2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K04375
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
外山 紀子 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (80328038)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 認知発達 / 科学的理解 / 素朴信念 / 病気 / 素朴生物学 / 共存モデル / 生気論 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は,次の2つの研究を行った。 (1)内在的正義・公正世界信念と科学的病因論の共存: 前年度は内在的正義・公正世界信念に関する素朴信念と,西洋近代的な病気治癒に関する理解とが幼児から大人の年齢範囲でいかに共存しているかを検討した。その結果,病気が「とても深刻」だった場合,その病気にかかった二人の登場人物のうち,努力あるいは痛みを伴う治療に取り組んだ者の方が,努力あるいは痛みをほとんど伴わない治療に取り組んだ者よりも,早く治るだろうという判断が大人になるにつれ認められるようになった。また,努力する人が患者本人でない場合には,治療の効果が得られにくいだろうという判断も,大人になるにつれ顕著になった。2019年度は,病気の重症度を「とても深刻」な場合と「少し具合が悪い」場合における判断の相違を検討した。幼児・小学生・大学生を対象とした個別インタビュー実験を行った結果,病気が深刻な場合には,努力した方が早く治るという判断が大人になるにつれ多くなったが,軽症な場合には努力による影響はほとんど認められなかった。大人は文脈に応じて,素朴信念と科学的理解とを使いわけることが示唆された。以上を論文にまとめた(Toyama, N. (in press). The development of implicit links between effort, pain, and recovery. Child Development. )。 (2) 病気に関する社会的情報の収集と分析: 保育園での縦断観察調査を実施し,食事や朝の会などでの病気の予防と治療に関する発話を収集・分析した。社会的情報の文化差,とりわけ生気論的信念に関する実践を観察するために,中国の幼稚園での観察調査を計画していたが,新型肺炎の影響により実施できなかった。事業期間の延期を申請し,2020年度秋に実施予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
素朴信念と科学的理解との共存を調べる実験調査については,予定通り進めることができた。一方,病気予防や治癒,衛生習慣に関する社会的情報を検討するための観察調査については,中国での観察を実施することができず,2020年度に実施を遅らせることにした。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は, 2017年度から継続して実施している観察研究のデータ分析を行い,投稿論文にまとめたい。保育園での日常的な場面において,保育者が手洗いやうがい,栄養,睡眠と健康との関係をどのようなことばを用いて説明しているか,日常的な生活習慣の中に素朴信念がどのように織り込まれているかという観点から分析する。また,中国での観察調査を行い,保育者の子どもに対する働きかけ,保育室や園環境,生活ルーティンの相違を分析する。
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Causes of Carryover |
中国の幼稚園での観察調査を計画していたが,新型肺炎の影響で渡航ができず,2020年秋に観察調査を延期した。
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Research Products
(5 results)