2017 Fiscal Year Research-status Report
幼児期の感情コンピテンスを支える文化的要因の検討-感情表出機能に着目して-
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17K04395
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Research Institution | Niimi College |
Principal Investigator |
芝崎 美和 新見公立短期大学, その他部局等, 講師(移行) (00413542)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 感情表出 / 文化的要因 / 保育 / 観察研究 / 遊び / 愛着 / 向社会性 / 特性理解 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.感情表出の困難さが社会的行動に及ぼす影響 感情表出が困難である幼児数名を抽出するよう保育者に求め、参与観察法を用いて、感情表出困難群と統制群の社会的行動の比較を行った。その結果、社会的行動の生起頻度とその内容に、群による差が見られることが確認された。 2.社会的行動に影響する文化的要因の検討 感情表出困難群に振り分けられたうち3名の幼児(A児・B児・C児)について、参与観察法を用いた縦断研究を実施し、感情表出を促す文化的要因の解明を試みた。1年間にわたる観察研究の結果、3名の幼児すべてにおいて、感情表出力に改善が見られ、A児については、保育場面での遊びの質と保護者による肯定的捉えが、B児については、特定の他児との愛着関係が、C児については、保育者との愛着関係が、感情表出力の向上に貢献する文化的要因であることが確認された。 3.感情表出が他児の特性についての幼児の理解に及ぼす影響 5歳児36名、6歳児30名を対象に、向社会的場面における貸与者の表情が、貸与者の特性および感情に関して、貸与を受けたと想定される幼児(被貸与者)の理解にどのように影響するかを検討した。結果は以下の3点である。第1に、貸与者の表情は、貸与者の特性について幼児の理解と関連し、幼児は貸与者の表情がポジティブであれば「やさしい子」、表情がネガティブであれば「意地悪な子」と判断する。第2に、貸与者の表情は幼児の関係維持欲求とも関連し、ネガティブな表情でおもちゃを貸与した場合、幼児は貸与者との関係を維持したくないと判断する。第3に、特性理解には表情と感情の両方が関連し、貸与者のポジティブな表情からはポジティブな感情とポジティブな特性が、ネガティブな表情からネガティブな感情とネガティブな特性が予測されやすかった。したがって、他児の特性についての幼児の理解における表情の影響が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1年間にわたる、定期的な観察研究の実施が可能であった。本年度においても、既にデータ収集を始めている。また、研究実施園の積極的協力のもと、当初31年度に研究実施予定であった、「感情表出が他児の特性についての幼児の理解に及ぼす影響」についてもデータ収集を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度においては、計画通り、感情表出の発達的変化と文化的要因の影響について検討を行う。研究計画に変更はない。
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Causes of Carryover |
平成29年度では、1年間にわたる縦断研究を実施しており、本年度でも、引き続き縦断研究を実施する予定である。参与観察の手法を用いて得られたデータについて、平成29年度では量的、質的分析を行ったが、より詳細に分析するためにはやや高額な統計ソフトが必要である。また、平成29年度では、研究実施園の積極的協力のもと、当初予定よりも研究が進行しており、平成30年度では、その成果発表を追加で行う必要がある。次年度使用額に該当する助成金については、統計ソフトの購入と成果発表費に充てたいと考えている。
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