2020 Fiscal Year Research-status Report
傍観行動の低減からいじめ防止を目指す心理教育的プログラムの開発と効果検証
Project/Area Number |
17K04365
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Research Institution | Teikyo Heisei University |
Principal Investigator |
中村 玲子 帝京平成大学, 健康メディカル学部, 講師 (60750635)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
島津 直実 帝京平成大学, 健康メディカル学部, 講師 (30549225)
越川 房子 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (80234748)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | いじめ防止 / 心理教育的プログラム / ロールプレイ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,傍観行動の低減によりいじめの防止を目指す心理教育的プログラムを中学生を対象に実施し,その効果を検討することを目的としている。これまでの研究でいじめの傍観行動に着目し,本プログラムを構成する①心理教育と②ロールプレイを用いた学習が共通していれば,実施する教員や対象生徒,ロールプレイの提示場面が異なってもこれまでと同様の効果が認められることについて検証を行った。いじめ介入プログラム実施前よりも実施後のほうが,①傍観行動をとらないことへの自己効力感が高まり,②いじめ否定の規範意識は強くなり,③いじめ加害傾向は低くなることが示されている。 本研究において開発されたプログラムの効果をより詳細に検討するために,2020年度には国内の中学校において追試研究を行う予定であった。しかし,コロナ禍により予定通りの実施は困難となったため,現状を踏まえた他の方法でいじめ防止の取り組みを行い,その効果の検討を行った。 当初は本年度もいじめ場面への介入行動をロールプレイにより学習するという内容としていた。しかし感染予防策である密の回避のために,教室でのロールプレイという手法は見直さざるを得なくなった。中学校側との協議の結果,代表生徒のロールプレイと全体討論という方法で体育館において実施することとした。内容は,代表生徒のいじめ場面の提示に続いて学年全体でいじめについての討論を行うものであった。 実施前後で効果測定のための調査を行った結果,実施後は実施前に比べていじめを助長させる傍観行動をとらないこと,いじめを見たときになんらかの介入行動をとろうとすることへの自己効力感が高まることが示唆された。また加害傾向の減少や他者を理解しようとする傾向の増加も認められた。 コロナ禍による制約はあったが,協力校において教員と心理職が協働していじめ防止を目的とした取り組みを継続している点は意義があると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2017年度より2019年度までは国内の中学校2校において,ほぼ研究計画通りの実施がなされている。①傍観行動をとらないことへの自己効力感が高まる,②いじめ否定の規範意識は強くなる,③いじめ加害傾向は低くなるという3点について,本プログラムはいじめの防止にある程度の効果をもつ可能性が示された。実施者がプログラムの目的や意図を理解し,ロールプレイでのターゲット行動等が同様のものであれば,効果は得られる可能性が高いと考えられる。 研究成果の公表については,American Psychological Association Convention 2019においての発表等,計画通りに行われている(2018年度に国内学会:日本教育心理学会大会,2019年度に国際学会:American Psychological Association Convention)。 2020年度には協力校において,追試研究の実施が予定されていたが,コロナ禍により予定通りの実施は困難であった。しかし研究実施や研究成果の公表等は当初の計画通り行われているため,おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度も協力校において追試研究の実施を予定しているが,コロナ禍が続いているために今後,実施方法の変更等について協力校との協議が必要である。各協力校の状況をふまえてニーズに合うかたちでの実現を考えている。 また本年度の研究結果を踏まえ,従来の実施法との比較検討等,結果のより詳細な分析を行う必要がある。さらに研究成果の公表について引き続き取り組んでいく予定である。
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Causes of Carryover |
本年度はコロナ禍により予定していた追試研究の実施が困難となった。 現時点で,研究協力校において追試研究の実施を予定している。研究協力校における研究実施のための交通費・物品費,またデータの分析や研究結果の公表にかかる経費として使用する予定である。
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