが同じ児童の評価を行うことにより,再度妥当性の検討を行った。妥当性検証のための外的基準は、前年度の研究と同一の算数文章題である(問題解決得点(11点満点)と、「なぜそのように考えたか」への記述をメタ認知得点(15点満点)として得点化)。 2名の学生ボランティア間、また、クラス担任と学生ボランティアの間で、子どものメタ認知の評価は一貫していた(比較的強い相関)。一方、担任評価は、クラス間で平均値に約4点もの違いがあり,今回も担任教師によって評定の判断基準が異なっていたと言わざるを得ない。担任のメタ認知評価点と算数文章題の問題解決得点並びにメタ認知得点との間には,比較的強い相関が見られ,前研究と同様に基準関連妥当性はある程度高いことが確認された。修正版の本評価基準は,全体としてはメタ認知の指標として妥当であり,同じ児童の年度当初と年度末の得点を比較したり,授業での指導に生かすことは十分に可能である。一方,異なる評価者による児童のメタ認知評価を比較することは適切とは言えないであろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究自体は、①「メタ認知的支援を伴う算数指導法」による実験授業、②担任教員によるメタ認知評価基準の開発、の2つとも実施することができた。しかし、①の実験授業の効果については現在分析中であり、②のメタ認知評価基準の開発については、予想されるような結果が得られていないため、評価項目や評価方法などをさらに検討していく必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
①「メタ認知的支援を伴う算数指導法」の開発 まず、今年度末に行なった介入授業・事前事後テストのデータの分析を行う。現段階の分析では、メタ認知の介入授業を行なったクラスで想定通りにメタ認知が伸びていることがわかったが、個人単位での変化について検討を行い、介入授業後に成績が伸びた児童にはどのような特徴があるのかを明らかにしたい。その上で、オリエンテーション授業の方法を改善し、また、事前事後調査も改善した上で、再度実験授業・調査を行いたい。特に、現在行なっている事前事後テストは、子どもの問題解決の伸びをうまく測定できていないと考えられるため、大幅な改善を行いたい。 ②メタ認知評価基準の作成:問題点をふまえて評価項目を再検討・精選するとともに、各評価項目の評価基準をより具体的にすることで、絶対的な評価を行いやすくなるよう修正を行う。学年当初のメタ認知評価と学年末でのメタ認知評価を行い、長期的な伸びがみられるかどうかについても検討を行いたい。
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Causes of Carryover |
(理由)研究協力者である小学校教員が平成30年度に異動となり、異動先で校長になってしまった関係で、平成30年度は当初計画していた調査を行うことができなかった。10月になって別の研究協力者を見つけることができ研究を再開することができたが、この時に生じた研究の遅れが未使用額の発生につながっている。一方で、児童のメタ認知実験データのデータ量が多く、想定よりはデータ入力のための謝金が多くかかった。次年度も同じような状況になることが想定される。 (使用計画)本研究では、児童のワークシートへの記述・回答を収集し分析することが中心であり、そのデータ化のための補助設備や人員が必要である。平成30年度に補助設備としてパソコンを購入する予定だったが、古いものをそのまま使用したので、次年度は購入する予定である。また、実験授業や調査の材料作成のための周辺的なソフトや記録媒体等を購入する予定である。また、ワークシートへの記述をテキストデータとして入力するための補助人員として学生をアルバイトとして雇用したいと考えている。本年度も小学校で研究を行う予定であるためにデータ量は膨大であり、1日約6時間として1人×50日分の謝金を計上した。また、学会発表(国内)についても、2回(研究成果発表、資料収集)ほど予定している。
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