2017 Fiscal Year Research-status Report
「生涯現役」社会構築に及ぼす中高年期の「越境的交流」の効果
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17K04371
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Research Institution | Shirayuri College |
Principal Investigator |
田島 信元 白百合女子大学, 人間総合学部, 教授 (90002295)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮下 孝広 白百合女子大学, 人間総合学部, 教授 (00190778)
鈴木 忠 白百合女子大学, 人間総合学部, 教授 (40235966)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 垂直的交換関係 / 水平的交換関係 / 越境的交流 / 共同体 / 職業的アイデンティティ / 世代性の継承 |
Outline of Annual Research Achievements |
29年度は,高齢者雇用を創業時から行っている株式会社M製作所を事例とし,生涯現役で働く条件を明らかにすることを目的として2つの研究を行った。 研究1では,M製作所M工場で働く社員全19名を対象に,若年層・中年層・高齢層がどのように融合して仕事をしているのかについてインタビュー調査を行った。その結果,各世代が他の二世代の特徴を理解した上で積極的な関わりを持てるような工夫がされており,若年層は中年層と高齢層との関わりの中で,仕事における新たな知識や技術を獲得していた。中年層は若年層と高齢層の立場や職務環境を理解した上で,仕事の方向性を決めるなどの役割を果たしていた。高齢層は若年層や中年層への育成とともに,組織や企業文化への次世代への発展についての発言も見られた。 研究2では,研究1で得られた仮説をもとに、(1)垂直的・水平的交換(交流)関係のあり方,(2)共同作業・共同体のあり方,(3)職業的アイデンティティのあり方,(4)世代性の継承のあり方について、M社の社員に対してウェブ調査により、質問紙調査を実施した。分析は回答が得られた全1019名のうち男性902名に絞って、AMOSによる多母集団同時分析を行った結果,マエカワモデルが示された。マエカワにおいては,世代間の関係性である垂直的交換関係や,同期との関係性である水平的交換関係といった越境的交流によって,仕事における共同作業が活発に行なわれるようになり,そこから個々人の職業的アイデンティティの確立や次世代への興味・関心へとつながっていくことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
予想通り、M社の協力が得られて、半年かかる予定の社員に対する面接調査がスムーズに運び、その上、M社のウェブ調査網が利用できたため、本格的には2年目に行なう予定であった質問紙調査が、第一次のレベルではあるが、実施できたためである。
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Strategy for Future Research Activity |
30年度は、29年度に得られた面接調査に基づく仮説について検証することが目的となる。 (1)29年度に行なった一次的質問紙調査について吟味を行い、そこでは十分でなかった男女差の比較、およびM社とは対照的な他社との比較、など29年度のM社の調査結果の一般化を検討することである。 (2)さらに、29年度は企業内の社員間のダイナミズムに焦点化したが、たとえ企業内の「生涯現役」社会構築の条件を明らかにする上でも、家庭-地域-企業間の関係性が基盤にあるとの問題意識から、「ワーク・ライフバランス」の要因の貢献度について検討する。
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Causes of Carryover |
当初の計画に比べて、29年度は調査対象者が所属するM社の協力体制のおかげで、面接資料の収集が集中的に出来たこと、しかも一次的質問紙調査もM社のウェブ調査網を利用できたことで、研究費を節約できた。そのため、本年(30年)度の予算に使用額を廻して、本年度は、29年度調査の高い一般化を目指した複数社の調査、さらに、男女差の問題がでてきたので、その点も、新規の調査項目(対象者)に追加する形で、研究の遂行を計画している。
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Research Products
(1 results)