2021 Fiscal Year Research-status Report
Prevention of language delay by promoting the production of pointing gestures by infants
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17K04372
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Research Institution | University of the Sacred Heart |
Principal Investigator |
岸本 健 聖心女子大学, 現代教養学部, 准教授 (20550958)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 指さし / 乳幼児 / 養育者 / 身振り / 言語 |
Outline of Annual Research Achievements |
室内をポスターや玩具によって装飾した「デコレーテッドルーム」では,乳幼児とその親に高頻度の指さしが生じることが分かっている。ここで計測される乳幼児の指さしが,後の言葉の発達と関連していることを確認するとともに,母親の指さし産出を促進することで乳幼児の指さし産出を促し,それにより言葉の発達の促進が可能かどうかを検討するのが本研究の目的である。 コロナ禍に伴い,昨年度は,乳幼児とその保護者を実験室にお招きすることができず,予定をしていた実験的観察を実施することは叶わなかった。したがって残念ながら新たなデータを収集することはできなかったが,ここまでに集められたデコレーテッドルームでの親子間の観察データを再分析し,よく指さしを産出する母親の乳幼児ほど,よく指さしをすることを確認することができた。さらに,母親の指さし産出頻度の個人差に注目した結果,母親の社会関係の流動性が高いこと,すなわち,交流する相手が頻繁に入れ替わる都心のような環境の母親ほど,よく指さしをすることを発見した。この成果を,2021年9月に実施された日本心理学会第85回大会において発表した。 また,実験的環境で人為的に指さしを促進しようとする上記研究を補うために,旧来から進めていた家庭訪問による母親と乳幼児の自然場面の観察研究のデータについても再度,分析を実施した。乳幼児は指さし以外にも「手さし」「手渡し」「呈示」などの直示的身振り(相手の注意を対象物へ向ける身振り)を産出するが,乳幼児の指さしだけが,それ以外の身振りと比較して,「それは〇〇(対象物の名称)だよ」「〇〇(対象物の名前),この間,公園でも見たね」といった,乳幼児の言葉の学習を促進するような,対象物について教えるような言語的応答を母親から引き出すことを明らかにした。この結果を,2022年3月に実施された日本発達心理学会第33回大会で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2021年度もコロナの蔓延が収束しなかったことに伴い,研究協力者のコロナ罹患のリスクを回避する必要があった。このため,乳幼児と母親に実験室へお越しいただくことが一切,できなかった。これに伴い,計画をしていた実験的観察(デコレーテッドルーム内での母親と乳幼児の相互作用の観察)ができず,それゆえ新たなデータを収集することができなかった。 一昨年度(2020年度)も,コロナ禍で実験的観察ができておらず,昨年度とあわせ2年連続で,計画していた観察が一切,できない状況が続いている。このため,本研究課題の進捗は大幅に遅れていると言わざるを得ない。
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Strategy for Future Research Activity |
2年連続,計画の実験的観察を行うことができていないため,その遅れを取り戻す必要がある。ただ,現在もコロナの蔓延が収束したとは言い難く,状況を見極めながら慎重に研究に着手していく予定である。 本研究では,当初より申請者の所属する大学に設けられた育児支援室に来られた乳幼児とその母親を研究対象とする計画であった。今年度より,この育児支援室が再開し,母親と乳幼児とが訪問するようになった。こちらに訪問されている母親のうち,本研究の観察のターゲットである12ヵ月齢にまもなく達する複数の乳幼児の母親とコンタクトをとり,研究への参加の内諾を頂戴した。また,観察に必要なビデオカメラや,記録された映像を保存する外付けHDDを整備し,研究を滞りなく再スタートするための環境を整えることができた。このように速やかに研究を再開するための準備が万端,整った。コロナの蔓延が落ち着き次第,速やかに研究を進める予定である。 また,昨年度,学会で発表した2つの研究成果については,さらに分析・検討を重ね,学会で発表するとともに,それらの成果をまとめ,年度内に査読論文へ投稿することを目指す。これらを通し,昨年度,滞っていた研究成果のアウトプットも積極的に進めていく。
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Causes of Carryover |
2021年度はコロナの蔓延に伴い,計画をしていた乳幼児と母親を対象としていた観察を一切,行うことができなかった。このため,協力者に支払う謝金や,観察のために必要な設備を購入するための物品費を使用しなかった。加えて,学会の多くはオンラインでの開催となり,旅費のために確保していた資金もまた,使用する機会がなかった。 コロナ禍によって生じた遅れを取り戻し,速やかに研究を再開するために,昨年度,確保していた研究費を使用し,研究環境の整備を進める。そして,データの収集,学会発表や論文執筆などのアウトプットのための資金として,助成金を使用していく。
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Research Products
(3 results)