2017 Fiscal Year Research-status Report
交代制ルールを中心とした子どもの仲間との関係調整の発達
| Project/Area Number |
17K04396
|
|---|
| Research Institution | Oita Prefectual College of Arts and Culture |
|---|
Principal Investigator |
藤田 文 大分県立芸術文化短期大学, その他部局等, 教授 (50300489)
|
|---|
| Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
| Keywords | 交代行動 / 幼児期 / 発達 / 仲間関係 |
|---|
| Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、子どもが仲間関係の中でどのように自己と他者との関係調整をして協応的な仲間関係を形成していくのか、その発達を明らかにすることである。特に、幼児の協力場面における自己と他者の関係調整の年齢差と性差を検討することを目的としている。
29年度は、協力の目的が明確な場面設定と協同・競争の条件設定を行い、各条件での交代制ルールを中心とした関係調整の年齢差と性差を検討する実験を行った。幼稚園の園児、4歳児26名と5歳児26名の計52名を、同性・同年齢の二人組にして、ビー玉落としゲームを行ってもらい、その様子をビデオ録画した。ビー玉落としゲームは、二人の幼児が両側からひもを引っ張って調整し、真ん中の木枠に入ったビー玉を幼児側の穴に落とすルールだった。幼児が同時にひもを引っ張ると木枠が二分割されビー玉側溝に落ちてしまい失敗となる。協同条件では、どちらの幼児の側の穴にビー玉が入っても、二人ともご褒美のシールがもらえる条件だった。競争条件では、自分の側の穴にビー玉が入った幼児だけがシールをもらえる条件だった。協同条件と競争条件はカウンターバランスされて幼児のペアは両条件にも各10試行参加した。
10点満点での成功得点について2年齢×2性別×2報酬条件の3要因の分散分析を行った。その結果成
功得点は、男児の方が女児よりも、平等条件の方が競争条件よりも有意に高いことが示された。従来の研究では、女児の方が関係調整がスムーズにいくことが示されていたが、この課題では男児の方がうまく協力しており、従来とは異なる新たな結果が見出された。また、年齢差は見出すことはできなかった。全体的に成功得点が低く、ひもを引っ張る順序に関する交代制ルールもほとんど見られなかった。今後、練習試行を増やすなどして、ひもの調整に関する理解を促進した上での交代制ルールを含めた関係調整を検討する必要がある。
|
| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究は、おおむね順調に進んでいる。29年度は、初年度であり、幼児の協力場面を設定して、仲間との関係調整の発達に関する実験を行うことを計画していた。ほぼ計画通りにまず、幼児の協力場面を観察するために必要なビー玉落としゲームの実験課題を作成することができた。また研究協力を依頼した幼稚園から、平等条件と競争条件の条件設定やビデオ撮影を含めて理解が得られ、実験の許可を得ることができた。
平等条件と競争条件を設定して、幼児の協力場面における関係調整についての実験を実施することができた。協力の成功得点と行動のビデオを分析して、年齢差と性差と条件による違いを検討した。その結果、関係調整が男児の方が成功得点が高く、また、役割意識や協力度などの協力場面のコミュニケーション行動においても男児の方が意識が高いという性差が見られた。このような従来の研究では見られなかった性差を見出すことができた。しかし、年齢差を見出すことはできなかった。
実際に実験を行ったことで、ビー玉落としゲームの状況に関する幼児の理解のレベルを実際に把握することができた。協力場面における交代制ルールを検討する際の、幼児への教示の難しさや場面設定の難しさなど課題を明らかにすることができた。今後の研究を改善するための基礎的なデータを得ることができて、計画通りに研究を進めることができている。
研究成果の一部を日本発達心理学会で発表することができた。
|
| Strategy for Future Research Activity |
30年度は、まず29年度に実施した実験のビデオ分析をさらに詳細に行っていくことを計画している。交代制ルールがほとんど観察されなかったが、各幼児がどのようなタイミングでひもを引っ張っているのか、また相手との関係調整のために、どのような行動や発話を行っているのか、わずかながらでも交代が生じている場面があればどのような場面なのかなど、29年度に分析できていない部分について検討を重ねていく必要がある。その分析を含めてビー玉落としゲーム状況の課題を明らかにする。特に、幼児にはひもの調整に関する理解の困難性が29年度に明らかになったので、明確な教示方法や適切な練習試行について工夫をして、再度協力行動における交代制ルールの産出について検討を行う必要がある。
また30年度は、29年度に得られた幼児の関係調整の実験状況を大学生に当てはめることを試みる計画である。ビー玉ゲーム課題の成否にかかわるコミュニケーション能力を特定するためには、幼児の観察だけでは、どの部分のコミュニケーション能力が必要なのかを特定することが困難である。従って、大学生を対象として同様の実験を行い、大学生には方略やコミュニケーションの意図を言語化してもらいながら、必要なコミュニケーション力や関係調整の理想的な完成形を明確にしていく予定である。これらの30年度の研究成果は、9月に行われる日本心理学会と3月に行われる発達心理学会において発表する予定である。
推進の課題としては、データ分析に時間がかかる点と今後の研究協力者の確保の点である。今年度は、夏休み前には、データの全体の分析を終了し、夏休み中以降に新たな実験の実施ができるように計画をしている。
|
