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2017 Fiscal Year Research-status Report

共存モデルにたった病気理解の検討

Research Project

Project/Area Number 17K04375
Research InstitutionWaseda University

Principal Investigator

外山 紀子  早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (80328038)

Project Period (FY) 2017-04-01 – 2020-03-31
Keywords認知発達 / 素朴生物学 / 病気の理解 / 共存モデル / 科学的思考 / 概念発達
Outline of Annual Research Achievements

2017年度の研究実績は大きく3点にまとめられる。
(1) 病気理解の研究概観:2017年度は初年度であったため,まず科学的・非科学的理解の発達に関する先行研究を概観し,レビュー論文にまとめた(外山, 2017a)。病気理解の発達は伝統的な発達観(子どもは未熟で非科学的な思考に支配されているが,発達とともに合理的で科学的,成熟した理解を獲得していくとするモデル)では説明できないこと,それに代わって,科学的・非科学的理解が生涯を通じて共存するというモデルが必要であること,科学と非科学の共存という問題の検討には量的研究と質的研究をあわせた検討が有用であることを議論した。
(2)病気理解における選択的信頼:科学的・非科学的理解が生涯にわたって共存することは,私たちが青年期以降も質の異なる情報を病気の様々な側面に応じて選択的に利用していることを示唆している。情報源としての信頼性という点から他者を区別し,特定の他者から学ぼうとする傾向を選択的信頼というが,共存モデルの検討は選択的信頼の問題と密接にかかわる。そこで幼児期を中心として選択的信頼の発達研究を概観し(外山, 2017b),病気に関する幼児・児童・大人の選択的信頼を実験的に検討した(外山, 2017c)。幼児でも,病気の側面に応じて専門家(医師)と養育者(母親)を区別しているが,児童期以降は病気の種類(アレルギー性か伝染性か)に応じて選択がみられるようになることが示された。
(3)看護師における病気理解の発達観:子どもの病気理解に関する看護師の発達観が看護経験によって異なるかどうか,質問紙調査により検討した。主に小児看護に従事する看護師110名(小児群)と,主に成人看護に従事する看護師85名(成人群)を対象に質問紙調査を実施した結果,小児群の方が幼児期後半および児童期前半の子どもの理解能力をより高く評価していることが示された。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

2017年度は,病気理解に関する先行研究の概観を行い,レビュー論文にまとめることで,研究の方向性を確認することができた。また,看護師対象の調査を実施し,投稿論文にまとめることができた。2018年度は,病気に関する民俗学的信念の整理と因果律の分析を行うことにより,共存メカニズムの実証的検討につなげていきたい。

Strategy for Future Research Activity

2018年度の研究計画は,次の3点にまとめられる。
(1) 病気に関する科学的・非科学的理解の検討:幼児を対象とした実験を行い,病気の発症メカニズムに関する理解を検討する。感染・栄養・睡眠・ストレス・寒さ・内在的正義の 6 要因について説明を求め,その素地にある因果の点から説明モデルを整理する。
(2) アジア圏における非科学的(民俗学的)信念の整理:中国・韓国・シンガポールで子ども時代を過ごした大人についてヒアリング調査を実施し,病気の原因・治療・経過・予後に関する民俗学的信念を明らかにする。病気の原因に関する民俗学的信念としては,ヒポクラテスのバランス理論(人間には4種類の基本体液があり,体液あるいは身体の構成要素の均衡や不調和によって病気が発症するという考え方)や生気論(ストレス学説や精神免疫学にみられる生気論的説明), 循環理論(健康や病気は環境と深く関係しており,身体の構成要素は他の要素と協調することではじめて正常に機能するという考え方,したがってそれらのバランスが崩れることが病気を発症させる)などあるが,それらに基づいて,実際に病気になったときにどのような対処がなされているのかをみることで,底流にある因果律の性質を明らかにする。
(3) 幼児期の子どもをとりまく情報の検討:初年度に引き続き,保育園での縦断観察調査を実施し,登園時や外遊び,散歩後,食事前の手洗いやうがい場面などで,病気の予防と治療に関連してどのような実践が組まれているか,そして幼児にどのような情報が与えられているかを検討する。

Causes of Carryover

病気に関する民俗学的(非科学的)信念に関するヒアリング調査を実施する予定だったが,かわりに看護師対象の調査を実施したことにより,2018年度に実施するよう計画を変更したため。

  • Research Products

    (7 results)

All 2018 2017

All Journal Article (3 results) (of which Int'l Joint Research: 1 results,  Peer Reviewed: 3 results) Presentation (3 results) Book (1 results)

  • [Journal Article] 科学と非科学のあいだ:質的研究への期待2017

    • Author(s)
      外山紀子
    • Journal Title

      質的心理学フォーラム

      Volume: 9 Pages: 70-78

    • Peer Reviewed
  • [Journal Article] Development of the selection of trusted informants in the domain of illness2017

    • Author(s)
      Toyama Noriko
    • Journal Title

      Infant and Child Development

      Volume: 26 Pages: e2039~e2039

    • DOI

      10.1002/icd.2039

    • Peer Reviewed / Int'l Joint Research
  • [Journal Article] 幼児期における選択的信頼の発達2017

    • Author(s)
      外山紀子
    • Journal Title

      発達心理学研究

      Volume: 28 Pages: 244-263

    • Peer Reviewed
  • [Presentation] 移動運動の発達がひらく子どもの世界2018

    • Author(s)
      外山紀子
    • Organizer
      日本発達心理学会
  • [Presentation] 病気に関する情報源の選択: 幼児は誰の情報に信頼を置くのか2017

    • Author(s)
      外山紀子
    • Organizer
      日本乳幼児医学心理学会
  • [Presentation] 病気理解の発達2017

    • Author(s)
      外山紀子
    • Organizer
      日本小児看護学会
  • [Book] ナカニシヤ出版2017

    • Author(s)
      外山紀子・長谷川智子・佐藤康一郎
    • Total Pages
      234
    • Publisher
      若者たちの食卓
    • ISBN
      4779511429

URL: 

Published: 2018-12-17  

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