2018 Fiscal Year Research-status Report
学校教育場面における自律性支援の実践的応用に関する研究
Project/Area Number |
17K04357
|
Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
岡田 涼 香川大学, 教育学部, 准教授 (70581817)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 自律性支援 / 授業における指導 / 自己決定理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,教師の自律性支援的な指導行動を習得するための教授プログラムを開発することを目的としている。そのために,2年目である本年度は,(1)授業場面における指導行動を自律性支援の点から分析し,事例を収集する,(2)教授プログラムで用いるための教員向けリーフレットを作成する,という2つの研究を行った。 (1)に関して,小学校における縦割り学級場面での指導行動を観察した。縦割り学級においては,児童の動機づけや児童どうしの関係の調整が必要になるという特徴から,自律性支援に相当する指導行動の具体を分析し,事例を収集するうえで有効であると考えた。6つの学級において異学年集団での話し合い場面を観察した。その結果から,教師は児童の視点の代弁と興味の喚起を中心に自律性支援的な指導を行っていることが明らかになった。この知見については,学内紀要で学術論文として公表し,学会発表を行った。 (2)に関して,2019年度に開発する教授プログラムで用いる教材として,自律性支援に関する研究知見を伝えるリーフレットを作成した。自律性支援に関する先行研究,昨年度に行ったメタ分析の結果,教員に対する自律性支援の有効性認知の結果,本年度に行った自律性支援に相当する指導行動の観察研究の結果について,イラストを交えたリーフレットを作成した。このリーフレットを用いて,2019年度には自律性支援について考える教授プログラムの開発と実践を行う。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,教師の自律性支援的な指導行動を習得するための教授プログラムを開発することを目的としている。その目的に照らして,実際の授業場面における指導行動を分析し,現職教員にとって理解しやすい事例を収取することを目的としていた。また,教授プログラムで用いる教材として,自律性支援に関する研究知見と本研究の成果を伝えるリーフレットを作成することを目的としていた。 2018年度には,実際に縦割り学級での話し合い場面と通常の教科の授業場面を観察し,データを収集した。前者については分析を行い,学術論文および学会発表として公表した。また,後者については現在分析中である。リーフレットについては,自律性支援に関する研究知見のレビューと2017年度に行ったメタ分析による成果,現職教員に対する質問調査の結果をもとに時間をかけて作成した。その結果,現職教員にとっても身近な問題として考えることができるものとして,研究知見を伝え得るリーフレットが完成した。そのため,2019年度には早い段階から教授プログラムの開発に取り組むことができる。 研究成果の公表について,2017年度に行ったメタ分析の研究と現職教員に対する調査の成果は,学術論文および学会発表として公表した。そのため,2017年度の研究成果は,本研究における教授プログラムに役立てるだけでなく,学術研究の知見として参照することが可能になっている。 以上のことから,研究の進捗状況は,「おおむね順調に進展している」と考えた。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究では,教師の自律性支援的な指導行動を習得するための教授プログラムを開発することを目的としている。2017年度と2018年度は,教授プログラムの開発に向けて,研究を行っている。2017年度には,自律性支援に関する研究知見をレビューし,メタ分析によって知見の統合を行った。また,教師の自律性支援の有効性認知を測定する心理尺度を作成した。2018年度には,実際の授業場面における指導行動を観察し,自律性支援に相当する指導行動の具体例を分析,収集した。これらの知見をまとめるかたちで,教授プログラムで用いる教材としてリーフレットを作成した。 2019年度には,2017年度と2018年度の成果をもとに,教授プログラムの開発と実践を行う。年度開始の時点から教授プログラムの構成を考え,年度の前半に数回実施する。実施を重ねることによって,プログラムの内容を改善していき,年度内に完成版を提示したい。 また,昨年度に収集した授業場面における指導行動について,さらに分析を行い,学術論文および学会発表として公表する。加えて,今年度に行う教授プログラムについても,参加者からの評価を得て,そのデータをもとに学術論文および学会発表として公表する準備を進める。 教授プログラムについては,研究としての実施と同時に,学校現場への知見の還元という意味で,希望を募り実践を積み重ねていく予定である。年度後半には,そのための広報活動も行う。
|
Causes of Carryover |
本年度は,リーフレットの作成や授業観察の記録データの文字お越しの予算を計上していた。これらについては,外部の業者に対する委託費である。前者については,委託業者との打ち合わせのなかで若干予算より額が少なく計上された。後者については,記録映像の時間の関係から,予算よりも少なく計上された。これらのことから,当初の予算から若干の余剰金額が生じ,次年度の使用にまわすこととした。
|
Research Products
(4 results)