2017 Fiscal Year Research-status Report
健康寿命の延伸を目指す心理的・社会的ストラテジーの構築
Project/Area Number |
17K04397
|
Research Institution | National Center for Geriatrics and Gerontology |
Principal Investigator |
丹下 智香子 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, NILS-LSA活用研究室, 研究員 (40422828)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 発達 / 健康寿命 / 主観的幸福感 / フレイル |
Outline of Annual Research Achievements |
1.研究の目的:成人中・後期の一般地域住民を対象とした「国立長寿医療研究センター・老化に関する長期縦断疫学研究(NILS-LSA)」のデータを用いて、高齢期における健康寿命の延伸、および機能障害を抱えた状態での主観的幸福感の維持に影響する心理的・社会的要因を解明する。その際、身体的機能の低下の程度による、心理・社会的要因の影響の差異が存在する可能性を考慮した検討を行う。最終的に、健康寿命の延伸およびサクセスフル・エイジングの実現を目指す心理的・社会的ストラテジーについて、身体的機能の状態を考慮したモデルを構築することを目的とする。 2.今年度の研究:今年度は健康~フレイルの範囲での、機能の維持/低下/改善に影響する心理的・社会的要因を解明するために、以下の事柄を行った。 ・老年医学領域の関連文献を収集し、知見の整理を行っている途中である。 ・65歳以上の対象者のデータを用い、フレイルの査定(CHS基準の一部改変)を行い、各調査時でのフレイルの割合、および縦断的変化を確認した結果、第2次-第7次調査時のフレイル有症率は6.2-9.8%(平均71.9-74.3歳)、2年の縦断的変化は改善が2.3-3.6%、進行が4.9-6.7%であった。 ・フレイルの進行と各種要因の関連について縦断的に検討した。まず(1)女性ではフレイルの進行が男性よりも多いものの、フレイルからの改善も有意に多いことが示唆された。(2)家族/家族以外からの情緒的/手段的サポート、および主観的幸福感は、その後のフレイル発症のリスクを有意に低下させることが示唆された。(3)フレイルの進行は自尊感情の低下と関連することが示唆された。 本研究の知見は、健康寿命の延伸、およびサクセスフル・エイジングの実現に向けて心理・社会的領域からの接近可能性を探究するものであり、来年度以降、さらなる検討を行う上で、重要な知見であると考える。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の当初の全体的な計画としては、今年度は第一点目として老年医学領域の文献レビューを行い、フレイルの概念整理等を行うこと、第二点目としてNILS-LSAでこれまでに収集されたデータを用いてフレイルの査定を行い、一般地域住民におけるフレイル有症率やその縦断的変化に関する基礎的な情報を得ること、および第三点目としてフレイルの査定結果を従属変数とし、心理的要因関係の指標、および社会的要因関係の指標を独立変数とした解析に着手することを予定していた。これに対して、現在までの進捗状況としては、第一点目の文献レビューに関してはまだ中途段階にある。第二点目に関してはNILS-LSAの第2次-第7次調査時点でのフレイルの査定を行い、5査定項目のフレイル判定との関連や有症率、および各Wave間でのフレイルの縦断的変化(各査定項目の縦断的変化の検討含む)などについて基礎的情報を得た。第三点目に関してはフレイルの査定と自尊感情・主観的幸福感などの心理的変数、ソーシャルサポートなどの社会的変数、性別・教育年数・婚姻状況・就業状況などの個人背景要因との関連を検討し、学会発表を行った。また、当初の計画では平成30年度に実施する予定であった郵送法によるNILS-LSAフォローアップ調査を今年度実施した(現在データクリーンナップ作業中)。そのため、おおむね順調に研究が進んでいると思われる。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成30年度以降は、今年度の健康~フレイル範囲での、機能の維持/低下/改善に影響する心理的・社会的要因を解明する研究を引き続き行うとともに、既存のデータ、およびフォローアップ調査データを用いての(1)フレイル~要支援/要介護、死亡に影響する心理的・社会的要因の解明、(2)要支援/要介護の状態における、主観的幸福感を高く維持するための心理的・社会的要因の解明、(3)健康寿命の延伸およびサクセスフル・エイジングの実現を目指す心理的・社会的ストラテジーに関する、身体的機能の状態を考慮したモデルの構築の研究遂行を順次行う。得られた知見については、学会等にて公表する。 また、今年度に実施した郵送法によるフォローアップ調査のデータクリーンナップ作業、および既存データとの結合を行い、約20 年間の長期縦断データセットを作成し、解析に用いる。さらに、NILS-LSAでは平成30年度後半から、施設型調査形式でのフォローアップ調査を2-3年間かけて実施する見込みとなったため、その準備およびデータ収集を行う。
|
Causes of Carryover |
理由:本研究は、老化に関する学際的な縦断研究プロジェクトであるNILS-LSAの一部として実施されている。当初、NILS-LSAで平成30年度に実施する予定であった郵送法によるフォローアップ調査が今年度実施され、平成30年度からは施設型調査によるフォローアップ調査(第9次調査)を開始する見込みとなった。それに伴い、本研究の遂行に関しても若干の計画変更が生じ、いくつかの費目に関して繰越金が発生した。 使用計画:平成30年度は前年度からの繰越金と合わせた研究費を、物品費(文具、書籍、パソコン、解析ソフトなど)、旅費(資料収集および研究成果発表など)、人件費・謝金(NILS-LSA参加者の名簿管理、調査票の作成、NILS-LSA面接調査、データ整理などを担当する研究協力者の雇用のため)、その他(研究成果発表にかかる学会参加発表費、別刷り印刷費、英文校正費など)に使用する予定である。
|
Research Products
(5 results)