2018 Fiscal Year Research-status Report
Family Support for Juvenile Delinquents:from the viewpoint of Systems Approach
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17K04401
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
生島 浩 福島大学, 人間発達文化学類, 教授 (80333996)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 社会系心理学 / 非行臨床 / 犯罪臨床 / 家族支援 / システムズ・アプローチ |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は、非行臨床の専門機関である警察・家庭裁判所・児童相談所・保護観察所・少年院・児童自立支援施設のうち家族支援の専門スタッフを中心にインタビュー調査を行った。聴取内容は、発達障害や被虐待経験の二次障害などが認められる重大・深刻な事案に対する支援の実態把握であるが、精神医療や福祉関係者との連携も含め、組織としてのシステムズ・アプローチの機能分析に焦点を当てた質問項目を設定した。 インタビュー調査に加えて、研究代表者が各機関のスーパーバイザー、研修講師を務めており、秘密保持に配意しながら協力を得ることができた。また、研究代表者が相談員を務めている大学附属の相談室やスクールカウンセラーとして勤める高校において継続支援を行った自験例を集積し、非行臨床の関係機関・施設と協働した支援例をまとめて研究を進めることができた。実地調査は、平成30年8月にオーストラリア・キャンベラ市において非行・犯罪臨床機関及びオーストラリア国立大学、平成31年3月には山口県の「美祢社会復帰促進センター」や福岡県の「北九州少年サポートセンター」「北九州市立精神保健福祉センター」等において実施した。 研究成果は、「非行・犯罪臨床における家族支援:立ち直り支援におけるシステムズ・アプローチ」としての観点からまとめた。国内学会での発表としては、副学会長を務める日本家族療法学会(8月・高崎市)、司法福祉学会(8月・名古屋市)において行った。 論著としては、生島浩編著『公認心理師分野別テキスト4 司法・犯罪分野』創元社、2019、岡本吉生編(第11章:生島浩)『司法・犯罪心理学』、遠見書房、2019、守山正編著(第3章Ⅲ:生島浩)『ストーキングの現状と対策』、成文堂、2019などを刊行した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
非行・犯罪臨床機関への半構造化面接の集積は十分ではないが、国内外の実地調査は計画通り進展している。研究代表者が専門機関のスーパーバイザー、研修講師を務めており、秘密保持に配意しながら事例の収集、システムズ・アプローチとしての対応に関する調査協力は得ることができている。 また、研究代表者が相談員を務める大学附属の相談室やスクールカウンセラーとして勤める高校において継続支援を行った自験例を集積し、非行臨床の関係機関・ 施設と協働した支援例をまとめて分析を進めることができた。特に、相談室及びスクールカウンセリングの担当事例は、家庭機能に問題があり、児童養護施設に入所している子どもなど、ハイリスクなケースが集積されており、分析対象として妥当なものである。 さらに、平成30年8月には「研究実績」で述べた早稲田大学社会安全政策研究所研究会グループとオーストラリアへ、また、福島大学大学院の研究協力者と共に山口・福岡県の非行・犯罪、精神医療、福祉等の多職種多機関連携について、実地調査も実施することができた。 研究成果については、研究成果を盛り込んで、公認心理師のテキストとして司法・犯罪分野の編著、分担執筆の本を計3冊刊行できたことから、「おおむね順調に進展している」と自己点検・評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和元年度は、研究代表者が務める各機関のスーパーバイザー、研修講師の機会を活用して、警察・家庭裁判所・児童相談所・保護観察所・少年院・児童自立支援施設において家族支援に携わる専門スタッフを中心に引き続きインタビュー調査を行う。 また、知的障害や精神・発達障害のある、いわゆる「触法障害者」の地域生活支援について、福祉機関・施設とのケア会議、児童養護施設での「あいまいな喪失」とも言える家族(親)との関係調整、福祉や更生保護施設でのカウンセリングの実施など、実践調査の精度を高めるとともに、立ち直り支援としてのシステムズ・アプローチについて総合的な政策提言やプログラム開発を行っていく。 東京を中心とする関東地区については、法務省東京保護観察所の研究協力を得て矯正施設入所者の「引受人会」に参画し、引き続き非行・犯罪臨床機関の実践研究を実施する。さらに、早稲田大学社会安全政策研究所の石川正興教授らと共に海外の実地調査の分析も継続していく。 研究成果は、日本家族療法学会北海道大会(6月・札幌市)や日本犯罪心理学会第57回大会(8月・東京)において報告を行うほか、執筆した公認心理師のテキストを用いて司法・犯罪分野における家族支援を中心に司法・犯罪心理学に関する学部・大学院講義を行い、研究成果を還元していきたい。
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[Book] 司法・犯罪心理学2019
Author(s)
岡本吉生編著(第11章:生島浩)
Total Pages
205
Publisher
遠見書房
ISBN
978-4-86616-069-6