2018 Fiscal Year Research-status Report
映像メディアによる子どもの表象―子どもの権利と研究倫理の検討
Project/Area Number |
17K04369
|
Research Institution | Kokugakuin University |
Principal Investigator |
斉藤 こずゑ 國學院大學, 文学部, 教授 (70146736)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 子どもの表象 / 子どもの権利 / 子どもの研究倫理 / 子どもとの協同 / 映像発達研究法 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は、前年度から引き続き、目的1、社会文化的観点から子どもの図像・映像媒体による子どもの表象記述条件を検出し理論的精緻化を行う目的で、(1)長期縦断フィールド観察映像の表象分析、(2)国内外の公共放送映像資料による子どもの表象分析を行った。(2)の結果は外国の映像資料に関して、昨年度は開催時期の問題から参加できなかた英国王立文化人類研究所主催民族誌映画祭(RAI)に参加でき、映像資料の分析が可能になった。今後さらにDVD化された資料を分析する予定である。さらに台湾国際ドキュメンタリー祭(TIDF)での映像資料閲覧分析も実施できた。 目的1の達成度は文献研究を進め、地理学の分野でもデータおよび理論化ともに参考になる資料が見つかった。本研究の基礎であり理論的な枠組み構築にとって必須なのでさらに検討を押し進めていく。 目的2、昨年に引き続き子どもの権利条約条項の概念と子どもの研究倫理を相互規定的に関係づけた新しい枠組みを検討し、子どもと協同する研究のモデル化によって倫理問題に配慮した映像発達研究法の構築を目指した。(1)子どものフィールド観察映像、(2)公共放送、ドキュメンタリー映像など既成映像、両者における発達の記述を 子どもの権利条項(54条項中、研究倫理との関連の深い18条項)と関係づけて精査した。このテーマに関しては国連児童の権利研究機関でも新しい研究成果が出ており、文献研究を推し進めることができた。その結果は学会発表にまとめた。目的2の達成度は昨年に引き続き高かったが、今後もさらに、子どもの表象と権利、研究倫理との関係を一層探究し、文化差も検討する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度の研究進捗状況は、平成29年度の遅れを挽回し、全体として順調だった。当初の計画に照らし、平成29年度は外部の事情で変更を余儀なくされた(海外映像資料参照の機会変更、分析補助バイトに適切な人材が見つからなかったなど)が、平成30年度は予想以上に海外映像資料参照の機会および文献資料開拓に恵まれた。しかし分析補助バイトの人材確保の困難は継続しているため、その点で分析方法に関する計画の若干の変更を検討し、量的分析よりも質的分析に重点を置いた。 予想以上に達成できた点(子どもの権利と研究倫理の関係分析、文献資料開拓)を軸にして、当初計画の未達成部分を補償する方法を推し進め、次年度の課題に加えて実践 していく。
|
Strategy for Future Research Activity |
前年度に準じて同様に行い、結果をインフォーマントに質問調査するなどして適宜微調整を行う。 目的1、社会文化歴史的観点から子どもの図像・映像媒体による子どもの表象記述条件を見出し理論的精緻化を行う。(1)長期縦断フィールド観察映像から子どもの表象分析を行う。(2)国内外の公共放送及びドキュメンタリー映像資料により子どもの表象分析を行う。日本の映像資料分析:・NHKアーカイブス学術利用で 日本の公共映像資料を閲覧分析する際、戦後3世代期間、日本の出生人口動態に基づく3期間の放送番組から選択し比較する。・分析手続き:研究代表者が映像を 視聴し、映像の内容分析を行う。民放のアーカイブズやドキュメンタリー映像、図像の分析も並行して行う。海外の映像資料分析:多様な映像資料を多く閲覧できる映像祭(国際ドキュメンタリー映像祭など)が開催年度に当たり有益だと判断されたら参加する。また英国、カナダなどの映像アーカイブズに赴く可能性も検討する。・分析手続き:日本の映像資料に準ずる。 目的2、子どもの権利条約条項の概念と子どもの研究倫理を相互規定的に関係づけた新しい枠組みを提起し、子どもと協同する研究のモデル化によって子どもの 倫理的問題を配慮した映像発達研究法の構築を目指す。上述の(1)子どもの長期縦断フィールド観察映像、(2)国内外の公共放送、ドキュメンタリー映画など既成 の映像、両者における発達の記述を子どもの権利条項のうち子どもの研究倫理と関係の深い18条項に関係づけて精査する。令和1年度はこの分析を完成させ、念願のイノチェンティ研究所に赴き情報資料収集・交換を行うことや、子どもの権利・子どもの協同参画関連の学会に参加し情報収集を行うことの可能性を検討 し、文化的相対化を行いたい。
|
Causes of Carryover |
平成30年度に繰り越した使用額は1,080,453円で、研究費を残した主な理由は、適性な研究補助人材の確保が出来なかった事である。また縦断観察資料の映像圧縮編集保存委託依頼も遅れた。これは次年度に達成する。令和1年度は児童の権利30周年で、国連イノチェンティ研究所主催で子どもをめぐる映像祭が開催される。本研究計画上貴重な情報収集の機会となるため参加する。この新しい計画によって次年度繰り越し額が有効に活用されうる。令和1年度使用額は次年度使用額1,080,453円と令和1年度請求額(直接経費)800,000円の合計1,880,453円である。そこで新たに令和1年度使用計画を以下に示す1、物品費:(1)図書映像資料として、子どもの図像関連図書、映像分析関連図書、子どもの歴史関連図書、子どもの既製映画DVD、映像圧縮編集保存委託費。(2)映像関連機器、映像編集機器、ビデオ関連消耗品、プリンター関連消耗品、パソコン関連消耗品。(1)(2)合計概算 500,000円。2、旅費:国内外民族誌映像祭および学会、アーカイブズ訪問参加、資料情報収集にかかわる費用及び交通費(5-6往復)、宿泊費。合計概算 981,000円。3、人件費・謝金として、専門的知識情報提供謝金。合計概算200,000円。4、その他として、交通費、資料複写日、映像 関連資料図書館・施設利用費。合計概算199,453。
|
Research Products
(2 results)